専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第249回

 このコラムは、インターネットを通じて、パソコンやスマホなどのデバイスで読むことができます。読みたい人は、無料で何度も読めて、面白かったら拡散して、何万人もが目にすることができます。



 一方、書店やコンビニなどに並ぶゴルフ雑誌、いわゆる旧来の紙メディアにも、私は25年も前から連載を持っており、今でも毎週、せっせとコラムを書いております。けど、そのコラムについては、雑誌を購入された方しか読むことができません。

 最近、雑誌には立ち読み防止テープを貼られていることが多く、”タダ読み”も難しい状況です。格安でなら、NTTドコモの『dマガジン』のようなツールで読むことができますが、広く世間に知らしめるという意味では、無料のネット記事にはかないません。

「じゃあ、全部ネットで書けばいいじゃん」という意見もありますが、そういうことではないんですよね。TPOと言いますか、紙媒体には紙媒体のよさがあります。


 読んでくださる方は、数百円のお金を払ってくださる。情報フリーの時代、ありがたいことじゃないですか。

 読者はお金を払う分、その分野のことを詳しく知りたいわけです。だから、こっちも深く掘り下げたことや、ネットでは書けないこと、書きにくいようなことを、思う存分書けるのです。

 そんなわけで今回は、紙媒体とWebメディアにおける、それぞれのメリット、デメリット、さらには各々の特性などを考察してみたいと思います。

 ゴルフにも、ゴルフ総合サイトと申しましょうか、ゴルフ雑誌の出版社や編集部などが立ち上げた”ゴルフポータルサイト”がいくつかあります。

それらは、大きく分けて3つのコンテンツに分かれています。

(1)ニュース&読み物
 従来のゴルフ雑誌がやってきたことの、簡易版みたいな扱いですか。それでも、トーナメントの速報などは、ほぼリアルなもので、紙媒体ではできなかったスピーディーな情報を発信しています。

 ゴルフ週刊誌が毎週火曜日発売になっている理由を知っていますか?

 昔は、日曜日に終わるトーナメントの結果を掲載して、最も早く店舗販売できるのが、火曜日だったからです。今や、トーナメントの結果は、その日のうちにテレビで報道され、翌日にはスポーツ新聞が大きく紙面を割いていて、火曜日発売ではあまり意味がないのですが、かつての名残から、そのまま変わっていないのでしょう。

 まあ、ゴルフ週刊誌の場合、トーナメント情報がメインではありませんしね。
コラム、漫画、レッスン、試打、人生相談など、さまざまなコンテンツでゴルフの面白さを伝えています。そのコンテンツに対して、読者はお金を払っているんですね。

 翻(ひるがえ)って、ゴルフ総合サイトの場合、先述したようにトーナメント情報などの速報性は高まりましたが、無料記事となって、雑誌に掲載されているものに比べて、読み応えがありません。

 ただ、総合サイトのニュース記事などは”客寄せパンダ”みたいなもので、ほかでお金を使ってもらう導入ページとして、大きな役割を果たしています。

 第一、ツアーの速報記事が人気だとしても、ニュース記事を読んでもらうだけでは、総合サイトとしての収益はわずかですから。もちろん、記事脇の広告などによる収益はそれなりにありますが、それよりも、総合サイトしては、ニュース記事でサイトに寄ってくれたお客さんに対して、主に2つの提案をして、お金を使ってもらうことを見込んでいます。



 ひとつは、これです。

(2)物販
 ゴルフクラブやゴルフ関連商品などのネット販売です。この売り上げが、案外デカい。大手のゴルフ総合サイトは、アマゾンと提携して商品発送の利便性が増し、企業価値がグンと上がったとのこと。そんなニュースが、数年前にありました。

 そもそも、ゴルフ総合サイトとしてではなく、単純にゴルフグッズの販売サイトだけを運営している会社もいくつかあります。
それだけで、相当な売り上げがあって、ガッツリ儲かっているようです。

 大手のナショナルブランドを集めてガンガン売るサイトもあれば、高反発クラブや高反発ボールに特化したサイトもあって、ニッチなお客さんにも対応した、いろいろな物販サイトがあります。うまくやれば、無店舗でかなりの収益を上げることができるそうです。もちろん、失敗すれば、在庫の山となって、ものすごく安い値段で処分せざるを得なくなったりしますけど……。

 ゴルフクラブは案外”足が早い”ので、人気のうちに売り抜けることが大切かと。しかも、ドライバーのみがダントツの流通量で、あとはボチボチという有り様ですから、その目利きが非常に難しいところです。

(3)コースの予約
 ゴルフ総合サイトの、もうひとつの稼ぎは、ゴルフ場の予約です。

 今や、古き良きメンバーシップのコースなんて、数えるほどしかありません。それらを除けば、ほかは”なんちゃってメンバーコース”で、予約サイトに頼って集客しているのが現状です。

 予約サイトは、その営業力の高さから、なかなか予約できない名門コースも、特別なコネで予約できるとか、あり得ない値段で何組かの予約を抑えられるとか、あの手、この手で、お客さんを引っ張ってきて、離さないようにしています。

 そうした予約サイトも、今では大手IT企業の予約専門サイトが人気で、ゴルフ総合サイトとガッツリ競合しています。さらに、最近ではゴルフ場自体がネット会員を募り、安い値段で予約できるようにして、顧客獲得競争に拍車がかかっています。つまり、「アパ直なら最安値」的な売り方をしているコースがあるのです。

 また、100以上のコースを抱える大手ゴルフ場グループは、自らの予約サイトで、ポイントをたんまりつけて顧客を獲得していますからね。ゴルフ人口が減っている現在、もはや「ネット予約戦国時代」と言っても、過言ではありません。

 そんなわけで、ゴルフ媒体において、紙とネットの売り上げを比較すると、今やネットのほうが圧倒的に多くなっています。

 じゃあ、紙媒体はヤバいんじゃないか?

 たしかにそうですが、ゴルフというスポーツにおいては、自らプレーするのも、さまざまなニュースや情報などを欲するのも、いまだページをめくる雑誌が好きなオヤジたちが大多数。購買層であるその世代が元気なうちは、まあ大丈夫だろうと。

【木村和久連載】紙媒体とWeb。ゴルフメディアの実情を探って...の画像はこちら >>

紙には紙の、WebにはWebのよさがあると思うんですけどね...

 あと、ゴルフメーカーは、老舗のゴルフ雑誌に広告を出すのが、ひとつのステイタスになっているんですね。メーカーとしても、「うちだけ(広告を)出さないのはまずいんじゃないか」「うちの評判が落ちる」「だから、とりあえず(広告を)出しておけ」といった具合でしょう。

 それに、ゴルフ雑誌は、広告を出してくれたメーカーのインプレッション記事をたくさん作って掲載します。ここは、持ちつ持たれつの関係で、うまく連携しているんですな。

 ゴルフは、見栄の部分がかなりあります。一球700円のボールを、1回打っただけで谷底に落としても、笑って済ませられる胆力が必要です。そういう方は、一冊500円のゴルフ雑誌を購入することに、躊躇しません。

 けど、最近の若者は、ロストボールしか使わず、スマホでコースの予約から、メンバー集め、スコア管理までこなします。ゴルフ愛好者のメイン層が、その世代になった時は、ちょっと怖いですね……。