「最強」の定義は難しいものですが、最強航空機の一角に食い込むであろうAC-130J「ゴーストライダー」が、まもなく実用化されます。「ガンシップ」にカテゴライズされる同機ですが、なにをもって「最強」といえるのでしょうか。
「最強の攻撃機ないし爆撃機」は何でしょうか。
何をもって「最強」と定義するかによって様々ですが、高いステルス性を持ち人類最強の通常兵器である13トン貫通爆弾を2発搭載可能なB-2A戦略爆撃機、核弾頭対艦ミサイルの飽和攻撃を想定したTu-22M爆撃機などがその候補にあげられると筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えます。
AC-130J「ゴーストライダー」ガンシップ。機体後方の105mmりゅう弾砲、前方の30mm機関砲と、いずれも左舷に集中搭載する(写真出典:アメリカ空軍)。そして2017年にアメリカ空軍における初期作戦能力獲得、すなわち実用化が見込まれるAC-130J「ゴーストライダー」もまた、「最強」攻撃機の候補といえる機種になるでしょう。
AC-130Jは「ガンシップ」です。
汎用ヘリコプターであるUH-60やUH-1に機関銃を搭載した一般的なガンシップは、強力なもので12.7mm機関銃を搭載できます。12.7mm弾が人間の上半身に直撃したならば、多くの場合、致命傷は免れません。最も強力なガンシップヘリであろうAH-64「アパッチ」の30mm機関砲は、弾丸内部に成形炸薬を持ち、戦車の装甲さえ貫通し撃破した記録もあります。
一方AC-130Jは、飛行機であるC-130J「スーパーハーキュリーズ」中型輸送機を原型とし、ほかのガンシップとは一線を画す巨体を持ちます。その主兵装は30mm機関砲に加え、105mmりゅう弾砲を搭載します。
AC-130Jは主に友軍兵士を載せたヘリコプターや輸送機に帯同し、最も攻撃される危険性の高い敵地での降下時に、周囲への制圧射撃などを行います。すなわち空から敵に攻撃を浴びせ防御体制を強いることで味方を護衛したり、地上へ降下した味方兵士の攻撃要請に対して空からの射撃支援を提供するのです。
AC-130Jの兵装は、左舷側に集中搭載されており、敵の周囲を左旋回で周回することで、継続して砲火を浴びせ続けることができます。
実は大型ガンシップは以前から存在しており、ベトナム戦争時代には、はじめて105mmりゅう弾砲を搭載したAC-130H「スペクター」が生産されました。AC-130Hは105mmりゅう弾砲に加えさらに40mm機関砲、20mmバルカン砲を2門搭載しており、単純な火力ではAC-130Jを上回りますが、全機がすでに退役済みです。またAC-130U「スプーキーII」、AC-130W「スティンガー」といった現役機も、まもなく退役する予定です。
AC-130Wは105mmりゅう弾砲を持たず、誘導爆弾や対地ミサイルといった精密誘導兵器を主兵装とするタイプです。本来はAC-130JもAC-130Wのように、精密誘導兵器搭載型として誕生する予定でした。ところが、主兵装のGPS誘導滑空爆弾「SDB」は400万円するのに対し105mm砲弾は4万円、つまり1発あたりのコストは僅か1パーセントとはるかに安く攻撃できることや、原型機「スーパーハーキュリーズ」の最大離陸重量に余裕があったことから、誘導爆弾による攻撃能力を持ちつつ105mmりゅう弾砲を追加搭載することが決まりました。
SDBは射程距離と精度、威力で105mmりゅう弾砲を上回り、携帯型地対空ミサイルの射程圏外から攻撃できるので、相手によって攻撃方法を使いわけることができます。また将来的に指向性エネルギー兵器、すなわち「レーザー」を搭載する計画もあり、これは2020年代初期には実現する見込みです。
AC-130Jは2017年の実用化後、2021年までに32機が配備され、AC-130H、AC-130U、AC-130Wを全て置き換える予定になっています。