「釣り人の憧れ」と呼ばれることもあるあの「黒い魚」、この時期は本当に身近な場所で見かけることがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
神田川で「魚の大群」が話題に
先日、SNSでとある「川魚」の画像が大きな話題になりました。その写真は名曲のタイトルでも知られる東京の都市河川「神田川」で撮られたものです。
写真には、神田川の水面に浮かぶ魚たちが写っていました。大きいものでは数十cmはありそうな大きな魚が、およそ数十匹ほどの大群を成していたのです。
一般的に、このように河川に大群をなすイメージのある魚といえば「ボラ」であり、この時も多くの「ボラですね」というリプライが並びましたが、実際はボラではなくクロダイでした。
クロダイがなぜ川にいるの?
クロダイはマダイと同じタイ科の魚で、基本的には海水魚です。しかし彼らはしばしば河川に入り込み、川魚のように振る舞います。
クロダイはボラやハゼと同様、河川の河口部などのいわゆる汽水域を好む魚で、幅広い塩分濃度に適応できる体のつくりを持っています。ときに純淡水域と呼べるような場所に入り込むこともあります。
淡水と海水の出会う河口部はプランクトンが多く、それを餌にする多くの小魚や小生物が集まります。そしてそれを餌とするクロダイもたくさん入り込んでくるのです。
「出汁の素」として珍重する地域も
クロダイはタイの一種で見た目にはとても美味しそうですが、食用魚としての評価はイマイチです。というのも、前記の通り川に入り込む性質に加え、水質の悪い水域でも棲息できることからしばしば臭い個体がいるのです。
しかし、西日本ではクロダイも比較的人気の魚です。水質の良い場所で獲れたものは味が良く、また全身にゼラチンを多く含むのでコクのある良い出汁が取れることがその理由でしょう。
そもそもクロダイを「出汁の素」として珍重するところもあります。長崎県島原地方では、さつまいもを使った六兵衛という麺料理が知られますが、この出汁はクロダイから取るそうです。他にもそうめんやうどんの出汁をクロダイから取る地域もあり、この魚が日常的な食材として親しまれてきたことが偲ばれます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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