物価高が続く中、ブランド品などをお得に購入できるアウトレットモールの人気が高まっています。これらのアウトレットモールは、大都市を取り囲むように、郊外や近郊観光地に展開されています。
もっとも、運営する各社の戦略は微妙に分かれます。三井不動産系の「アウトレットパーク」は、南大沢(東京都)、門真(大阪府)など都心に比較的近い立地を好みます。越谷レイクタウン(埼玉県)などイオン系のアウトレットも同様です。それに対し三菱地所系「プレミアム・アウトレット」は、ふかや花園(埼玉県)、神戸三田(兵庫県)など、少し離れた都市圏の周縁部へ積極的に展開しています。
その「プレミアム・アウトレット」ブランドで最初のモールが、2000年に開業した御殿場プレミアム・アウトレットです。日本でのアウトレット人気のきっかけとなり、今も売上高日本一を誇ります。東名高速で都心から100km圏内ながら、箱根と富士五湖という二大観光地の中間という「観光の十字路」に位置し、富士山を正面に仰ぎ見る向きにショップが段状に広がる様子がリゾート気分を高める、“奇跡の立地”だと言えます。
あえて「遠ぉ~い場外駐車場」に停めるところが、恵まれた立地ゆえの弱点も抱えています。箱根の外輪山の麓に位置するため、周辺は平地ではなく、多くの道路も片側1車線です。店舗に隣接する4つの立体駐車場に入庫するため、連休やセール期間には長い車列ができます。
この渋滞は、駐車場が満車というケースもなくはないものの、ほとんどが、周辺の狭い公道に多くの自家用車が集中し、交差点の交通容量を超えることで生まれるものです。
そこで、週末などの多客日には、東名御殿場IC周辺などに点在する場外駐車場が臨時で開放されます。
駐車場シャトルバスは、主に、地元の富士急モビリティ御殿場営業所が担当します。多数の利用者を一気に乗降させるため、路線バスタイプの車両が投入されます。運賃箱や交通系ICカードのリーダーも設置されていますが、当然、無料です。駐車場と店舗前バスターミナルの双方に、シャトルバスにペットを持ち込むためのケージまで用意されています。
さらに繁忙日には、富士急グループの車両だけでは足りず、周辺事業者の車両も応援に入ります。時には意外な事業者も現れ、まるで「バス祭り」の様相。バス愛好家の視点でも興味津々です。
シャトルバスは、時には「狭隘路線好き」マニアも喜びそうなルートを走行することもあります。
筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)の目視では、2026年ゴールデンウイーク中のある日、開店直後の朝10時台、場内の駐車場に並んだクルマに比べ20分以上早く、店舗に着くことができました。
多数の場外駐車場の中で、筆者のおすすめは、「P13」と「P15」です。東京方面からの御殿場IC第2出口は、ピーク時間帯には料金所の先を左折する長い列ができます。
特にP15は、場外ながら三層建ての立派な立体駐車場で収容台数が多く、トイレやバス待合室まで設けられています。駐車場の前では交通誘導員らが場外駐車場の利用を呼び掛けていますが、カーナビで示された通り進みたいのか場内の駐車場へ突っ込んでいくクルマが多く、もったいなく感じます。
場外駐車場「これだけは注意」一方、場外に止めた場合に注意しないといけないのは、帰る際に迷わないよう、駐車場の番号をよく覚えておく必要があることです。
駐車場からの往路のバスは、店舗前のバスターミナル到着時には復路の乗車と同じバースで降車扱いをしますから、その場所さえ記憶していれば帰ることはできますが、駐車場番号を忘れると不安になるはずです。
また、各駐車場の開放状況、満空情報(空き具合)や駐車場シャトルの位置情報をリアルタイムで配信するなど、場外駐車場を有効に活用できる情報がもっと発信されれば場外駐車場を選ぶ人が増えそうにも思います。
「だったら最初から高速バスで」も充実クルマではなく公共交通でアウトレットへ訪れる人のため、直通バス増便などのニュースも続いています。
まず、御殿場では、ジェイアールバス関東が運行する東京駅、バスタ新宿からの直通高速バスが、6月より増便となります。平日でも続行便(2号車、3号車…)が常態化していた路線ですから増便も当然と言えます。これにより、東京都、神奈川県各地からの直通高速バスを全部合わせると、週末ダイヤではとうとう1日に30往復を上回り、さらなる新路線の準備も着実に進んでいます。
それでも、直通高速バスには満席便も目立ちます。そこでもう一つの手法が、御殿場ICに併設の「東名御殿場」バス停での乗り換えです。ここにはアウトレットへの無料送迎バスが15分間隔で運行しています。東京駅や新宿から毎時2~3便の高速バスが運行されているので、今後は東名御殿場乗り換えの周知が重要になりそうです。
さらに「観光の十字路」の立地を生かすため、箱根や富士五湖、さらに東海道新幹線三島駅などを結ぶバス路線を組み合わせた「観光回廊(コリドー)」作りも求められるでしょう。
「電車で行けるアウトレット」も臨時の直行バス!一方、冒頭で述べたように、三井系の「アウトレットパーク」は、御殿場などよりも都心に近い立地を好みます。横浜のシーサイドライン鳥浜駅から徒歩5分という横浜ベイサイドはその典型です。また、東急が主体となり開発を行った南町田グランベリーパークは、当然ながら東急田園都市線の駅前に立地し、駅名も施設名をそのまま名乗っています。
ただ、両施設とも、沿線の住民以外には直感的に伝わりづらい立地です。そこで、2026年のゴールデンウイークには、前者は横浜駅から、後者は横浜駅に加え相模大野駅からも無料の直通バスが運行されました。
どちらも大型の貸切バスを用いましたが、補助席まで満席になる便もあるほどの盛況ぶり。御殿場と比べると、小さい子供を連れたファミリーが多いのが印象的でした。
実は、御殿場の駐車場シャトルを担う路線バス用の車両は本来、通勤通学需要の減る土日はダイヤ数が少なめです。また横浜ベイサイドやグランベリーパークの直通バスを担当した貸切バス車両は、修学旅行などが少ないゴールデンウイーク期間中は稼働率が落ちます。つまり、これらの業務は、バス事業者にとっても、閑散日のリソースを効率よく稼働させる“おいしい”お仕事なのです。
“都心から離れる”ことが立地の要件になっているゆえに、足の確保が集客のカギを握るアウトレットモール。バス事業との相性はよく、今後も様々なバスサービスの展開を期待できそうです。

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