今回は兵庫・須磨&垂水エリアの3つの沖堤防を紹介。地方からごく近く、5分ほどで渡ることができるにもかかわらず魚影が濃く、本格的な釣りを楽しむことができる。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)
大阪湾にある3つの沖堤防
釣り荒れの少なさ、潮流、水深、水質といった要素からすれば、「沖堤防は沖にあるからこそ釣れる」という考え方は確かにその通り。しかし、須磨・垂水エリアの沖堤防にはそれが当てはまらない。
今回紹介する大阪湾の3つの沖堤防は、地方からすぐ見える至近距離にある防波堤ながら、釣果の量、質ともに、地方とは比べ物にならない本格派の釣り場となっている。そんな須磨・垂水エリアの沖堤防を紹介してみたい。
近辺の主な釣り具・エサ店
このエリアの沖堤防の位置関係は下の略図のようになっており、須磨には須磨一文字(須磨ヨットハーバー一文字)と須磨浦一文字(須磨海岸一文字)が、垂水には垂水一文字がある。いずれも陸からすぐ見える場所にあり、渡船利用ながら出船後5分足らずで波止に到着する。

いずれの沖波止も渡船は防波堤渡しだけで、エサや釣具などの販売は行っていないが、近辺には渡船店と協力関係にあり、各沖堤防と周辺の情報にも精通しているエサ、釣具店があるので、情報収集を兼ねて利用すると便利だ。
たとえば、須磨のエサ光なら渡船須磨丸、福田渡船と協力関係にあり、店内には須磨一文字と須磨浦一文字の案内資料と渡船店の名刺が用意されている。垂水エリアにはフィッシングマックス垂水店があり、垂水一文字渡船・船長丸と協力関係にあり、垂水一文字の釣果情報を店内とSNSで随時紹介している。

では、実際に今回紹介する3つの沖防波堤について、まずは概要を説明していきたい。
須磨一文字
正式名称を須磨港南防波堤といい、須磨港と須磨ヨットハーバーの出入口に蓋をするかのように作られた全長524mの沖防波堤で、陸地からは至近距離にある。防波堤の構造は、外向き(沖向き)の両端にはテトラが積まれており、テトラのない所は垂直ケーソン構造となっている。

外向き高場は安全に注意
外向きの高くなっている部分は幅が1m程度と狭く、海面との高低差は約5mあるので安全面には特に注意し、タモの柄は6m以上ほしい。所々に外向きに上るためのハシゴが立てかけてあるが、固定されていないので、上る前には必ずハシゴの立て掛け方と脚の接地面を確認して、十分に注意する必要がある。

潮の流れ
波止際の水深は干満にもよるが、およそ12mと深い。潮流は波止に並行して東西に流れるが、他の防波堤と比べれば、潮流の速さは激流というほどでもない。
内向き(陸向き)は全域が垂直ケーソン構造で足場は広く、海面との高低差は約2mなので安全度は高い。内、外とも波止際から沖10mぐらいまでは海底に基礎石が詰まれており海底は粗い。
▼この渡船について渡船・須磨丸
出船場所:兵庫県神戸市須磨区
須磨浦一文字
須磨浦一文字は、須磨海岸からすぐ沖に見える短い8本の沖防波堤の総称で、東側から順に1番、2番…と番号を付けて呼ばれている。渡船は土日祝のみの営業で、常時渡しているのは1番から5番まで。6番から西の波止への渡しは、出船時に船長に確認が必要。

タモの柄は5mでOK
いずれの防波堤も沖向きは内向きより1.4mほど高くなっており、テトラが積まれている。海面との高低差は、テトラのない両端で3m程度なので、タモの柄は5mあれば、テトラ上での魚の取り込みでも対応できる。
内向きは水没注意
要注意なのは内向きで、広くて足場も良いが、決してファミリーや初心者向きではない。なぜなら、海面との高低差が30cmほどしかなく、満潮時はほぼ全域で水に浸かる。従って、波止に渡ったら真っ先に、全ての手荷物を沖向きの高い所に上げて置くようにしてほしい。

福田渡船
出船場所:兵庫県神戸市須磨区
垂水一文字
垂水漁港の出入口に蓋をするかのように作られた全長約1kmの沖防波堤で、須磨一文字よりも重厚な造りになっている。沖向きには何箇所かハシゴが付けられていて上ることができる。

テトラは足場が悪い
他の沖防波堤と違って垂水一文字に積まれているテトラは表面が滑りやすくグリップが効かないうえに、積まれ方も傾斜がきつく隙間が広い。従って足場は非常に悪く危険度が高いので、無理せず、水際まで下りていっての釣りは避けてほしい。

また、波止の西端にはテトラのない箇所があるが、沖向きは足元の幅も狭くなっており、海面との高低差は干潮時だと6m以上あるので、安全面から慣れない人にはオススメしない。沖向きでの釣りは、タモの柄は6m以上が必須となるが、取り込み時の場所や足場を予め確認したうえで、釣り座を構えるようにしたい。
内向きは好フィールド
一方、足場が良く海面との高低差が小さい安全な内向きこそ、垂水一文字では格好のフィールドとなるので、ぜひ目を向けてほしい。内向きならタモの柄は5mで十分だ。ただし、内向きといえども、東西を横断する速い潮流が釣り人の前に立ちはだかる。潮を制す者が釣果に恵まれる。

船長丸
出船場所:兵庫県神戸市垂水区
沖波止での注意
次に沖波止釣行の注意点を紹介しよう。
渡船利用時の諸注意
渡船利用時には、救命胴衣の装着が義務付けられているほか、時節柄、新型コロナウイルス感染防止対策として、マスクの着用や釣り人同士のいわゆる三密行為を避ける行動が求められる。
いずれの渡船店も神戸港や大阪港の渡船店とは違い、営業規模としては小さいので、利便性やサービス面で物足りなさを感じるかもしれないが、渡船利用は本来自己管理のもとに成り立っているとの理解が必要だ。
中でも須磨の渡船店は小さな船で運行しているので、安全面やスムーズな乗降の点で、手荷物はできる限りコンパクトにまとめて身軽にした方が良い。
熱中症対策は十分に
また、夏場から彼岸の頃までは、熱中症や脱水症状対策も怠れない。アルコール類や甘味の強い飲料は避けて、薄目のスポーツドリンクやお茶系の飲料を十分に持参して、こまめな水分補給を心がけてほしい。暑さが特に苦手な人は、氷や瞬間冷却パックなどを持参するのも良いだろう。
ゴミは確実に持ち帰る
後、つい見逃しがちなのがゴミ対応。サビキ釣りやエサ釣りではどうしてもゴミが生じる。水分補給のためのペットボトル飲料などもしかり。以前はゴミ袋にも流用できたレジ袋が、2020年7月1日から有料化されたので、エサ店では無料ではもらえない。釣行の際はビニール袋の持参もお忘れなく。ただし、波止の上にゴミ箱はないので、必ず各自で持ち帰るように。
代表的な釣法と釣り物
さて、ここからは各沖防波堤の釣り物とオススメの釣法を紹介していきたい。垂水一文字と須磨一文字は釣法や釣り物が似ているのでまとめて紹介しておきたい。
須磨&垂水一文字
垂水一文字の方が潮流は速く海底も粗いので、実際の釣りは難しいが、この2つの波止は釣り方と釣り物が似ている。外向きは足場の安全確保を前提に、フカセ釣りが人気だ。
チヌは春から秋までのロングラン、初夏から秋にかけては30cmまでのサイズながらグレが狙える。ただし、潮流が速いので、名手は磯釣りと同じく、円錐ウキを使った本格的な釣法で挑んでいる。

速い潮流に青物やマダイ
外向きではその他、ルアーでシーバスや青物の実績がある。また、この速い潮流を制し、海底の様子を熟知した常連が一攫千金のマダイ狙いで試みるのがカゴ釣りだ。須磨一文字なら外向き、垂水一文字なら内向きがフィールドになる。
カンダイ専門も面白い
内向きはヘチ釣りや落とし込み釣りの格好のフィールドで、夏を中心にチヌがよく上がっているが、タナを深くすると瞬殺でラインをブチ切っていくカンダイの存在も頭の片隅に置いて楽しみたい。カンダイ専門に狙うなら、竿もラインもハリも大仕掛けのズボ釣りが良いだろう。半夜は根魚狙いが手堅く、ガシラの数釣りに運が良ければアコウを手できるかも。

須磨浦一文字
須磨海岸の沖に作られていることから、キス、ベラ、ガッチョ、チャリコ、冬場はカレイと、投げ釣りで好釣果が望める。海底はほぼ砂地で釣りやすいが、波止の手前10m余りの基礎石と、海上に浮かぶブイの付近に沈められたロープや漁師のカゴなど、根掛かりのもとには注意したい。

フカセの好釣り場
外向きのテトラは、探り歩けばガシラやベラの数釣りが楽しめる。本格派にとってはチヌ、グレ狙いのフカセ釣り、青物狙いのルアーフィッシングの知る人ぞ知る好ポイント。
TSURINEWSサイトでも、須磨浦一文字のフカセ釣りで好釣果を上げた投稿記事が過去に掲載されているので、大いに参考になると思う。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>
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