「青春18きっぷ」の旅では、フェリーは強い味方になります。海を隔てた区間をショートカットしたり、あるいは移動と宿泊を兼ねたり……そのように使えるフェリーが全国にあります。

対岸はすぐそこ、でも列車では大回り

「青春18きっぷ」ユーザーのなかには、乗車券などを別途購入しなければならない特急列車などにわずかな区間だけ乗車し、費用を抑えつつ時間の短縮を図る人がいます。

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南海電鉄の和歌山港駅は、徳島行きフェリー乗り場に隣接。JRの列車も乗り入れる和歌山市駅からひと駅で行ける(2016年2月、太田幸宏撮影)。

 このような、部分的に時間を短縮する方法は鉄道ファンのあいだで「ワープ」などと呼ばれますが、列車だけでなくフェリーでも、「ワープ」に効果的な区間があります。なお、この記事で取り上げるフェリーのダイヤや運賃は、2018年3月1日現在のものです。

航行距離100km未満 短絡に便利なフェリー

●東京湾フェリー
・区間:久里浜港(神奈川県横須賀市)~金谷港(千葉県富津市)
・本数:1日12往復、片道約40分
・運賃:大人片道720円
・備考:久里浜港はJR久里浜駅から徒歩約4分の京急久里浜駅からバス約10分。

金谷港はJR浜金谷駅から徒歩約8分

●伊勢湾フェリー
・区間:伊良湖港(愛知県田原市)~鳥羽港(三重県鳥羽市)
・本数:1日8往復、片道約55分
・運賃:大人片道1550円
・備考:伊良湖港はJR豊橋駅隣接の豊橋鉄道新豊橋駅から列車で約35分、終点の三河田原駅からバス約50分。鳥羽港は近鉄中之郷駅(JR線からは鳥羽駅乗り換え、近鉄志摩線でひと駅)すぐ

 東京湾フェリーは三浦半島と房総半島、伊勢湾フェリーは渥美半島と志摩半島をそれぞれ短絡するルートです。伊勢湾フェリーの伊良湖港は、JR線の駅からは離れていますが、豊橋駅前~伊良湖間の電車とバス、フェリー片道乗車券がセットの「豊橋~鳥羽割引キップ」(大人2060円)もあります。このきっぷでは、新豊橋~三河田原間を豊橋鉄道の電車に乗り、そこからバスに乗り継いでも、豊橋駅前から伊良湖港までバスに乗ってもOKです。

四国はフェリーを使うと便利!

 四国には数多くのフェリーが就航しています。なかでも、関西と四国、四国と九州を連絡するルートは便利かもしれません。

「青春18きっぷ」の旅、フェリーで「ワープ」はこんなに便利! 海外も格安で!?

夜行の1往復が毎日運航されている松山・小倉フェリー(2011年5月、太田幸宏撮影)。

●南海フェリー
・区間:和歌山港(和歌山市)~徳島港(徳島市)
・本数:1日8往復、片道2時間10分前後
・運賃:大人片道2000円
・備考:和歌山港は南海和歌山港駅(JR線からは和歌山市駅乗り換え、南海和歌山港線でひと駅)すぐ、またはJR和歌山駅からバス約25分。徳島港はJR徳島駅からバス約25分。

●松山・小倉フェリー
・区間:松山観光港(松山市)~小倉港(北九州市小倉北区)
・本数:1日1往復、片道約7時間
・運賃:大人片道5450円~
・備考:松山観光港はJR松山駅からバス約25分、伊予鉄道高浜駅からバス約3分。小倉港はJR小倉駅から徒歩約12分。

●宇和島運輸フェリー
・区間:八幡浜港(愛媛県八幡浜市)~別府港(大分県別府市)、八幡浜港~臼杵港(大分県臼杵市)
・本数:八幡浜~別府/1日6往復、片道約2時間50分 八幡浜~臼杵/1日7往復、片道約2時間25分
・運賃:八幡浜~別府/大人2等片道3100円 八幡浜~臼杵/大人2等片道2310円
・備考:八幡浜港はJR八幡浜駅から徒歩約30分またはバス約5分、別府港はJR別府駅から徒歩約40分、臼杵港はJR臼杵駅から徒歩約20分

 愛媛県と九州を列車で移動する場合、瀬戸大橋と岡山を経由する大回りになります。

たとえば八幡浜と別府、臼杵のあいだを「青春18きっぷ」が使える列車だけで移動しようとすると、1日では目的地まで到達できません。「青春18きっぷ」2回分と1泊分の宿泊費が必要です。

 ちなみに、松山・小倉フェリーは松山発、小倉発とも21時55分発、翌朝5時に目的港へ到着しますが、そこから7時までは船内で休憩できます。宇和島運輸フェリーでも、八幡浜~別府航路のうち八幡浜0時20分発の便は5時まで、別府23時50分発の便は5時30分まで、それぞれ船内休憩が可能です。列車より安く移動できるだけでなく、広々とした船室で、横になって寝ることもできます。

本州と北海道の移動、「新幹線オプション」かフェリーか

 本州と北海道をつなぐ青函トンネルは現在、北海道新幹線となっており、普通列車は走っていません。

これを補うため、北海道新幹線の奥津軽いまべつ~木古内間と、道南いさりび鉄道を「青春18きっぷ」で利用できる「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」が1枚2300円で販売されていますが、本州と北海道はフェリーで渡ることもできます。

「青春18きっぷ」の旅、フェリーで「ワープ」はこんなに便利! 海外も格安で!?

八戸~苫小牧間航路に就航している「シルバーエイト」。苫小牧港にて(2016年10月、太田幸宏撮影)。

●青函フェリー
・区間:青森港(青森市)~函館港(函館市)
・本数:1日8往復、片道約4時間
・運賃:大人片道1600円~
・備考:青森港はJR駅からバス約15分、「新田」下車徒歩10分。函館港はJR函館駅からバス約11分

●シルバーフェリー(川崎近海汽船)
・区間:八戸港(青森県八戸市)~苫小牧港(北海道苫小牧市)
・本数:1日4往復、片道約7時間15分~8時間30分(便により異なる)
・運賃:大人2等片道5000円~(学生4000円~)
・備考:八戸港はJR八戸線 本八戸駅からシャトルバス約20分。苫小牧港はJR苫小牧駅からバス約20分

「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を利用して青森~函館間を移動する場合、列車の乗車時間だけで3時間弱、奥津軽いまべつ駅と木古内駅での乗り継ぎ時間を含めると5時間以上を要することもあります。

青函フェリーの片道運賃は「オプション券」よりも安いほか、八戸~苫小牧間のシルバーフェリーであれば、宿代わりに使うこともできるでしょう。

長距離航路を使うのはアリ?

 国内には航行距離が300kmを超えるような長距離フェリーも数多く運航されています。あまり長い距離をフェリーで移動するのは、「青春18きっぷ」を利用した旅の趣旨と外れてしまうかもしれませんが、列車と組み合わせると移動に便利な航路もあります。

「青春18きっぷ」の旅、フェリーで「ワープ」はこんなに便利! 海外も格安で!?

大阪~志布志航路に就航している「さんふらわあ きりしま」。志布志港にて(2016年2月、太田幸宏撮影)。

●フェリーさんふらわあ(大阪~志布志)
・区間:大阪南港(大阪市住之江区)~志布志港(鹿児島県志布志市)
・本数:1日1往復、片道約13時間45分~15時間45分(曜日や便により異なる)
・運賃:大人片道12800円~
・備考:大阪南港のターミナルはニュートラム トレードセンター前駅(JRの最寄りは大阪環状線 弁天町駅)すぐ。

志布志港はJR日南線 志布志駅からタクシー5分。

 志布志港に近いJR志布志駅は、宮崎市と志布志市を結ぶ日南線の終点で、ほかの路線と接続していません。鉄道の旅を続けるには宮崎方面へ戻らなければなりませんが、たとえば志布志駅を目指して「青春18きっぷ」で旅し、そこから一気にフェリーで大阪へ戻る、といった旅程を立てることも可能になります。

 フェリーさんふらわあは大阪~別府航路、神戸~大分航路も運航しています。太平洋を運航する大阪~志布志航路と、瀬戸内海を運航する大阪~別府航路あるいは神戸~大分航路の乗船券がセットで8280円からという格安の「舟遊プラン」も設けており、関西から九州までの往復をフェリーで、九州内の移動を「青春18きっぷ」で、という楽しみ方もできます。

「青春18きっぷ」利用者優遇 フェリーで海外へ!?

「青春18きっぷ」の利用者が運賃割引を受けられるフェリーもあります。

・関釜(かんぷ)フェリー「青春18きっぷ旅 大応援キャンペーン」

 関釜フェリーは山口県の下関と、韓国の釜山(プサン)を結ぶフェリーです。電話での事前予約でキャンペーン利用の旨を伝え、下関港チェックイン時に「青春18きっぷ」とアンケートを兼ねた割引申請書を提示すれば、フェリー2等旅客運賃が片道9000円のところ、半額の4500円になります。割引の対象は下関から釜山への片道乗船券と、往復同時購入の場合です。期間中有効な「青春18きっぷ」であれば、スタンプの有効性や押印の数は問われません。

 関釜フェリーは夜行の1往復が毎日運航されており、釜山行きは下関19時45発、釜山8時00分着、下関行きは釜山21時00分発、下関7時45分着です。たとえば大阪発着で釜山に1日滞在する0泊3日の旅を、「青春18きっぷ」2日分4740円とフェリーの2等往復運賃9000円で楽しむこともできます。なお、釜山に行く際はパスポートを忘れないようにしましょう。