★後藤晴菜インタビュー 前編

 2010年4月から放送が始まり、今年で10年目に突入している日本テレビの『Going! Sports&News』(土曜・日曜 深夜11:55~)。その日のスポーツニュースをしっかりと伝えつつ、MCの上田晋也さんとの軽妙なやりとりも披露し、番組を盛り上げているのが後藤晴菜アナウンサー(土曜日担当)だ。

じつは、中学・高校ではバリバリの体育系でしかも理系。番組の話を聞きつつ、スポーツにまつわる話も聞いた。

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意外(?)にも体育会系だった後藤晴菜アナ

―― インスタ、拝見しました。最近(取材日に近い日)、夏休みを取られていたんですね。

後藤 そうなんです。秋にはラグビーのワールドカップが日本で開催されますし、プロ野球の優勝争いなど、夏から取材も増えることを想定して早めに取りました。

こんなに早い時期に夏休みを取るのは初めてでした。

―― どれくらい取られていたんですか。

後藤 初めてのギリシャへ5泊7日で行ってきました。昨年、平昌オリンピックへの派遣が決まったときにオリンピックの歴史をゼロから勉強したんです。ギリシャはオリンピック発祥の地。以来、ずっと興味を寄せていた国のひとつです。

また、今回一緒に旅行した杉野真実アナウンサーが古代ギリシャ神話のファンで。それぞれの目的とタイミングがぴったりと合わさったんです。これはもう行くしかないと即決でした。来年の東京オリンピックの前にオリンピックの起源に触れられたことでより一層、モチベーションも上がりました。

―― 旅行はもともとお好きなんですよね。

後藤 そうなんです。

短いお休みでもいいので、連休ができるとまずどこへ行こうかと考えます。例えば、MLBを見てみたくて、父とふたりでニューヨークへ行きました。弾丸旅なので2泊。ただ、初めてのヤンキースタジアムでイチロー選手を見た時、移動の疲れも時差ぼけの眠気もすべて吹き飛ぶくらい感動したのを覚えています。目的をひとつに絞って、短い期間でさっとおでかけする旅行が好きですね。名残惜しい気持ちがまた次の旅の楽しみにつながるんです。

―― インスタつながりでお聞きします。ギリシャの写真の間に陸上選手の市川華菜さんと今井沙織里さんの写真がありました。後藤さん自身も学生時代は陸上選手だったんですよね。

後藤 そうなんです。中学校の陸上部の先生が競技の楽しさに気づかせてくれたんですよね。その先も長く続けたいと思うようになり、当時から陸上部が強いと言われていた高校へ進学しました。

競技生活の中で市川選手、今井選手に出会い、今につながっています。

―― 陸上を始めたきっかけを教えてください。

後藤 走るのが得意だったというのが一番の理由です。小学生の頃は運動会が近づくと、父と公園で朝練をしていました(笑)。とにかく幼いころから負けず嫌いで。中学校はそんなに部活の数が多くなかったので、迷うこともなく吸い込まれるように陸上部に入りました。

―― 種目としては短距離だったんですよね。

後藤 はい。ハードルや走り幅跳びに挑戦したこともありましたが、どうもセンスがなくて(笑)。シンプルに走るだけという短距離が一番自分に合っていました。100分の1秒でも速く走りたい、ただただその一心でした。

―― 市川さんや今井さんとの出会いもあり、それがきっかけでアナウンサーを目指されたとか。

後藤 そうですね。出身地の愛知を代表するような選手になれるか、日本を代表するような選手になれるか、というと、私は到底およばない選手でした。”一番”になることの厳しさ、難しさに触れた瞬間だと思います。ただ、ぽっこりと鍛えられたふくらはぎを見た時に、「あぁ。私の青春は間違いなくここに詰まっているなぁ。」と思ったんです。別の形でこの先も陸上競技に関わることはできないか、その選択肢のひとつとしてアナウンサーという道を考えるようになりました。ディレクターや記者という道もあったかもしれません。何とかして陸上に関わる道をつなげておきたかったんです。

―― 入社試験の面接時には、スポーツ報道に携わりたいというお話をされたんですか。

後藤 陸上競技の話しかしてないんじゃないかというぐらい(笑)。最終面接では、福島千里選手の話をしました。日テレは毎年箱根駅伝の中継もあるので、その歴史なども勉強しましたね。「私、生半可な気持ちではないんです」というのをどうしたら伝えられるかなと考えながら受けていました。

―― 『Going!』は2014年から担当されています。決まったときはうれしかったですか。

後藤 頭の中が真っ白になってしまうくらい、本当にうれしかったです。もちろん、スポーツ番組を担当したいと話していたものの、希望が通るとは限りません。適性だけでなく、運とタイミングもあると思うんです。スポーツに関わるなら『Going!』、そしていずれオリンピックに携わりたいというのが自分の中の未来予想図だったので、入社2年目でそのスタート地点に立つということは少し怖さもありました。

―― 取材したい大会はあったんでしょうか。

後藤 迷いなく、オリンピックですね。オリンピック期間中は世界中のトップアスリートが集まって、スポーツが世界をひとつにする期間だと思うんです。いつかその取材をしたいという気持ちはずっとありましたね。出場する選手自身や、その選手のオリンピックに至るまでの過程、また、その選手のモチベーションを支える要素はなんなのか。そういうものを地道に追いかけ続けることができたらいいなと思っていました。

後藤晴菜アナの入社試験の記憶「生半可じゃない陸上愛を伝えました」


―― 取材したい選手はいましたか。

後藤 いちばんは市川華菜選手と今井沙緒里選手に、今度は取材者として向き合いたいというのが目標でした。友だちとしてはもうずっと長い時間一緒に過ごしていますが、取材者となったときに、彼女たちが私にどういうふうに心を開いてくれるのかなと。少し恥ずかしいような気持ちもありましたが、すごく楽しみにしていた部分でした。リオオリンピックの中継でご一緒させていただいた短距離の朝原宣治さんも、私が現役だった頃から憧れていた方です。北京オリンピックの男子4×100mリレー決勝の映像はいつでも頭の中で再生できるぐらい記憶に残っているので、隣でお話を伺えるなんて夢のような時間でした。

―― 後藤さんが知らなかった世界で、取材して面白いと思った競技はなんでしょう。

後藤 スピードスケートですね。平昌オリンピックの派遣を告げられた時に「後藤にはスピードスケートのパシュート(団体追い抜き)決勝のインタビューをしてもらう」と言われていたんです。正直、知識がほとんどなく、この競技のいちばんの魅力はいったい何だろう?というところからスタートしました。平昌オリンピックで女子のパシュートが金メダルを取ったとき、インタビューを控えた私はオーバル(楕円)のリンクの中でレースを見ていたんですが、もう始まる前から感極まってしまって、涙が止まらなくて。

―― 始まる前からですか。

後藤 そうなんです。オリンピックに派遣されることが決まってから、選手選考の間もずっと取材させてもらっていたので、これからいよいよ決勝が始まるんだなと思ったら気持ちがぐっと入り込んでしまい、溢れる涙で視界がぼやけてしまい、必死でした(笑)。スピードスケートは陸上と似ているところもありますよね。コンマ何秒のタイムの世界で競っていて。レースの時はタイツを着てカッコいい選手たちでも、オーバルの外では私たちと変わらないひとりの女性、取材しているとそういう二面性にも気づきます。

―― 取材をするうえで気をつけていることはなんですか。

後藤 短い3分ほどのインタビューから1時間ほどのロングインタビューまでいろんなインタビューがあるのですが、とにかく積み重ねが大切だと思っています。最初は緊張で声も出せず、ペコリと会釈するのが精一杯の選手もたくさんいらっしゃいます。でも、100回のペコリから、今度は「こんにちは」のひと言につながる。その積み重ねが生きたからこそ、スムーズにインタビューできたということも多々あります。せっかくのインタビューで「はじめまして。よろしくお願いします」からスタートするよりも、その日に至るまでの積み重ねがあったほうがお互いに心を開いてお話できるのかなと思っています。

―― 取材した情報を生放送でお話しされますが、気をつけていることは?

後藤 上田晋也さんとのやり取りですね(笑)。オープニングで私のひと言に上田さんがどうツッコんでくださるか、当たり前ですが台本には書いてありません。「上田さん、こう言ってくるかな。いや、逆にこう言ってくることもあるかもしれないな」って、自分の中でできる限り引き出しを用意するんですが、予想通りにいくことはほとんどありません(笑)。

―― そこで「失敗したな」と思うと、引きずってしまうんですか。

後藤 引きずります…。番組中ずっと尾を引くんです。ミスをしないためにも、オープニングでいいスタートを切りたいです。

―― 逆に言うと、見ている人にとってはそこが注目でもあるんですね。

後藤 そうかもしれません。シナリオがない部分なので、楽しんでもらえたらうれしいですね。

―― 改めて番組の魅力を教えてください。

後藤 今年、『Going!』は10年目に突入しています。その日に起きたスポーツニュースを取り扱うというのはもちろんですが、9年間の積み重ねが詰まった番組だなと思っています。ありがたいことにアスリートの皆さんの中でも『Going!』という番組が浸透していて、『Going!』だから話してもらえたということもたくさんあるんです。選手ひとりひとりの過程を積み重ねて取材しているという部分では、他に負けないものを持っているのではと思います。

―― 今後取材したい選手や、注目している競技を教えてください。

後藤 オリンピックの新競技は、私もまだまだ知識が浅い分野です。スポーツクライミング、サーフィン、スケートボード、BMX、空手は楽しみですね。若い10代の選手も多いですし、視聴者のみなさんと一緒に勉強していくような気持ちでどんどん取材をしたいなと思っています。取材したい選手は…悩みますね。陸上をやってきたという点で、お会いしてみたいというのは、アリソン・フェリックス選手(アメリカ/陸上短距離の女王)です。”憧れ”とひと言ではまとめられないくらい尊敬している選手です。なかなかひとりに決めきれませんが、大坂なおみ選手もお会いしたい選手のひとりです。試合後の記者会見でときどき見せるチャーミングな姿もファンをとりこにしますよね。とにかく、ひとりでも多くの選手に会い、ひとつでも多くの競技に触れて、東京オリンピックを迎えたいです。

Profile
ごとう・はるな。1990年4月12日生まれ。愛知県出身。A型
趣味:飛行機を見ること。乗ること。特技:ピアノを弾くこと
好きな言葉・座右の銘:一点集中・全面展開