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10月31日、西日本選手権フリー演技の三原舞依

 10月31日、京都アクアアリーナ。西日本選手権フリースケーティング、三原舞依(シスメックス、21歳)は氷の上で瑞々しく輝いていた。
スケートの化身のように。

 冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループの大技を、高い精度で決めた。ダブルアクセル、3回転フリップ、3回転サルコウと少しも淀(よど)みがなかった。スピンは、不要なものを全て削ぎ落としたようだった。鋭く低く回って、その可憐さが目を引き付ける。指先まで神経が行き届き、艶かしく腕が動いた。
ジャッジもレベル4だった。

 そこから、まるで小さな爆発を起こすようにジャンプを跳ぶ。体を小さく畳んで、軸はぶらさず、空中で効率的な円運動を見せる。シングルアクセル+3回転トーループと、3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループの連続ジャンプを危なげなく決め、3回転ループも成功。体力的にきついはずの後半のジャンプも、すべてクリーンに降りた。

 復帰3戦目にもかかわらず、フリーでは坂本花織をもしのぐ130.37点という1位のスコアを叩き出した。
これによって、総合でも2位。今後に向け、また一歩、力強く歩みを進めた。

「まだまだ満足はしていなくて。ショート、フリーと納得するような演技はできていません。悔しさのほうが優っている」

 試合後、三原は実直に語った。

三原舞依はフィギュアスケートの求道者。共感を生む力強い魂

西日本選手権SPを滑る三原

〈スケートと向き合う〉

 彼女はそれを丹念に行なうことで、一つの境地に達しているのだろう。


「筋肉がほとんどない状態で、限りある筋肉を使って(のスケート)になるんですが。(酷使する)一部の筋肉は疲れやすくなっていて。それを取り除けるように、ストレッチしたり、トレーナーさんにケアしてもらっています」

 試合後、三原は現状を語った。難病との闘いを経て、ほぼ1年半ぶりに復帰した。満足できる体調であるはずはない。しかし復帰戦の近畿選手権から、確実に調子を戻しつつある。
例えばショートプログラム(SP)の冒頭ジャンプも、3回転ルッツ+2回転トーループを3回転ルッツ+3回転トーループにし、難易度を高めて成功していた。

「体力的には、(復帰戦の)近畿(選手権)から戻ってきていて。今日は滑り終えた後、自分の足で立てていてよかったです(近畿では演技後にコーチに支えられた)。日々の練習の中でも、後半になると足が重くなることがまだあって。100%以上(のスケートを)できるように、栄養をつけて、体を動かし、アスリートの体に近づけたいです。スピードが足りなかったり、力が弱いと、演技が小さく見えるので」

 三原は自らに厳しく言うが、リンクの上を舞った華奢な体は、力強い魂を宿して躍動しているようだった。
どこで力を出せばいいのか、いつ氷に身を任せればいいのか、感覚的に知り抜いているのだろう。出色の安定感だった。

「最近はスケートのいろいろな動画を見ていて、他の選手や過去の自分のだったり。プログラムの中でどんな緊張を感じているか、というのは、それぞれの状況で違って、一定ではないと思っていて。そこで、どうしたら(いつも)跳べる感覚をつかめるのか、それは考えています。(今は)力が弱いので、それをカバーできるように、軽く跳べる方法だったり。

ただ、(国際大会で)出来栄え点を取るためには、流れのあるジャンプも意識して」

 更なる改善を、という言葉が次々に出てきた。求道的な性格だろう。

 もっとも、その行動感覚は愛らしい。例えば、演技前にリンクサイドでコーチに手を握られるのが楽しみだという。冷たくなった手を、温かい手が包んでくれる。その瞬間、毎回、全身で幸せを感じ、柔らかい笑みを漏らす。

 なぜ、三原が人に愛されるのか。

「頑張り屋さん」

 その様子が、共感を生むのかもしれない。打算のない純真さが、自然と好かれる。演技が終わって、小さく拳を作り、腕を胸まで上げ、控え目に喜びを弾ませながら、コーチに駆け寄って抱きつく。その姿を見ていると、励まされる気持ちになるのだ。

「(外出)自粛期間を経て、予定表に練習がある日が戻ってきたのがうれしくて。毎日滑ることができる。スケートが私の中心に戻ってきたんだなって!」

 三原はそう心境を語っているが、言葉は弾むようで、中身に嘘がない。真摯にスケートと対峙しているのだ。

「2試合ブロック(近畿選手権、オール兵庫)を戦って、今回の西日本ですけど、シーズンの初めは、こんな点数や順位は考えていなくて、びっくりです」

 三原は言う。

「目標は細かく決めて、達成できる練習はしてきたつもりですが。これからも細かく目標を決め、どんどん練習を積んでいきたいです。自分のマックスを上げられるように、すべての要素を最大限に。早くトップレベルに戻したい」

 11月、三原はグランプリシリーズ、NHK杯を戦う。そして12月には、全日本も待つ。もっとも、彼女は日々、スケートと向き合うのだろう。