寒さは緩み、季節は確実に春に近づいている。だが3月から4月にかけて、伊勢湾奥のベイエリアは一年で最も水温が低くなる。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
フィールド
伊勢湾奥と大雑把な書き方をしたが、かなり広いエリアとなる。東はセントレア周辺から名古屋港、さらに三重県の四日市港、鈴鹿、津辺りまでがそのくくりとなる。中部エリアのアングラーにとって、その中でも最もなじみがあるのが名古屋港と四日市港だろう。
どちらも広大な工業港で、名古屋港だと知多堤から弥富ふ頭までの全域、四日市港だと霞ケ浦ふ頭から千歳地区までがそれに該当する。

この2つの港に共通するのが、大型タンカーや外国船籍の大型船が入港すること。10数年前に制定されたソーラス条約により、保安上の理由から釣り人に限らず一切の立ち入りを禁止されているエリアが多く存在する。
よって名古屋港では釣りができる場所がかなり限定的。だが四日市港は大型船が接岸しているエリア及び接岸期間のみ立ち入り禁止になることが多く、比較的釣りができるポイントが多い。
今回はライトソルトゲームのエキスパートである杉山陽佑さんに同行し、低水温期のライトソルトゲームについて深堀りしてみた。
手堅くカサゴから
杉山さんが今回のポイントに指定したのは、三重県四日市市の霞ケ浦ふ頭。3月半ば現在、ロックフィッシュの好釣果が聞かれるのは、千歳地区よりも霞ケ浦地区らしい。ちなみに千歳地区ではバチ抜けに絡むシーバスなら有望とのこと。

3月18日の夕方、霞ケ浦ふ頭で杉山さんと合流し、早速2台の車でポイントに向かう。
狙うポイント
さて今回のメインターゲットはカサゴ。まれにムラソイやタケノコメバルも交じるが、釣果の99%はカサゴとのこと。そして狙うポイントはずばり足元の壁際。しかも水深3mまでの表層レンジとのことだ。
カサゴ=底というイメージを持っているアングラーは多いと思う。それは決して間違ってはいないが、正確には底にある障害物にタイトに着いていることがほとんど。つまり障害物があれば、底でなくてもカサゴは着くのだ。

では足元の壁際、しかも表層レンジに障害物があるのかと聞かれれば、この時期多くのカキ殻が付着する。このカキ殻にカサゴがわんさか着くのだ。
そしてもうひとつのキーワードが明かりだ。
つまり壁に多くのカキ殻が付着して、さらに明かりが海面を照らしているポイントであればどこでも狙える。底付近を狙ってもいいが、ヒット率は激減。深くても水深3mまでとのことだ。
タックル
ここでロックフィッシュを狙うためのタックルについて説明しよう。杉山さんがメインで使用しているのはアジングロッド。長さは5.8ftだが、慣れないうちは7ft前後がお勧め。足元を狙うためキャストすることはほぼないが、ヒット後はロッドを前に突き出してカサゴを壁から一気に引き離すため、ややリーチがあった方が使いやすい。

リールは2000番クラスのスピニング。巻き取り量の多いハイギアタイプがお勧めだ。そして大事なのがライン。

PEラインやエステルラインでは、カキ殻に擦れて一発でブレイクしてしまう。魚との距離が近いため、そこまでの感度は必要ない。根ズレに強いフロロを通しで使うのが一番とのこと。太さもメバルやアジほどシビアになる必要ないので、強度重視で4ポンドぐらいがいいだろう。
ルアー
ルアーの基本はジグヘッドリグ。底まで落とす必要はないので、1gを基準に前後を用意すればOKだ。ワームはあまりこだわる必要はない。ストレート系やシャッドテール系の1.5~2inchぐらいが適当だ。

他に杉山さんが使うのが、意外かもしれないがメタルジグだ。ヒラヒラと落ちるものに反応が良く、ストンと落ちるリア重心のものは極端に反応が悪くなる。重さは1~5g。フックはフロントのみでいいが、食いが悪かったりスレてきたりしたときは、テールにシングルフックを1本付けるといい。

釣り方
さてここからは肝心の釣り方の解説だ。まず足元、壁から50cm以内にルアーを落とし、ラインをフリーにしたままアングラー自身が3~4mほど横へ移動する。移動したらベールを返して、ティップを下に向けて待つ。これだけだ。

リールはヒットするまで巻くことはない。横移動してラインを張ると、ルアーは自身の足元に向かってカーブフォールする。このカーブフォールの途中で食ってくることがほとんどだ。
ラインは徐々に真下を向いてくるので、垂直になったら回収して次のポイントを探る。これの繰り返しだ。

大事なのはルアーを落とす位置。壁から1m離れたら、まずアタリは出ない。だが近すぎると、今度はカキ殻に引っ掛かってしまう。30cmを目安に落としていこう。
怒とうの入れ食い
さて、当日は完全に暗くなった午後6時半ごろから実釣を開始した。まずはアジングロッド+1gのジグヘッドリグで、足元に落とし込む杉山さん。こちらがカメラの準備をするかしないかのうちに、「食ったよ~」とカサゴを抜き上げてしまった。なんという早業……。

そこからもう怒とうの入れ食い。水面下1mで食ってくる高活性の個体もいて、ガンガンアタってくる。サイズは小さくて10cmちょい、大きなものは20cmクラスとバラつきはあるものの、とにかくアタリが多い。
狭いエリアに相当数のカサゴが着いているようで、同じ場所から何匹も上がってくる。アタリがなくなっても、少し時間をおけばガンガンアタってくる。話には聞いていたが、これほど浅いレンジでカサゴがガンガンヒットしてくるのは驚きしかない。

ここで浅井さんも登場。浅井さんはノベザオ+メタルジグで狙うようだ。

2人ともすごい勢いで釣果を伸ばしていくが、風が徐々に強くなってきた。背中からの風なのでまだしのげるが、体感温度はどんどん下がっていく。それでも2人の勢いは止まらない。ただカキ殻に擦れてのラインブレイクやカキ殻に潜られることもあったため、ヒット後は少々強引なやり取りは必須のようだ。
納得の2ケタ到達
ひと通り撮影を終えてから記者自身もタックルを拝借。言われた通りに足元に落とし込み、3mほど左に動いてティップを動かさずに待つと……、すぐにブルッブルッと明確なアタリが出た。すかさずロッドを前に突き出してリールを巻くと、手乗りサイズの小さなカサゴ。こんなあっさり釣れていいのか……。

その後も釣り続け、30分ほどで5匹のカサゴをキャッチ。サイズはアレだが、初めての釣法で釣れたことがうれしい。そして風がさらに強くなってきた8時すぎに終了。わずか2時間足らずの実釣で杉山さんは20匹以上のカサゴをキャッチ。遅れてきた浅井さんも2ケタはクリアしていた。

釣り荒れが進んでいるイメージのベイエリアだが、杉山さんと浅井さんに聞くと25cmクラスまでは出るらしい。しかもこの感じだと、相当な数のカサゴが潜んでいると思われる。
この好調は今年だけのものなのか、それとも毎年こんな感じなのか2人に聞くと、毎年春にはこれぐらい釣れるらしい。もちろん年によって多い少ないはあるが、今年は平均的とのこと。平均的でこれほど釣れるとは。
最後に
最後に注意点を3つ。1つ目は必ず潮位が高い時間帯に釣行すること。ド干潮の時間帯にはカサゴが着くはずのカキ殻が海面上に露出してしまうためだ。必ず潮汐表を確認してから出かけるようにしたい。
そして2つ目。非常にイージーに釣れてしまう壁際&表層レンジのカサゴだが、成長の遅い魚であり釣れるだけキープしてしまうと魚影はあっという間に薄くなる。キープNGとは言わないが、持ち帰りは食べる分、最小限にとどめておくことを強くお願いしたい。

3つ目は実際やってみて思ったのだが、この釣りは護岸から身を乗り出すことが多い。テンションが上がり過ぎて足を踏み外すことのないよう十分に注意してほしい。もちろんライフジャケットの着用は必須だ。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2025年3月28日号に掲載された記事を再編集したものになります。