夏の味覚といえば――魚部門では、アジの南蛮漬けが一番、二番くらいにくる。アジングが大好きな筆者も例に漏れず、とても好きな料理だ。

しかし、苦労してアジを釣りまくっていると、ふと、大きな虚しさに襲われることになる。「こんなの、釣って調理して食うより、スーパーの鮮魚コーナーで買った方が安くつくよな……」今回は、そんな釣魚食の虚しさについて、アジの南蛮漬けを例に挙げて考えたい。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)

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アジ、海で釣るか、店で買うか

結論から言えば、アジの南蛮漬けのコスパは、「自作(釣って調理して食べる)」と「スーパーの調理済み品」を比べれば、圧倒的に後者が勝る。

「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
アジの1匹は釣り人の涙(提供:TSURINEWSライター井上海生)

味わいがどうこうと言うよりも、手間の時点で、スーパーで買えば最短10分のところ、釣り場でアジの回遊を待てば最大5時間、果ては釣れないこともある。アジの回遊は、また「運要素」が高いので、ダメなときには一切報われない。釣りとは虚しいものだ。

アジの南蛮漬け、お手製コスト

それでもなお、お手製のコストを考えてみよう。ザッと計算すると、項目別に次のようなものか。ここでは、ロッド&リールのお金は考えないものとする。その代わりに、ルアーやエサの代金は考えたい。

・エサ代:500円

・交通費:1000円

・釣行時間代:2000円(最低時給1000円×2時間で計算)

・料理時間代:1000円(計算法は同上)

本当に「概算」だが、おおむねこのようなところだろう。合計4500円が、うまうまアジを仕入れられたとして、最低限かかってくる。費やす時間も、時給換算して、足しておいた。時は金なり、である。

釣魚を日常的に食べる習慣がある方にはなんとも白けさせてしまうようだが、純粋にコストを計算すると、このようなお金の収支がある。もっといえば南蛮漬けは特に「魚を処理する、揚げる、ちょっと冷ます、トッピングと味付けをする」という”大工程”があるので、調理コストはあまりに高い。

スーパーで買うと衝撃の安価

自分で釣って、アジの南蛮漬けを作る。そのコストを、上では「4500円」と概算した。それに比べてスーパーマーケットで、できあいのものを購入してみると、どうだろう?なんと、安ければ450円だ。

「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
スーパーの南蛮漬け(提供:TSURINEWSライター井上海生)

この画像のものは筆者の近くのスーパーで、割引品として買ったものなので、もうちょっと安価になっている。ちなみに切り身は、6片あった。おそらく20cmほどのアジを3尾くらいだろう。サビキでもアジングでも、釣れるときにはまったく物の数ではないが、釣れないときには死んでも釣れない数だ。

自作すれば4500円、スーパーマーケットで買えば450円。あなたはこの差を、どう考えるだろう?

結論:ただ食べたいならスーパーで買おう

冒頭で述べたように、ただ純粋にアジの南蛮漬けを食べたいときには、スーパーで買うか食堂で注文するかの方が、圧倒的にコスパはいい。釣魚を仕入れてきて、鮮度抜群の状態で作れば、それはうまいはうまいが、シビアなコスト目線で見れば、微妙なモノがある。いや、もはや微妙とすらいえない……。

そういう意味ではキャッチ&リリースを前提とした遊びのルアーフィッシングなど、むしろ潔くてコスパもいいものかもしれない。いやコスパも何もない。何しろ釣ることが目的で、その代価に何を求めているわけでもない。釣りをする時間がいわゆる「プライスレス」なのだから、それ以上の充実はない。

「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
「アジの南蛮漬けを食べたい!」釣るのとスーパーで買って作るのではどちらがお得か?
釣っている時間こそがすべて(提供:TSURINEWSライター井上海生)

ちなみに筆者がこんなことを考えたのには、理由がある。先日、ふと財布を見ると手持ちの現金が底をついていた。ATMでおろすと、今月の出金無料回数は超過していて、手数料が200円ばかりかかる。「それなら今から海で釣った魚で、残り数日、手料理してしのぐか?」と思ったからだ。しかし、もちろんそんなことができる性分でもなければ、己の調理の技量でもない。愚かな思いつきは一瞬で消え、粛々とクレジットカードで買い物をした。

<井上海生/TSURINEWSライター>

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