2018年10月から全41地域で交付が始まった「地方版図柄入りナンバープレート」のうち、「熊本」「福山」の申し込み件数が突出しています。一方、最下位は東京都内のナンバー。
2018年10月に全国41の地域で交付が開始された、自動車の「地方版図柄入りナンバープレート」。希望者が国などに申し込んで有料で取得できるものですが、国土交通省自動車情報課によると、2019年4月末時点における申し込み件数の上位5地域は次の通りです。
「熊本」の図柄入りナンバープレート(部分)。図柄に「くまモン」が使われている(画像:国土交通省)。
・1位:「熊本」(熊本県全域)、9129件
・2位:「福山」(広島県福山市ほか4市3町)、8634件
・3位:「仙台」(仙台市)、4575件
・4位:「愛媛」(愛媛県全域)、3913件
・5位:「富士山(静岡県版)」(富士宮市ほか静岡県内3市1町)、3395件
「熊本」「福山」の申し込み件数が、3位「仙台」を大きく引き離しています。
図柄入りナンバープレートの目的は、国土交通省によると「走る広告塔」として、地域の魅力を全国に発信することです。このため、図柄には地域の名所や特産品、花、祭り、歴史などにまつわるものが多いなか、「熊本」のナンバープレートには県のキャラクターである「くまモン」、「福山」のナンバープレートにはプロ野球「広島カープ」のキャラクターである「カープ坊や」が使われていることが、人気の理由です。
熊本県の交通政策課によると、ナンバープレートのデザインは複数案から県民投票で選ばれたものですが、どの案でも「くまモン」の使用は前提だったといいます。
「キャラクターの認知度がとても高く、県内にもファンが多いです。デザインもかわいらしく、県民の方に喜んでいただけていることが、申し込み件数に表れているのでしょう。これを取り付けたクルマで県外へお出かけいただくことによる、県のPR効果も高いと見ています」(熊本県交通政策課)
県も公用車に図柄入りナンバープレートを取り付けているほか、県下の新車ディーラーにも普及に協力してもらっているといいます。
一方、「福山」ナンバーにおける「カープ坊や」のデザインは、すんなりと決まったわけではありません。そもそも、広島カープの本拠地は「広島」ナンバー地域の広島市です。
福山市企画政策課によると、「カープ坊や」のナンバーは「県東部でも広島カープを応援していることを示す」目的もある一方で、名所や特産品を図柄にする案では、関係自治体のあいだで一致するイメージがなかったことから、「そもそも『福山』ナンバーの地域が広島県にあることを知ってもらえるデザイン」として導入されたといいます。
広島カープは2018年9月、球団史上初のセ・リーグ3連覇を達成しました。この勢いに乗ってか、図柄入り「福山」ナンバープレートの申し込みも多かったといい、2019年2月までは「熊本」をしのぐ全国1位でした。現在は「『1位奪還』を狙いPR中です」(福山市企画政策課)とのこと。県下全域が対象の「熊本」と比べて、登録台数のうえでは不利になるものの、新しい公用車にも順次取り付け、県内企業にも取り付けを依頼するなどして、「まずは1万枚」という目標を掲げているそうです。

2019年4月25日、蒲島熊本県知事と枝広福山市長らが石井国土交通大臣を表敬訪問。図柄入りナンバープレートによる地域振興などについて意見交換を行った(画像:国土交通省)。
2位「福山」と申し込み数において4000件以上の差で、3位となっているのが「仙台」です。仙台市の郡(こおり) 和子市長は2019年5月7日(火)の定例会見で、「なにぶん相手が『くまモン』と『カープ坊や』ですから、これは強敵ですよね。そういう意味では健闘しているといってもいいと思います」という認識を示しました。
仙台市政策調整課によると、事業用の図柄入りナンバープレートに限った場合では、「仙台」が全国1位だそうです。市営バスの全車両に図柄入りナンバープレートを取り付けていることが大きいとのこと。このほか、市営バスでPRのためラッピング車両を運行したり、市営地下鉄の車内で広告を出したりしているほか、自動車ディーラーにも普及のお願いをしているといい、「目標は2位に追いつくことではなく、『交付から1年後(2019年10月)に全国1位』です」と意気込みます。
東京近郊ナンバーがワースト3に見えるワケなお、2019年4月末時点で、申し込み件数のワースト5は、次のとおりです。
・37位:「石川」(金沢市と隣接1市2町を除く石川県全域)、489件
・38位:「佐世保」(長崎県佐世保市ほか3市5町)、464件
・39位:「杉並」(東京都杉並区)、271件
・40位:「越谷」(埼玉県越谷市)、270件
・41位:「世田谷」(東京都世田谷区)、183件
国土交通省自動車情報課によると、「世田谷」をはじめ都市部、特に東京近郊のナンバーは、全体的に申し込み件数が少ないといいます。
世田谷区の産業連携交流推進課はこの状況について、デザインが「目立ったキャラクター」を使ったものでないことのほか、図柄入りナンバーより1年先行して「東京オリンピック・パラリンピック」の記念デザインナンバープレートが交付されていることも要因のひとつとして挙げます。確かに、東京近郊ではオリンピックの記念ナンバープレートを取り付けているバスなども多く見られます。
世田谷区では、図柄入りナンバープレートの普及に向け、広報紙やウェブサイトでの掲載、また区内の自動車関連241事業者へのPRなど、「きめ細かく周知を図ってきました」といいます。「区民の皆様にとって長期的に親しまれることを目指し、引き続き普及啓発に取り組んでまいります」としています。

名古屋グランパスのキャラクターを使用した図柄入り「豊田」ナンバープレー(画像:国土交通省)。
ちなみに、自治体などのキャラクターを配した図柄入りナンバープレートは少なくありません。また「福山」のように、自治体以外が考案したキャラクターを採用したものとして、サッカーJリーグ「名古屋グランパス」のキャラクター「グランパスくん」を使った愛知県の「豊田」ナンバーが見られます。