しなの鉄道の観光列車「ろくもん」に2017年4月、「信州プレミアムワインプラン」が新登場。「日本を代表するワイン列車になれば」というその内容を体験してきました。

また、登場の背景には「軽井沢の課題」もあるそうです。

背景に「軽井沢の課題」も

 しなの鉄道(長野県上田市)が2017年4月より、観光列車「ろくもん」の新しい旅「信州プレミアムワインプラン」を始めます。同鉄道が「信州ワインバレー」のひとつである「千曲川ワインバレー」へ沿うように走っていることから、このプランを通じ沿線地域を活性化するとともに、長野県が推進する「信州ワインバレー構想」の役に立てればと考えているそうです。

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内...の画像はこちら >>
しなの鉄道の観光列車「ろくもん」の「信州プレミアムワインプラン」で提供される料理とワイン(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 また新プラン登場の背景には、「軽井沢の課題」もあるといいます。しなの鉄道線の起点、軽井沢は高い知名度を持つリゾート地、観光地ですが、しなの鉄道の玉木 淳社長によると軽井沢は「夕方以降の楽しみ方」が少なく、「日帰り客が多い」という課題があるとのこと。

 そこで観光列車「ろくもん」に、軽井沢駅を夕方に出発する「信州プレミアムワインプラン」を設定。地元名産のワインを車中で楽しみながら、しなの鉄道沿線の温泉へ移動し宿泊、翌日はワイナリー巡りなどを楽しむといった「夕方以降の新しい楽しみ方」を提供する、というわけです。

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内容とは 軽井沢の課題も
2014年7月に登場した、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」。デザイナーはクルーズトレイン「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治さん(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 しなの鉄道の担当者は、この「信州プレミアムワインプラン」には質の高い、入手が困難なワインをそろえたといい、エッセイストで「信州ワインバレー構想推進協議会」の玉村豊男会長は、「『ろくもん』が日本を代表するワイン列車になれば」と話します。

「信州プレミアムワインプラン」、その内容は? 実際に体験

 2017年3月、観光列車「ろくもん」の「信州プレミアムワインプラン」試乗会で、その内容をひと足早く体験しました。

なお、以下に記すワインや料理の内容はそのときのもので、変わることがあります。

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内容とは 軽井沢の課題も
ほら貝の吹鳴後、観光列車「ろくもん」の扉が開く(2017年3月、恵 知仁撮影)。

「信州プレミアムワインプラン」が用意される「ろくもん3号」は、軽井沢駅を17時14分に発車。さっそくアテンダントから前菜が届けられ、グラスにワインが注がれます。

 最初のワインは「マリコ・ヴィンヤード ロゼ2014」(メルシャン勝沼工場)。工場は山梨県ですが、長野県上田市の丸子地区で収穫されたブドウを使う、上田市限定発売の品です。

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内容とは 軽井沢の課題も
「信州プレミアムワインプラン」の前菜と「マリコ・ヴィンヤード ロゼ2014」。グラスは2つ。ミネラルウォーターも用意されていた(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 前菜の内容は次の通り。志賀高原(長野県山ノ内町)の「オーベルジュ タキモト」による、「信州の味覚」が詰まったワインに合うメニューです。

●前菜
・カボチャとパプリカのキッシュ
・松本一本ネギのピューレ 志賀高原味噌風味のラスク
・山ノ内産根菜カポナータ
・東御産大麦ときびのタブレ
・信州サーモンのタルタル
・信州中野産きのこのパイ包み

ワイン2品目は選択制 手にしたグラスの向こうには普通列車

 観光列車「ろくもん」の「信州プレミアムワインプラン」、2品目のワインは選択制です。

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2品目のワインは、配られたカードを飲みたいものを上にして置いておけば、注いでくれる(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 爽やかでバランスのよい味わいに仕立てたという白ワイン「カンティーヌブラン 2015」、「高原の冷涼な気候を映し出すエレガントな味わい」と高く評価されているという「ピノノワール 2014」(ともに長野県東御市のヴィラデストワイナリー)から、好みで選ぶことができました。

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「信州プレミアムワインプラン」メイン料理のうち2品(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 メイン料理のうち、まず2品が運ばれてきます。「信州ハーブ鶏の低温ロースト ~ゴルゴンゾーラソース~」と、「小田切牧場の信州牛ローストビーフ」です。

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メイン料理のひとつ「飯山みゆきポークのチリコンカン」(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 続いてもうひとつのメイン料理、「飯山みゆきポークのチリコンカン」が運ばれてくると、ちょうど小諸駅(長野県小諸市)に着いたころで、向かいにはJR小海線の普通列車が停車中。列車のなかでこうした料理とワインを楽しむ「非日常性」を、より強く、また面白く感じた瞬間でした。

G7軽井沢交通大臣会議に採用されたワインも その旅行代金は?

 そんな非日常な「信州プレミアムワインプラン」の旅も18時ごろ、デザートが登場。終点が近づいてきました。デザート内容もやはり以下の通り、信州らしいものです。

●デザート
・フォンテェーヌブロー
・りんごのソースとカルバドスジュレ
・ドライフルーツと長野ベリー

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「信州プレミアムワインプラン」のデザート(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 またワインは、3品目にG7軽井沢交通大臣会議のレセプションでも採用された「シャルドネ樽熟成2014」(長野県須坂市の楠ワイナリー)、4品目にメルローをオークの木桶で「かもし発酵」ののち、約1年半熟成させた赤ワイン「ヴィニュロンズリザーブ メルロー2014」(東御市のヴィラデストワイナリー)、5品目に長野県飯綱町との共同開発で地元にしかない和リンゴ「高坂りんご」をブレンドしたという「シードル」(飯綱町のサンクゼール)を楽しむことができました。2017年4月は、この記事にあるワインが用意される予定です。

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内容とは 軽井沢の課題も
観光列車「ろくもん」の車内。木のぬくもりを感じられるラウンジ風の空間が広がる(2017年3月、恵 知仁撮影)。

 そして観光列車「ろくもん3号」は、18時29分に上田駅へ到着。今回の試乗会はここで終了しましたが、実際の運行では、戸倉上山田温泉の最寄り駅である長野県千曲市の戸倉駅(19時04分着)まで運行されます。

 この「信州プレミアムワインプラン」がある「ろくもん3号」は2017年4月1日(土)から土日を中心に運行され(運行日要確認)、発売は2か月前の1日午前10時から。旅行代金は1人1万2800円で、「軽井沢・長野フリーきっぷ」も含まれます。

 また、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」には軽井沢~長野間で食事を楽しむコース、戸隠や「日本三大車窓」のJR篠ノ井線姨捨駅を訪ねるといった「クルーズトレイン」コースも用意されているほか、乗車券プラス指定席料金(大人1000円、こども500円)で手軽に「ろくもん」乗車だけを楽しむことも可能です。

【地図】観光列車「ろくもん3号」の運行区間

観光列車「ろくもん」、ワイン列車「日本代表」なるか? その内容とは 軽井沢の課題も
「信州プレミアムワインプラン」が提供される「ろくもん3号」は軽井沢発戸倉行きの運転。停車駅はこのほかにもある(国土地理院の地図を加工)。