2024年1-5月「老人福祉・介護事業」の倒産調査


 2024年に入り、介護事業者の倒産が急増している。介護職員の人手不足と物価高に伴う運営コストの増加が主な要因だ。2024年1-5月の「介護事業者(老人福祉・介護事業)」の倒産は、累計72件(前年同期比75.6%増)に達した。

すでに年上半期(1-6月)の過去最多だった2020年の58件を上回った。
 介護報酬がマイナス改定の「訪問介護」は34件(同61.9%増)、小幅なプラス改定にとどまった「通所・短期入所」22件(同46.6%増)、「有料老人ホーム」9件(同350.0%増)と、いずれも上半期の過去最多を5月で上回った。介護報酬のアップも人手不足や物価高のコストアップに追い付かない実態を示している。

 2024年1-5月に倒産した「介護事業者(老人福祉・介護事業)」の72件のうち、販売不振(売上不振)が57件(構成比79.1%)と約8割を占めた。また、従業員10人未満が55件(同76.3%)、破産など消滅型が69件(同95.8%)と、事業継続を断念する小規模事業者が多いことがわかった。

 介護業界は、もともとヘルパーなど介護職員の高齢化が進み、慢性的な人手不足に陥っていた。大手事業者との競合や他業種からの参入も市場競争の激化を促していた。さらに、コロナ禍で経営悪化に拍車がかかり、倒産が加速した。上半期倒産は2020年に過去最多を記録したが、その後はゼロゼロ融資などのコロナ関連支援の効果で抑制されていた。
 だが、コロナ禍が落ち着き、支援策の終了と同時に人手不足が再燃した。他業種の賃上げで賃金格差が広がり、介護職員の人材難がさらに深刻化した。介護職員のベースアップなど処遇改善にも取り組むが、採用難と離職は歯止めが掛からずにいる。
また、光熱費や燃料、介護用品などの物価高で運営コスト増も無視できない。ゼロゼロ融資などコロナ禍の支援が過剰債務を招き、財務悪化で新たな資金調達が難しい事業者も多く、複合的な要因が経営を圧迫している。

 2024年度の介護報酬はプラス1.59%だったが、マイナス改定の「訪問介護」を中心に、基本報酬が想定ほど上がらず、事業継続をあきらめた倒産が押し上げている可能性もある。人手不足や物価高などの根本的な問題は単独では解決できないだけに、しばらくは倒産の増勢が続きそうだ。

※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業、その他に分類した。
※ 本調査は、介護保険制度が始まった2000年から、負債1,000万円以上の倒産を集計している。

介護業界の倒産が過去最多             

 2024年1-5月の「老人福祉・介護事業」の倒産は72件(前年同期比75.6%増)で、すでに上半期(1-6月)ベースで、最多件数だった2020年の58件を大幅に上回った。

 業種別では、「訪問介護」が34件(前年同期比61.9%増)、「通所・短期入所」が22件(同46.6%増)、「有料老人ホーム」が9件(同350.0%増)、その他が7件(同133.3%増)の順。

 上半期ベースで、業種別の過去最多は訪問介護が32件(2019年)、通所・短期入所介護が18件(2017年、18年、20年、23年)、有料老人ホームが8件(2022年)で、それぞれ1-5月で上回った。

2024年1‐5月の「介護事業者」の倒産 72件に急増 上半...の画像はこちら >>

編集部おすすめ