サウサンプトンが苦しい状況に置かれている――。
11月9日に行なわれたプレミアリーグ第12節のエバートン戦で、サウサンプトンは1-2の敗戦を喫した。
エバートン戦後、キルギスに向けて出発した吉田麻也
なにより心配なのは、サウサンプトンの調子が一向に上がってこないこと。第5節のシェフィールド・ユナイテッド戦を最後に、国内リーグの7試合(6敗1分)で勝利がない。この中には歴史的な惨敗となったレスター戦(0-9)も含まれており、サウサンプトンは暗く長いトンネルから抜け出せていない。
そして、日本代表の吉田麻也も、リーグ戦2試合連続のベンチスタートとなった。
「戦術的にチグハグなのは事実なんですけど、それをエクスキューズにせず、自分たちがやらないといけないことをひとつひとつやり、目の前のファイトに勝っていくことが大事だと思う。だから、一概に監督のせいだけにできない。選手たちもそれを理解する。自分たちが置かれている立場と自分たちの質を客観的に見て、判断し、泥臭く戦わないといけないのかなと思います」
気になるのは、選手たちの動きから自信が感じられないことだった。
シュート数は、エバートンの24本に対し、サウサンプトンはわずか4本。今季はエバートンも調子を大きく落としているが、それでもサウサンプトンは彼らに試合の主導権を握られた。
そんな厳しい状況に陥ると、本来頼りになるのは経験豊富なベテラン選手のはずである。しかし、若手重視のラルフ・ハーゼンヒュットル監督の采配はこの日も変わらなかった。守備の柱である31歳の吉田には出番を与えず、勝負強さが持ち味の32歳FWシェーン・ロングにいたってはベンチ外だった。
「先発メンバーに戻って、チームに貢献したい気持ちは強くなっているのでは?」との問いに、吉田は「もちろん」と即答し、「こういう時こそ経験がモノをいうと思う。でも、選ぶのは監督ですから。それは尊重しています。我慢が続きますけど、チャンスをもらった時に結果を出すだけです」と力を込めた。
さて、この週末でプレミアリーグは一旦中断となり、11月の国際Aマッチウィークに入った。吉田も試合翌日の10日に英国を離れ、W杯アジア2次予選が行なわれるキルギスに向けて出発した。
3連勝スタートでグループ首位につける日本と、2位キルギスの一戦。相手は格下になるが、ここで確実に勝ち点を積み上げることがチームの成長につながると語気を強めた。
「この前の試合(タジキスタン戦)もそうですけど、アウェーだと結構相手もがんばる。移動もあるし、そんなに甘くない。気温がこっちとあまり変わらないのでそこは助かりますけど、ここで楽になればしばらくは代表戦もない。しっかり勝ち点を積み重ねることが大事です。
やっぱり、マンチェスター・シティとか見ていても思いますけど、強いチームは勝ちこぼさない。アジアで(日本は)そういうチームになっていかないといけない。移動や時差ボケなど、エクスキューズはたくさんあるけど、それでも積み上げていくことが自分たちの地力をつけていく道だと思う。その先にW杯がある。1試合、1試合、大事に戦います」
今回の代表戦では、冨安健洋(ボローニャ)がモンゴル戦で負ったケガにより招集を受けていない。前節のタジキスタン戦では、植田直通(セルクル・ブルージュ)とCBでコンビを組んで零封。
「いつもどおりやるだけです。メンバーが替わったから、どうこうというのはない。パートナーが誰であれ、(自分は)トップ・オブ・トップのパフォーマンスを出そうと思っている。もちろん、やり方とかクセとかありますけど、知らない選手ではないので、誰が出ても問題ないです」
14日のキルギス戦を終えると、吉田は強化試合のベネズエラ戦(19日)には参加せず、英国にトンボ返りとなる。移動は中央アジア・キルギスへの行き来のみで、従来の日本代表戦より移動の負担はかなり軽減される。
そして、代表ウィーク明けにはアウェーでアーセナルと対戦。さらに、11月30日のワトフォード戦(降格圏18位)、12月4日のノリッジ戦(降格圏20位)、12月8日のニューカッスル戦(残留圏13位)と、大事な試合が続く。
「僕は代表1試合しか行かないので、いい状態で帰ってこられると思う。いい準備をして、練習からアピールしていく。勝ち点をもぎ取っていくしかない。ちょっと変われば、状況はガラッと変わると思う。まだまだ試合はたくさん残っているので、十分巻き返せる」
吉田は日本代表の11月シリーズとサウサンプトンでの連戦で、全身全霊をかけて戦うと誓った。