受験シーズンになると、鉄道会社では受験生を応援するべく、様々なキャンペーンが行われます。縁起のいい単語の入った駅名や、語呂合わせで合格への願いを込めたものなど、様々なアイデアが生まれています。
2020年11月、大井川鐵道の五和(ごか)駅が、「合格駅」に改称されました。これまでも受験シーズンに合格との繋がりでキャンペーンが行われてきましたが、今回「正式に」駅名になったということです。また同時に、隣接して「門出駅」も新設されました。
このように駅名などが「縁起担ぎ」となるケースは、全国で見られます。
紀州鉄道の学門駅(画像:写真AC)。
古くから受験生に注目されてきたのが、駅名に「学」の入った駅です。
また、入学を連想させる「桜」も受験のゲン担ぎには欠かせません。中京圏の鉄道輸送を担う近鉄と名鉄は2020年12月から共同で、両社にそれぞれ存在する「桜駅」「桜井駅」をコラボした「サクラサク入場券」を展開。桜駅は近鉄湯の山線と名鉄名古屋本線、桜井駅は近鉄大阪線と名鉄西尾線にそれぞれあります。
なおこのコラボ、2019年は「サクラサクきっぷ」として展開。近鉄は桜駅から、「大きく羽ばたく願いをこめて」大羽根園駅まで、名鉄は「桜咲こう」との意味で桜駅から栄生(さこう)駅までのきっぷを発行し、2枚がセットになっていました。
同様に、福岡の西鉄でかつて販売されていた合格祈願のきっぷでは、桜台駅から開(ひらき)駅までの乗車券がありました。また起点となる駅は年によって異なり、試験場前駅が選ばれた年もありました。
まだまだある「縁起のいい駅名」JR東海は2020年1月、飯田線の飯田市内にある鼎(かなえ)駅から桜町駅までを歩くイベントを開催。これには「願いを叶えて、桜咲く」という意味が込められています。ちなみに飯田市内には「平成おちんの神」と呼ばれる岩があり、信南交通が最寄りバス停までのきっぷを発行しています。
長崎県と佐賀県を走る松浦鉄道では、大学駅の駅名標を絵馬のデザインに。
松浦鉄道の大学駅(画像:松浦鉄道)。
千葉都市モノレールは例年、路線内にある桜木駅、作草部(さくさべ)駅にちなみ、それぞれの駅名の一部を取って「さくらさく合格祈願切符」を発売。あわせて、懸垂式モノレールであることに因み、引退車両の落下防止ワイヤーを用いた「落ちるのワ!イヤ」お守りも発売しています。
神奈川の相鉄にはゆめが丘駅と希望ヶ丘駅があり、今では珍しい「硬券」が発行されているため、受験シーズンに限らず、この2駅を結ぶ硬券は人気となっています。
横浜市営地下鉄は例年、絵馬の形の記念一日乗車券を発売。
縁起のいい単語の他にも、語呂合わせで受験生を応援するキャンペーンが各地で行われます。
JR東日本は2020年12月から大船駅で、「大船に乗った気持ちで試験に臨む」という願いを込めた各種キャンペーンを実施。同じく大船駅を発着する湘南モノレールはさらに、線内にある片瀬山駅から「勝たせ山」の語呂合わせで、記念入場券や各種イベントを行っています。
千葉の銚子電鉄は本銚子(もとちょうし)駅を「本調子で試験に臨む」として、記念きっぷを例年発売。新京成電鉄では、三咲駅、みのり台駅、五香(ごこう)駅に因んだ合格祈願きっぷを発売したことがあります。
京急はかつて、「叶神社」の最寄り駅である浦賀駅までの記念切符を発売。発売駅には戸部駅と日ノ出町駅も含まれていますが、「飛べ」という語呂合わせと、縁起のいい「日の出」という言葉に因んだものです。
湘南モノレールの片瀬山駅は「勝たせ」になぞらえられる(画像:湘南モノレール)。
「入学」に因んだものとしては、関東鉄道竜ヶ崎線の入地(いれじ)駅、JR指宿枕崎線の喜入(きいれ)駅で、それぞれイベントやキャンペーンが行われたほか、JR西日本は2017年に「KABE(かべ)を乗り超えろ」という語呂合わせから、可部駅の記念入場券を発行。他にも、文字通り「関門を突破する」という意味で、関門海峡を跨ぐ下関~門司間のきっぷが社員手作りの台紙付き記念乗車券として発売されています。
熊本の人吉駅(肥薩線、くま川鉄道)では、「横棒を足すと大吉になる」ことから、受験生を応援するイベントが行われたことがありました。