2016年6月に発生した路面電車の脱線事故について、長崎電気軌道が原因調査の結果を発表。現場のカーブを緩くするなど再発防止策を講じるとしています。
長崎市桶屋町の公会堂前交差点で2016年6月、長崎電気軌道の路面電車が脱線した事故について、同社は2017年1月13日(金)、社内の原因調査の結果として、脱線はレールの変形によるものとし、あわせて再発防止策や今後のスケジュールなどを発表しました。
現場のカーブでは、2007(平成19)年の5月19日と5月24日、そして2015年10月11日に脱線事故が起きています。今回の事故は2016年6月2日(木)22時50分に発生。長崎電気軌道によると、3号系統(蛍茶屋発赤迫行き)の第362号車が公会堂前交差点の分岐を5km/hで進んでいるときに、運転士が異音と進行方向の異変に気付き停車しました。
現場は3号系統・諏訪神社前~公会堂前間の、公会堂前交差点にあるカーブ。後方の台車が脱線した(画像出典:長崎電気軌道)。前方の台車(車輪部分)は線路上にありましたが、後方の台車は進行方向左側へおよそ1m脱線。電車には運転士1人と客1人が乗っていましたが、2人にけがはありませんでした。
前回脱線の対策を施したガードノーズが今回の原因に長崎電気軌道は脱線事故の直接原因について、レールの交差部分にあるガードノーズが変形しており、それによって車輪が乗り上がりやすい状態になっていたと推定。運転と車両関係については異常が認められなかったといいます。ガードノーズはレールが「X」状に交差する部分の中央にある「V」字にとがった部位です。
事故原因とされるガードノーズは、2015年10月に発生した脱線事故の復旧工事として2016年5月に設置されたものですが、営業開始後およそ10日間で、このガードノーズに車輪が繰り返し接触し、カーブの外側へ斜めに曲がっていました。
変形した原因は、ガードノーズ部分の高さを従来より約10mm低くしたため。これは2015年10月の脱線事故の際、ガードノーズ部分の摩耗が原因のひとつとされたためであり、摩耗を抑制するためにガードノーズが低くされました。
しかしこの設計変更によりガードノーズの体積が減少したため、車輪の接触によって変形が生じたものと、長崎電気軌道は推定しています。
再発防止策と今後のスケジュールは再発防止策として、事故現場のカーブ半径を現在の20mから35mに緩和。
長崎電気軌道は今後のスケジュールとして、今年3月から10月まで復旧工事を行ったあと、走行試験や試運転を重ね、11月には営業運転を再開させたいとしています。
現在、3号系統は、蛍茶屋行きは通常通りの運行ですが、事故のあった赤迫行きは出島回りの2号系統として運転されています。また、朝と夕方のラッシュ時には公会堂前~赤迫間の区間便も運行中です。