スーパーエース・西田有志
がむしゃらバレーボールLIFE (12)
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男子バレーボールの新星、西田有志。その波乱万丈なバレー人生を振り返ったこれまでの連載が人気を博したが、今回からは今シーズンの動きを追っていく。
男子バレーの若きエースとして注目を集める西田
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2月29日に行なわれた2019-2020シーズンのV.LEAGUEファイナルで、パナソニックパンサーズとのフルセットの激闘を制し、チーム史上初の優勝を果たしたジェイテクトSTINGS。その試合は、新型コロナウイルスの影響で無観客での開催になった。
ジェイテクトのエースとしてチームをけん引した西田有志は、決勝後の記者会見で「海外の試合では、お客さんがほとんどいないこともよくある。だから別に気にならなかった」と話したが、この連載の取材で「対戦相手の清水邦広選手は『正直やりづらかったですね』と振り返っていましたが」と伝えると、少し考えてから苦笑し、こう述べた。
「確かに、試合直後には少し強がって『気にならなかった』と言いましたが、正直なところ、かなりやりづらかったです。
その1週間前のセミファイナルにも多くの観客が入っていただけに、違和感も大きかったのだろう。
そして、リーグ初優勝の喜びもつかの間、東京五輪の開催延期が決定する。小学校3年生の時に、2008年の北京五輪で清水や福澤達哉などが活躍する姿をテレビで見てから、西田は「オリンピックで活躍すること」を目標にしてプレーを続けてきたが、延期をどう受け止めたのか。
「延期が決まる前、リーグが終盤を迎えたところで日本代表メンバーの発表があって、そこで選んでいただけたので『オリンピック出場のためのスタート地点に立てたな』と安心しました。
西田は「本当にこんなことがあるのか」と、今までにない感情になったというが、すぐに気持ちを切り替えた。
「ショックを受けるということは、それだけバレーボールに真摯に取り組んでいるからなんだと思いました。また、代表の中垣内(祐一)監督も4月の代表合宿で『(この延期を)プラスに考えなきゃいけない』と話されていましたが、来年に向けてパフォーマンスをよくしようと、思考をポジティブに持っていくことができたんです。自分を含めて、代表選手の全員がそういう気持ちでいると思います」
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とはいえ、東京五輪が来年に開催できるかどうかは不透明だ。世界的に新型コロナウイルスの感染は収まっておらず、国際オリンピック委員会(IOC)は10月にも開催可否についての考えを示すと言われている。
西田も状況が厳しいことは理解しているが、自身を成長させていくという気持ちにブレはない。
「一時はバレーボールができなくなりましたが、今はまた、オリンピック出場を目指して練習することができています。目標達成のためには、今まで以上にひとつひとつの練習を、一日一日しっかりとやっていかないといけない。またいつバレーボールができなくなるかわからないですし、それ以外にも思いもよらない壁がいくつも立ちふさがるでしょうから。そういった壁ができた時に、どう破るか。それを繰り返すことによって、もっと成長していけると思っています。
延期によって生まれた1年間で、磨ける部分が増えたと捉えています。
その「到達点」とは、オリンピックの舞台でメダルを獲得すること。西田が常に口にしてきた、「絶対に変えない目標」だ。五輪開催の延期にショックを受けながら、その現実と正面から向き合うことによって、再びモチベーションを高めている。
今季の日本代表の活動は公式戦なしに終わったが、8月2日にライブ配信された紅白戦で、選手たちは生き生きとしたプレーを見せた。
(第13回につづく)