6月5日の米国市場ではSOX指数が10%超の急落、AI関連株に対する過熱警戒感が顕在化しつつあります。米国では大型IPOが予定されるほか、利上げ観測も一気に強まり、AI関連株のリバウンドには時間を要する可能性も。

こうした中、AI関連株一極集中の中で出遅れていた銘柄にスポットが当たる場面もありそうです。


高配当株5選:AI一極集中から出遅れ割安株に資金シフトか。王...の画像はこちら >>

AI関連株主導の流れが続き、日経平均株価は一段高の展開に

 5月第2週から6月第1週(5月8日終値~6月5日終値)までの日経平均株価(225種)は6.2%の上昇でした。5月中旬にはいったん調整し、5月20日には6万円大台を割り込みましたが、その後は押し目買いに切り返し、5月25日にはあらためて最高値を更新。その後も一段高となり、6月3日には一時6万8,786円まで伸ばしました。


 期間中前半は、原油相場が1バレル=100ドル台に上昇したことによる過熱警戒感から、利食い売りが優勢となる場面もありました。人工知能(AI)関連の中核銘柄が決算発表後に急落したことも、市場ムードを悪化させる形となりました。


 ただ、トランプ米大統領が、イランとの戦闘終結に向けた交渉について「最終段階に入っている」と発言したことで、その後はリスク選好の動きが再度強まることとなりました。


 とりわけ、米オープンAIの株式の新規公開(IPO)申請観測報道も伝わったことで、あらためてAI関連株が相場上昇を主導することになりました。電子部品株が一斉に人気化するなど、AI関連株は物色の幅が広がる状況にもなりました。


 この期間で上昇が目立った銘柄としては電子部品株が挙げられます。村田製作所(6981)、太陽誘電(6976)、日本ケミコン(6997)、ニチコン(6996)などの積層セラミックコンデンサ(MLCC)関連株、日本電波工業(6779)などの水晶メーカーなどが50%以上の株価上昇となっています。


 キオクシアホールディングス(285A)、武蔵精密工業(7220)などのAI関連の主力株も大幅上昇となりました。


 一方、AI関連の中心格とされてきたフジクラ(5803)は業績見通しが嫌気されて一時急落する展開になりました。

この流れが波及する形で、AI関連株として先駆して上昇してきた日東紡(日東紡績:3110)やJX金属(5016)なども利食い売りが優勢となっています。


AI一極集中からバリュー株復調へ。今後の重要イベントと金融政策の行方は

 6月4日から5日にかけて日経平均株価は、半導体関連株への利食い売りが優勢となったことで反落していましたが、5日の米国市場ではSOX指数(半導体株指数)が10%超の急落となっています。ここまで強まってきていた過熱警戒感が顕在化する状況になりつつあります。


 AI・半導体関連株にとっては押し目買いのチャンスとも捉えられますが、12日には米国で大型のIPOとなるスペースXの上場が控えています。過去前例のない規模の大型上場とあって、上場後もスペースX購入に向けた他の銘柄の換金売りの動きが強まると考えられます。その際には、ここまで株価上昇が続いたAI・半導体関連株が乗り換えの対象になってくる公算が大きいでしょう。


 加えて、5日の米雇用統計は想定以上に強い数字となり、米国では一気に利上げ観測が台頭しています。こうしたことから、AI・半導体関連の本格的なリバウンドには時間がかかる可能性が高いとみます。


 5日の東京市場では、日経平均が882円安と大幅下落となったものの、プライム市場では値上がり銘柄数が圧倒的に多い状況でした。指数寄与度の高いAI・半導体株の調整が長期化すれば、日経平均株価にとってはマイナスとなりますが、むしろ、これまでAI関連株一極集中の中で低迷していた出遅れ株にスポットが当たる好機ともなってきます。


 6月の相場イベントにおいては、株主総会が集中すること、3月末配当金の支払いが行われることなどが注目点となります。

株主総会が近づくにつれ、アクティビストファンドによる低株価純資産倍率(PBR)銘柄などへの経営改善要求などが思惑視されやすくなります。


 また、支払われた配当金が株式投資への再投資に回る場合は、その配当金の源泉となる高配当利回り銘柄が対象となる公算が大きいでしょう。こうした状況は、AI関連株への投資資金集中の中で出遅れていたバリュー株の復調につながっていくものと判断されます。


 直近の注目イベントとしては、まず12日のスペースX上場が挙げられます。仮に、マーケット全体への需給懸念につながる状況となれば、今後予定されているアンソロピックやオープンAI上場時にも同様の懸念が強まることになりそうです。


 また、ハイパースケーラーの一角である米オラクル(ORCL)の決算発表も予定されています。足元ではアルファベット(GOOGL・GOOG)やメタ・プラットフォームズ(META)など大型資金調達の発表・観測が上がっており、とりわけ、設備投資動向などに関心が向かうとみられます。


 ほか、15~16日の日本銀行金融政策決定会合では利上げが決定される可能性が高く、同様に利上げ決定が見込まれる欧州中央銀行(ECB)理事会では、早期の追加利上げの有無などが探られることになります。


AI・半導体株から出遅れ銘柄への資金シフトを想定へ

 目先は米国での大型IPOが予定されていることから、これまで上昇をけん引してきたAI・半導体関連株は乗り換え対象になると考えられ、換金売り圧力が強まる公算があります。AI・半導体関連株の上値が重くなることによって、出遅れ銘柄への資金シフトが本格化する可能性が出てきます。


 4月以降の株価の出遅れ感が強い銘柄、とりわけ、高配当利回りなどのバリュー株のリバウンドに注目したい局面です。また、株主総会集中日の接近で、低PBR銘柄などには、アクティビストファンドの株価対策要求などへの意識が強まる余地もあるでしょう。


(表)株価の出遅れ感が強い主力の高配当利回り銘柄 コード 銘柄名 配当利回り
(%) 6月5日終値
(円) 時価総額
(億円) 株価騰落率
(%) PBR
(倍) 4202 ダイセル 5.52 1,268.0 3,247 ▲16.28 0.91 5411 JFEHD 4.96 1,614.0 10,320 ▲19.3 0.39 3231 野村不動産HD 4.92 894.5 8,210 ▲18.53 0.95 3861 王子HD 4.62 778.9 7,122 ▲15.88 0.62 5021 コスモエネルギーHD 4.57 3,611.0 5,959 ▲19.86 0.95 (注)配当利回りは会社予想ベース
(注)株価騰落率は3カ月前比。
▲はマイナス
(注)決算期は全て3月
(注)全てプライム市場上場

銘柄選定の要件


  • 配当利回りが4.5%以上(6月5日時点でのコンセンサス予想ならびに会社予想)
  • 時価総額が3,000億円以上
  • PBRが1倍未満
  • 3カ月前比での株価下落率が15%以上
  •  楽天証券のスーパースクリーナーにおいて、配当利回り4.5%以上、時価総額3,000億円以上、PBRが1倍未満、3カ月前比で株価が15%以上下落している銘柄をスクリーニング。


     スーパースクリーナーにおける配当利回りはコンセンサス予想であるため、スクリーニングされた銘柄において、会社側の配当計画をベースにして新たに配当利回りを算出、4.5%以上の銘柄を選出しています。


    厳選・高配当銘柄(5銘柄)

    1 ダイセル(4202・東証プライム)

     自動車や電子部品向けのエンジニアリングプラスチック(エンプラ)が主力で、セルロースと酢酸を原料とした酢酸セルロースやこれを紡糸したアセテート・トウなどのマテリアル事業も展開しています。


     2026年3月期営業利益は420億円で前期比31.0%減となりました。アセテート・トウの販売減少、エンプラの新プラント稼働による減価償却費などの増加が減益要因となっています。


     2027年3月期は425億円で同1.0%増の見通しです。エンプラやインフレータの販売数量増加に加えて、アセテート・トウも下期にかけてローカルメーカーでの在庫調整の解消を見込んでいます。


     2027年3月期年間配当金は70円、前期比10円増を計画しています。2027年3月期からの新中期戦略において、株主資本配当率(DOE)をこれまでの4%以上から5%以上に、還元性向目標も40%以上から60%以上に引き上げました。また、中期戦略の数値目標として、2029年3月期営業利益630億円などを掲げています。主にエンプラやインフレータ分野での収益増を見込んでいます。


     2027年3月期はメタノール価格上昇の影響が懸念され、業績計画の達成は厳しいとみられますが、ほぼ織り込み済みとも考えられます。一方で減配の可能性は低いとみられるため、業績懸念による株価下落場面は押し目買い好機と判断されます。


    2 JFEHD(5411・東証プライム)

     2002年9月に川崎製鉄と日本鋼管(NKK)が経営統合して発足した持株会社です。粗鋼生産で国内第2位のJFEスチールを筆頭に、JFEエンジニアリング、JFE商事などを傘下に抱えます。薄板事業やグループ形鋼事業の再編による国内生産体制強靭(きょうじん)化を進めています。2028年10月稼働をめどに、福山で溶融亜鉛めっきラインを新設しています。


     2026年3月期事業利益は1,353億円で前期比0.0%増とほぼ横ばいでした。鉄鋼事業におけるスプレッドの悪化、商社事業の収益減少が利益の伸び悩みにつながりました。


     2027年3月期は2,150億円で同58.8%増の見通しとしています。粗鋼生産は横ばいを見込む中、操業度改善や生産性効率化などによる収益力向上を見込んでいます。


     2027年3月期年間配当金は前期比横ばいの80円を計画しています。配当性向は30%程度を想定していますが、下限配当金として80円を設定しており、会社側では事業環境悪化があった場合でも同水準は堅持したいとしています。中東情勢悪化の影響は計画に織り込んでおらず、業績予想は下振れ含みですが、ここまでの株価調整からは十分に織り込まれている印象があります。


     構造改革の進展や高付加価値品の比率上昇などにより、中期的には着実な収益性アップが見込めます。また、政府による造船業再生ロードマップ策定なども、今後の鋼材需要増につながる余地があるでしょう。

    現在の株価は、ほぼ2025年4月の安値水準です。


    3 野村不動産HD(3231・東証プライム)

     総合不動産大手の一角で、マンションの分譲販売が主力となっています。「PROUD」ブランドが中心となっています。オフィスビルや商業・物流施設の開発、賃貸、売却など都市開発事業も主力事業の一つです。


     2026年3月期営業利益は1,382億円で前期比16.2%増となっています。住宅分譲の平均価格の上昇、都市開発セグメントにおける収益不動産売却の増加などが寄与しています。海外は低調でしたが、それを除くと全セグメントが増益となっています。


     2027年3月期は1,400億円で同1.3%増の見通しとしています。住宅分譲の計上戸数増加を見込んでいるほか、資産運用セグメントにおける運用資産残高の増加なども寄与する見通しです。


     2027年3月期予想年間配当金は44円、前期比4円の増配を計画しています。15期連続での増配となる見通しです。会社側では財務指針として、総還元性向40~50%、DOE4%下限をうたっています。


     有利子負債の大きい不動産セクターは金利上昇がネガティブ材料に働きますが、好調な需要が続く都心の高価格帯物件は、日本銀行の利上げ決定がさらなる利上げを先取りした先回り買いへとつながる可能性もあり、当面順調な推移が期待できるとみられます。


     株価は、順調な業績推移を背景に2月まで上昇基調を続けていたことから、足元の調整は押し目買いの格好のタイミングにもなってきそうです。


    4 王子HD(3861・東証プライム)

     製紙業界における国内大手企業です。段ボール、紙器、紙袋などの包装資材を製造販売する生活産業資材が中心事業であり、感熱記録媒体や食品・飲料ラベルなどを手掛ける機能材事業も利益を下支えしています。


     2026年3月期営業利益は346億円で前期比48.9%減となっています。パルプ市況の下落によって、資源環境ビジネスの海外事業の収益が大きく落ち込みました。また、印刷情報メディア事業は、主に国内の販売減やコスト増が響きました。


     2027年3月期は600億円で同73.5%増を見込んでいます。板紙・段ボールや印刷用紙の値上げ効果によって、国内外ともに収益の改善を見込んでいます。なお、中東情勢によるマイナス影響を150億円ほど織り込んでいます。


     2027年3月期予想年間配当金は前期比横ばいの36円を計画しています。会社側では中計方針として配当性向50%、配当下限24円を挙げていますが、これらを上回る水準を計画している形です。


     また、2024~2027年度累計で1,500億円の自己株式取得を計画していますが、2025年度までで51%の進捗(しんちょく)率となっており、今後も継続的な実施が期待されます。現状ではややチャレンジングとみられますが、中計目標では2028年3月期営業利益1,200億円を維持しています。


     ナフサ由来のプラスチックに供給不安も意識される状況下、バイオマスビジネスの展開も中期的な期待材料となるでしょう。


    5 コスモエネルギーHD(5021・東証プライム)

     岩谷産業(8088)が筆頭株主である石油元売り大手の一角です。原油処理能力は1日当たり40 万バレル程度で、サービスステーションは2,500カ所超。アブダビ首長国では石油開発事業も行っています。再生エネルギー事業も手掛け、風力発電設備容量は293MW(2024年12月末時点)となっています。


     2026年3月期経常利益は1,492億円で前期比1.0%減となっています。原油価格上昇で石油事業は増益となりましたが、石油開発事業が環境悪化の影響で減益となり、足を引っ張りました。


     2027年3月期は1,150億円で同22.9%減の見通しです。中東情勢の影響を考慮して保守的な算定としています。原油価格の上昇がタイムラグを伴ってマイナスに影響するほか、ホルムズ海峡封鎖に伴う石油開発事業の生産制約も響くようです。


     2027年3月期予想年間配当金は前期比横ばいの165円を計画しています。還元方針として、これまでの中期計画では、3カ年累計の総還元性向は60%以上としていました。6月18日には新たな中期経営計画を公表予定としています。


     グループ会社の丸善石油化学は、半導体の製造工程で使用するフォトレジスト用樹脂において世界トップクラスのシェアを誇っており、同分野は参入障壁が高いとされています。半導体関連としての側面も注目したいところです。また、中期的には、筆頭株主である岩谷産業と連携した水素事業の展開が注目材料とされる余地は大きいでしょう。


    (佐藤 勝己)

    編集部おすすめ