陸上自衛隊は3年前から最新の地対空ミサイルとして、独自開発した「03式中SAM改」の調達を進めていますが、最初の配備先に沖縄が検討されています。これは南西諸島方面の離島防衛を鑑みてと見られます。

最新の純国産地対空ミサイル「03式中SAM改」の性能とは

 陸上自衛隊の最新地対空ミサイル「03式中距離地対空誘導弾改善型」、通称「03式中SAM(Surface-to-Air Missile)改」を最初に配備する場所として沖縄が選ばれたと、2020年1月5日(日)の産経新聞が報じました。この最新地対空ミサイルは、どんな性能を有し、これが配備されることで沖縄を含む日本の防空態勢はどれだけ強化されるのでしょうか。

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陸上自衛隊が導入する最新の地対空ミサイル「03式中SAM改」(画像:防衛装備庁)。

 そもそも、03式中SAM改は陸上自衛隊が保有する地対空ミサイルでは最も新しいもので、2017(平成29)年度防衛予算から調達が始まったばかりの装備です。それまで調達されていた「03式中距離地対空誘導弾」のバージョンアップ型であるため、上述したような名称で呼ばれています。

 原型の03式中SAMと比べると、03式中SAM改の最大の特徴は、巡航ミサイルへの対処能力が向上している点にあります。

 巡航ミサイルは、弓なりに曲線を描いて飛ぶ弾道ミサイルと違い、航空機のように低空を高速で飛翔するのが特徴で、種類によっては地形を読み取り、谷合を縫う形で飛ぶことが可能です。

 そのため自衛隊では、弾道ミサイルは海上自衛隊のイージス艦や、航空自衛隊の地上配備型地対空ミサイル「ペトリオット」で対処し、巡航ミサイルは陸上自衛隊の地対空ミサイルが対応するよう、役割を分担しています。

 この後者の能力が、03式中SAM改の配備によって向上することになります。それ以外にも、ネットワーク能力が向上したことで防衛可能なエリアが拡大し、そのうえ対処時間は短縮されています。

高性能だけど低価格なのも重要

 また、この対処時間短縮に貢献しているのが、ミサイルの垂直発射システムです。これは、たとえば前述のペトリオットの発射機、いわゆるランチャーが、射撃姿勢は斜めで発射機は旋回式なのに対し、03式中SAM改および原型の03式中SAMは、発射機は垂直に立ち回転しません。

 これにより、射撃時は目標方向に対して発射機を回さずにミサイルを上方向に射出し、その後ミサイル自身が目標に向かって飛んでいくことで、発見から撃破までの対処時間を短くしています。

沖縄配備か陸自最新の地対空ミサイル「03式中SAM改」その性能は 守備能力どう上がる?

弾道ミサイル防衛で一躍名を知られるようになった「ペトリオット」PAC3(画像:航空自衛隊)。

 また垂直射出には、周囲に建物などがあってもミサイルの飛翔ルートが制限されにくいというメリットもあります。これにより、都市部や山間部など見通しのあまりきかない場所にも布陣することが可能で、敵の攻撃を受けにくい、発射機を隠蔽しやすいというメリットにもつながります。

 さらに03式中SAM改は、上述したような原型03式中SAMからの改良点以外にもポイントがあります。それは調達コストの低減で、原型よりも取得単価が安くなっています。

 このコスト低減は、03式中SAM改の開発の要旨にもうたわれていました。原型の03式中SAMは高性能ゆえの高コストから、毎年度少数ずつでの導入に留まり、調達開始から10年以上経っても首都圏や近畿圏、九州、沖縄などにしか配備できていません。北海道や東北などを中心に、いまだ約半分の部隊が旧式化した「ホーク」地対空ミサイルを運用しています。

 03式中SAM改は民生品を多用し、専用システムを最小限にすることでコスト低減を図っており、陸上自衛隊としてはこれで古い「ホーク」を一気に更新したい目論見もあるようです。