乾貴士がエイバルへ復帰した。
「エイバルは僕にとっての我が家。
エイバルに復帰し、記者会見に臨んだ乾貴士
『マルカ』紙は「我が家に帰ってこられて、とても嬉しい」というタイトルで、乾の会見でのコメントを紹介している。
昨季、確かに乾は思ったようなシーズンを送ることができなかった。
2015年、ドイツのフランクフルトからエイバルに加入。クラブ史上初めて1部に昇格を果たし、2年目となるチームで、乾は助っ人として1部残留に大きな役割を果たした。その後もチーム内で確固たる地位を築き、2017~18シーズンは9位フィニッシュに大いに貢献した。
ロシアW杯をはさんでレアル・ベティスへ移籍。
「たぶん、スペインでの最後の移籍になるんじゃないかな。年齢もあるし、外国人枠もある。その先はどうなるかわからないけど、たぶん最後」
スペイン1部のようなトップレベルでの移籍は、年齢的にも最後になるだろうという意味だ。サッカーをプレーすること自体が好きな乾は、スペイン1部に固執しているわけではない。たとえスペイン1部でできなくても、プレーは続けたいと思っていた。
移籍したベティスでは、リーグ戦8試合、カップ戦2試合、ヨーロッパリーグ4試合出場と、納得できる出場機会を得られなかった。1年を通じて好調を維持し、最終的に10位でシーズンを終えるチームのなかで力を発揮しきれず、アラベスへレンタル移籍した。
アジアカップ後に合流したアラベスでは第23節から最終第38節までの16試合中、10試合に先発。うち2試合でフル出場を果たし、ベティス時代に比べると出場機会は増えた。
今季を迎えるにあたって、いったんレンタル元のベティスに戻ったが、ここでは居場所を得られないだろうと読んだのだろう。古巣への移籍を決断した。
乾にとってエイバルは、欧州に渡って「初めて楽しくサッカーをした」場所だった。ドイツのボーフムでもフランクフルトでも、満足感は得られなかった。「俺は、ヨーロッパじゃなくてスペインに行きたいの」と言い続け、実際に結果を出したのがエイバルだった。
「スペインにいたら、1年に何回かはバルサ、レアルと試合ができるんですよ。チャンピオンズリーグとかを求める必要ないでしょう」と、独特の表現でスペインにいることのメリットを語ってもいた。
エイバルでの乾は、主として左MFのポジションで、チャンスの創出だけでなく、献身的な守備も見せた。若い選手が多いチームのなかにあって、兄貴的な存在のようだった。外から見ていて、明らかにその態度はドイツ時代とは違っていた。味方のミスに苛立つことはなく、思うようなプレーができなかった自分にふてくされることもない。
「ドイツでは結構、練習で喧嘩とかもあったけど、エイバルはみんな仲がいい。監督もいいし、それにみんな、テクニックがあるんです」
結果的にその充実したエイバルでの3年間が、ロシアW杯での活躍と、日本の決勝トーナメント進出につながったと言っても過言ではない。
ベティスという、エイバルから見れば格上のビッグクラブで活躍することはできなかったかもしれないが、再び迎え入れてくれるクラブがあるというのは、それ自体、高い評価の証である。
期待と信頼に応えるシーズンを目指して、乾は奮起するにちがいない。日本人選手として歴代最多出場を続けるスペインでの戦いは終わらない。