投資成果が市場平均を上回っても、それだけで銘柄選びが奏功したとはいえません。特定の業種や規模の銘柄が上昇した影響により、ポートフォリオのリターンが押し上げられる場合もあります。

重要なのは、リターンを生み出した要因を確認することです。今回は成果を要因ごとに分け、投資を振り返る際のポイントを整理します。


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あなたの投資の成果は実力なのか?相場環境による追い風なのか?市場平均超えの本当の理由を考えてみよう
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上回った理由を分解して考える

 運用成績が市場平均を上回った場合、その差は何によって生まれたのでしょうか。その要因を正しく捉えるには、得られたリターンをいくつかの要素に分けて考える必要があります。


 この考え方は、個別銘柄やアクティブファンドに限りません。インデックスファンドに投資する場合であっても、商品を選ぶ以上、投資する地域や銘柄群の特性など、運用には何らかの傾きが生じます。そのため、リターンが何によって生まれたのかを把握することは、投資スタイルを問わず重要です。


投資スタイルによる区分

 株式には、業種や国とは別に共通した性質があります。最もよく使われるのが、割安・成長と、時価総額の大小の二軸です。組み合わせると次のように区分できます。


図1:スタイル区分のイメージ
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※出所:筆者作成

 重要なのは、どのマスに属するかで値動きの傾向が異なることです。ある年は割安株が強く、別の年は成長株が強い。その差は、しばしば個別企業の良しあしを超えるほど大きくなります。なお、収益性など他の性質も観察されていますが、考え方は同じです。


市場平均だけでは見えない運用の実力

 ある年、市場全体の指数が10%上昇した一方、小型株指数は6%の上昇にとどまり、小型株を中心に運用するポートフォリオは8%上昇したとします。市場全体の指数には2%及びませんが、小型株指数を2%上回っており、小型株の中での銘柄選択としては成果を上げています。


図2:投資対象と指数の比較例
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※図は説明のためのイメージであり、特定の指数や商品の投資成果を示唆・保証するものではありません。※出所:筆者作成

 市場全体の指数に対するマイナス2%は、小型株への傾きによるマイナス4%と、個別銘柄選択による+2%に分解できます。後者は、小型株指数を上回った部分であり、運用者の銘柄選択による成果です。前者は、市場全体と小型株という投資対象とする銘柄群の違いから生じたもので、銘柄選択の実力とは分けて捉える必要があります。


 従って、銘柄選択の実力を測るには、市場全体の指数だけでなく、実際の投資スタイルに近い銘柄群とも比べる必要があります。特定の投資スタイルに沿って銘柄を選べば、ポートフォリオ全体にもその傾きが生じるからです。それゆえ、市場全体に対する勝ち負けだけで運用の実力を判断しないことが大切です。


 もちろん、こうした投資スタイルへの傾きが意図的で、その特徴とリスクを理解しているのであれば、それ自体が明確な戦略となります。注意したいのは、意図せず生じた傾きによる成果を、銘柄選択の実力だと捉えてしまうことです。


運用の性格を見るためには

 先ほどの投資対象による違いとは別に、「アクティブシェア」と「アクティブリスク」という二つの指標で、運用手法を分類することがあります。


 アクティブシェアは、ポートフォリオの銘柄構成がベンチマークとどの程度異なるかを示します。構成が完全に一致すれば0%、全く重複しなければ100%です。


 一方、アクティブリスクは、ポートフォリオとベンチマークのリターン差がどの程度変動するかを示す指標です。

このリターン差をアクティブリターンといい、そのブレの大きさを数値で示したものがアクティブリスクです。トラッキングエラーとも呼ばれ、インデックスファンドでは、この数値が小さいほど指数への連動性が高いと判断する目安にもなります。


 両者は常に連動するわけではありません。例えば、ある銀行株を減らして別の銀行株を増やせば、銘柄構成が変わるためアクティブシェアは上昇しますが、値動きが似ていればアクティブリスクは大きく変わりません。


 これに対し、銀行株を減らして値動きの異なる情報技術株を増やせば、アクティブリスクも高まります。アクティブシェアは運用者が直接決められる一方、アクティブリスクは銘柄同士の値動きの関係や市場環境にも左右されます。


図3:アクティブシェアとアクティブリスクによる運用手法の分類例
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※図は運用の特徴を概念的に整理した一例であり、実際は必ずしも明確に分類できるものではありません。※特定の商品や運用手法の優劣を示すものではありません。※出所:筆者作成

 これらを組み合わせると、分類図のように運用の特徴を整理できます。アクティブシェアが高く、アクティブリスクが低い場合は、ベンチマークとの差別化を図りながらも、特定の銘柄や投資スタイルへの依存を抑えられています。


 反対に、アクティブシェアが低く、アクティブリスクが高い場合は、保有銘柄はベンチマークと似ていても、その配分の違いによって、業種や企業規模、割安・成長といった特定の投資スタイルへ傾けている可能性があります。ベンチマークとの成績差が大きくなりやすく、相場環境に応じて、こうした傾きを変える運用がこれに当たります。


 両方とも低い場合は、実質的に指数とほぼ同じ運用でありながら高い信託報酬を負担する「クローゼットインデックス」である可能性があります。


 同じ「ベンチマークを上回った」という結果でも、ポートフォリオ全体の傾きによるものか、個別銘柄の選択によるものかで、その意味は大きく異なります。


運用を比べる際の着眼点

 これまでの点をふまえると、リターンの大きさだけでなく、その成果を得るために負担したリスクにも目を向けることが重要です。


 まず確認したいのは、運用成果が特定の銘柄に依存しすぎていないかです。市場平均を上回るためにはベンチマークとは異なる銘柄を選ぶ必要がありますが、一銘柄への依存が過度に大きいと、その企業にとっての固有の出来事により、ポートフォリオ全体の成績が大きく左右されます。


 また、成果が運用方針や銘柄選択スキルによるものか、偶然その銘柄が当たっただけなのかも見極めにくくなります。


 その上で、似た投資スタイルのアクティブ運用を比較する際に、コストが同程度であれば、アクティブリスクの違いも確認します。同じような成果なら、より小さなリスクで実現しているほうが効率的と考えられるためです。


 さらに、リスクやコストまで同程度であれば、アクティブシェアが高い運用のほうが、払うコストに見合った差別化がなされているといえるでしょう。同じ負担を伴うのであれば、ベンチマークとほぼ同じ運用に高いコストを払う必要はないからです。


 もっとも、これらの指標を個人が計算するのは簡単ではありません。ここでは、運用を評価する際にはこうした見方もある、と押さえておけば十分です。私たちが実際に確認できるポイントは、次の節で見ていきます。


自分のポートフォリオを点検する

 ここまでご紹介した考え方を基にしつつ、手元の情報から運用の特徴を簡易的に点検することができます。


 個別銘柄を保有している場合、ポートフォリオ全体を見渡し、業種や時価総額、バリュー・グロースといった観点で偏りがないかを確認します。偏りがある場合は、それはご自身が意図したものなのか、銘柄を選んだ結果として偶然生じたものなのかを考えてみましょう。


 アクティブファンドも同様に、ファンドの性質がご自身の期待に沿っているかの確認が必要です。その上で成績を評価する際は、市場全体の指数だけでなく、投資対象の性質が近しい指数とも比べることが重要です。適切な比較対象を用いることで、好成績が相場環境の追い風によるものか、銘柄選択の実力によるものかを見極めやすくなります。


 また、成績だけでなく、投資成果をどのような方法で目指している運用なのかにも目を向けてみましょう。


 厳密な分析でなくても、見かけ上の好成績をそのまま実力と捉えるといった、大きな見落としを防ぐ手掛かりになります。


成果の中身を知れば、次の一手が見えてくる

 ここまで見てきたように、投資成果を振り返る上で大切なのは、その成果がどこから生まれたのかを捉えることです。要因が分かれば、現在の運用を続けるべきか、見直すべきかも判断しやすくなります。


 例えば、成果の要因が特定の投資スタイルへの傾きにあるなら、収益機会を捉えるために、あえてその傾きを維持することもできます。一方、銘柄選択の成果をより明確にしたい場合は、投資スタイルの偏りを抑え、ポートフォリオをスタイル中立に近づける方法もあります。


 また、投資スタイルの影響を加味しても市場平均を上回るのであれば、銘柄選択が成果に寄与した可能性が高まります。


 勝てたのは、実力か、それとも追い風か。この問いは、過去の成果を正しく理解し、次に何をすべきかを見極めるためのものです。


(上源 悠詞)

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