自転車用の「機械式駐輪場」が近年増えています。東京の駅前の地下に整備された世界最大規模の機械式駐輪場は、その圧倒的な収容台数で放置自転車問題を解決しました。

平置き駐輪場の下、さらに6480台ぶん!

 東京のとある駅前の地下に、収容台数で日本一を誇る駐輪場があります。

 場所は東京都江戸川区、東京メトロ東西線の葛西駅前です。環七通りの東西の地下にそれぞれ地下空間が設けられ、合計で9400台の自転車を収容できます。

 この駐輪場は2008(平成20)年にできました。江戸川区の駐輪対策係によると、駅の近くに停めたいというニーズがあり、もともと放置自転車に悩まされていたそうですが、「これだけの収容台数が駅前に確保されたことにより、放置自転車問題はほぼ解消されました」と話します。

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葛西駅前の地下駐輪場。
平置きスペースのさらに下も、実は駐輪場になっている(2020年11月、中島洋平撮影)。

 とはいえ、地下空間はワンフロアで、多くの自転車が平置きされているものの、9400台も収容できるとは思えないかもしれません。実は、9400台のうち6480台分は平置きではなく、立体駐車場にあるような「機械式」の駐輪場に収容されています。

 地下空間内にはさらに、自転車専用の入庫口がいくつもあります。利用者はそれぞれの入庫口から自転車を入れ、取り出す際には自動出庫される仕組みです。地下空間の下に、「サイクルツリー」と呼ばれる円筒形をした深さ14mを超える機械式駐輪場が、計36基も埋まっているのです。

 サイクルツリーを手掛けるJFEエンジニアリングによると、葛西駅前は機械式の駐輪場としては世界最大規模だそうです。

立体駐車場を駐輪場にリノベーションしたケースも

 江戸川区はその後、一之江、平井など区内のほかの駅でもサイクルツリーを整備しています。そのシステムを提供するJFEエンジニアリングによると、サイクルツリーは2020年現在で全国29か所、110基が設置されており、収容台数は2万2000台に上るといいます。

 地下だけでなく、建屋を整備したうえでの地上型や、ビルに組み込む形も存在。立川駅前など、利用が少なくなった駅前の機械式駐車場をサイクルツリーに、つまり駐輪場へ生まれ変わらせたところもあります。

東京の地下「世界最大規模の自転車置き場」がスゴイ! 圧倒的台数の「自転車の木」

サイクルツリー内部。
円筒形タイプの例(画像:JFEエンジニアリング)。

 葛西駅前の場合、サイクルツリーは定期利用の自転車向けです。ただ江戸川区によると近年、大型モデルや一部の子乗せ自転車など、機械式に入らない自転車が増えているとのこと。そうした自転車のために用意されている定期用の平置きスペースは、一部キャンセル待ちが発生しているそうです。