【書評】まったくためにならない小説-丹下健太『仮住まい』 - 研究員レポート

 さて、『仮り住まい』である。一口で言うとこれは「面倒くさがりの小説」だ。会社員で三十路が目前となった前田は、ある日大学からの友人である、みきが暮らす家で一緒に寝泊りすることになる。
 別に色っぽい話ではない。細かく書くと長くなるので省略するが、なぜか前田は、みきの家にいるヘビの世話をしなければならない事態に陥ったのである。元来ヘビが嫌いで世話などしたくない前田は、みきにその肩代わりを頼む。そのため、みきに言いように顎で使われる立場になってしまうのだ。みきは自分が言いたくないことをまったく口にしようとしない人間だし、事態の鍵を握る前田の弟・あきひろは言うべきことも言わないで済ませようとする性格だ。その2人に関わったことがそもそも前田の不運だった。
 前田にはけいこという恋人がいるので、彼女にみきとの同居を知られないようにしようと、事実を隠そうとして細かい嘘をつき続ける。そのため、さらなる弱味をみきに握られてしまうことになるのである。別にやましいことは何もしていないのに! 嫌いなヘビの世話を頼まれただけなのに! 面倒くさがって説明の手間を惜しんだせいで、たいへんなことになってしまったわけなのである。
 こうしてややこしい立場になってしまった前田が、なんとかヘビの世話をせずにすませたい、けいこに余計なことを知られないようにしたい、と考える小説である。そのために彼が思いついた対処案がまた別の種類の面倒くさい事態を引き寄せていく。

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