日本にたったひとりだけ存在している渋滞予報士。その仕事は、「渋滞を予報する」だけではないようです。

たったひとりの“渋滞予報士”

 今年もお盆渋滞が始まりました。渋滞を避ける唯一の方法は、NEXCOや日本道路交通情報センターが発表している「渋滞予報カレンダー」を見て、渋滞する時間帯を避けて走ること。渋滞の専門家である私(清水草一)も、これ以外に方法はないと常に推奨しています。裏技はないのです。

 ところでその「渋滞予報カレンダー」を作っている人として、たびたびマスコミに登場するのが、日本にひとりしかいないという渋滞予報士です。

 渋滞予報士はNEXCO東日本社内の名称で、正式な資格ではありませんが、2007(平成19)年からメディアに登場。2年後の2009(平成21)年から、リーマンショックへの緊急経済対策として「高速上限1000円」が始まり、渋滞が爆発的に増加したことで、一気に注目を集めるようになりました。

 この渋滞予報士の4代目である加藤寛道さん(31)に、その仕事について聞きました。

的中率は8割 なぜ2割外れてしまうのか

――渋滞予報という取り組みはいつごろから始めたのでしょう?

加藤「日本道路公団時代、1987(昭和62)年の年末年始から、交通集中渋滞の予測情報提供を実施しています」

――そんなに以前からでしたか。2007年に渋滞予報士が誕生したころ、加藤さんはどちらの部署にいたんですか?

加藤「私はまだ大学院の学生でした。NEXCO東日本に入社したのは2009年です」

――まだお若いんですね。専攻は?

加藤「東北大学大学院の工学部で交通工学を学んでいました。

入社後はまず千葉工事事務所へ配属され、外環道千葉区間の高谷JCTを担当。震災直後の2011年からは福島県の郡山管理事務所に出向し、道路のメンテナンスに携わりました。そして2013年から交通技術課に異動して渋滞予測に携わり、昨年4月から4代目の渋滞予報士になりました」

――なるほど。現場勤務を経て、いままさに学生時代の専攻を活かしているわけですね。ところで渋滞予報は的中率約8割とのことで、信頼性は相当高いのを実感していますが、それでも2割は外れます。その外れ方はどういうパターンでしょう?

加藤「予想が外れる原因として最も多いのは天候です。続いて事故や故障車ですね」

――渋滞予報のアナウンス効果で、利用者が時間帯をずらすことで渋滞がずれる、という部分もあるのでは?

加藤「もしそうだとしたら、渋滞予測に対するお客様の関心の表れかもしれません」

――個人的な感触ですが、2009年頃は渋滞のピークが予報より1~2時間前にずれるケースが多く、2011年頃からは逆に後ろにずれることが多くなったように感じますが。

加藤「その頃私はまだ渋滞予測にかかわっていませんでしたが、いまはそういった傾向は見られないと思います」

TVの影響で渋滞予報が外れたことも

――では、今年のGWの予測と実際のズレは?

加藤「おおむね予測通りでしたが、たとえば東北道は予測より減少、常磐道は予測より増加しました。常磐道全線開通の影響を加味した予測をしていましたが、それを上回る結果になりました。その要因のひとつとして、ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)の需要激増がありました。テレビで公園に群生するネモフィラの花が紹介されて、入園者数が過去最高になったんです」

――さすがにそこまでは予測できませんね(笑) ところで、加藤さんご本人が担当している渋滞予測は、NEXCO東日本管内だけですよね?

加藤「そのなかの関東支社管内です。具体的には関東地方と長野県です」

――日本でただひとりの渋滞予報士と報道されるので、発表されている渋滞予報は、すべて加藤さんがひとりで立てているようなイメージがありますが、そうではないんですよね?

加藤「もちろんです。

先任者には、『渋滞予報士はマスコットのようなものだ』と言われました(笑)」

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 実は渋滞予報は、NEXCO3社と本四高速会社が管内ごとに作成した予測を統合したもので、加藤さんひとりが作っているわけではありません。

「日本でただひとりの渋滞予報士」は、ある意味“作られたスター”です。しかし人の関心はスターに集まるもの。スターの存在によって渋滞予報カレンダーが広く知られ、ひとりでも多くの人が渋滞回避を試みたり、それが無理でも事前に渋滞に対する心の準備ができれば、それだけ渋滞やストレスが緩和されます。渋滞予報士の狙いは、まさにそこにあるわけです。

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