食べて美味しいカニの中には「全身が毛まみれのもの」「脚の一部がヒレ状になっているもの」が知られていますが、今回紹介するアサヒガニは、「手がスパナーみたい」で「前後に動く」カニです。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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手の形が「ラッパー」?

梅雨に入るこの時期、鮮魚店の店頭で、どうにも目を引く一見変わった甲殻類を見かけることがあります。

関わらず真っ赤な色合いが非常に目立つその甲殻類は、パッと見はカニなのかなんなのかわからない見た目をしています。

というのも、カニの胴体の後ろにそのままエビのしっぽがついたような見た目をしているのです。

カニ界の常識に反して前後に動く「アサヒガニ」は原始的なカニ
カニ……?(提供:PhotoAC)

そしてそれ以上にユニークなのが「ハサミの形」。まるで「Yeah」と言いながら両手を前に出したときのラッパーの手のような形をしているのです。

前後に動く「アサヒガニ」

このヘンな甲殻類は「アサヒガニ」という種です。生きているときからきれいな朱色なので、日の出の太陽の色に例えて「旭蟹」と名付けられました。

カニ(短尾下目)の一種とされていますが、あらゆるカニの中でももっとも原始的なもののひとつと考えられており、多くのカニで甲羅の内側に折りたたまれている腹部が、折りたたまれずに尾のように後方に突き出しています。

カニ界の常識に反して前後に動く「アサヒガニ」は原始的なカニ
アサヒガニの鋏脚(提供:茸本朗)

この形状のためか、アサヒガニは一般的なカニのように左右に動くのではなく、前後に動き、その様子は非常にコミカルです。

そして最大の特徴である、ラッパーの手のような鋏脚。ハサミというよりもスパナのような形になっており、それ故に英名も「Spanner Crab」となっています。

実は今が旬の絶品カニ

アサヒガニは一般的な知名度は決して高いとはいえませんが、プロの間では非常に評価が高いカニです。初夏が旬のため今の時期に入荷が多く、近年では国産だけでなくオーストラリアからの入荷もしばしば見られるようになっています。国産のほうが高価ですが、輸入者と比べ色が鮮やかで味も良いとされます。

アサヒガニの魅力といえば、そのたっぷり詰まった身。

胴体から鋏脚にいたるまで肉がいっぱいに詰まっており、見た目よりも歩留まりが良いのが特長です。

カニ界の常識に反して前後に動く「アサヒガニ」は原始的なカニ
蒸しアサヒガニ(提供:茸本朗)

味の上で特に評価が高いのがミソ(中腸腺)で、生臭みもなくコクが有り、濃厚で大変美味です。カニの中で一番だという人も少なくないといいます。難点はほかのカニと比べるとやや肉がほじり出しにくいことですが、それを補って余りある魅力を持っています。

1匹2000円ほどで手に入るので、見かけたらぜひ購入してみてください。


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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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