秋のGIシリーズが中休みとなる今週、関東では伝統のハンデ重賞、GIIアルゼンチン共和国杯(11月8日/東京・芝2500m)が行なわれる。

 過去10年の成績を見てみると、1番人気が3勝、2着2回、3着1回、2番人気が4勝、2着1回、3番人気が2勝、2着1回、3着5回と、上位人気が安定して結果を残しており、ハンデ戦のわりには比較的順当な決着に終わっていることが多い。

そのため、3連単では4万円を超える好配当はしばしば生まれているが、10万円を超えるような高額配当は一度も出ていない。

 そういう意味では、馬券的には人気馬を絡めた"中穴狙い"が妥当と言えるだろう。では、どういった馬が狙い目となるのか。日刊スポーツの松田直樹記者はこう語る。

「アルゼンチン共和国杯は、ハンデ戦のわりには軽量馬の激走が意外と少ないんです。ですから、ハンデに惑わされることなく、現在の調子や将来性を重視すべきでしょう。

トップハンデの馬が苦戦する傾向は確かにありますが、2010年のトーセンジョーダン、2015年のゴールドアクター、2016年のシュヴァルグラン、2017年のスワーヴリチャードなど、のちにGI馬となっていく馬が次々に勝利を飾っていますからね。今年も調子のいい実力馬を狙うのが、馬券的中、さらには好配当への近道だと思います」

アルゼンチン共和国杯は穴党記者が状態を吟味して選んだ4頭に妙...の画像はこちら >>

アルゼンチン共和国杯での巻き返しが期待されるオセアグレイト

 そこで、松田記者が穴馬候補として推すのは、今回と同条件で行なわれた今春のGII目黒記念(5月31日/東京・芝2500m)で2番人気(6着)に推されたオセアグレイト(牡4歳)だ。

「重賞での好走実績は、年明けのGIIIダイヤモンドS(3着。2月22日/東京・芝3400m)のみ。その後も結果を出せていませんが、それぞれの敗因ははっきりしています。3走前のオープン特別・メトロポリタンS(5月9日/東京・芝2400m)は、直線で進路取りを誤って5着。

2走前の目黒記念は外枠発走で、早め早めに動く競馬となって、最後は脚が上がる展開に。そして、前走のGIII七夕賞(7月12日/福島・芝2000m)は、中2週で目黒記念を走って、そこから体調が上がり切る前に使って、12着と凡走してしまいました。

 管理する菊川正達調教師によれば、好走したダイヤモンドSでも『気負っていた』そうです。つまり、オープン入りして以降、満足な競馬が一度もできていないのです。しかし今回は、しっかりリフレッシュして4カ月ぶりの実戦。昇級後、最もいい状態でレースに臨めそうです。

しかも、ハンデが55㎏と据え置き。これなら勝負になると思いました。

 菊川調教師も、『じっくり休ませて"ここだ"というレースに合わせて、逆算して調整してきた。体も出来ていて、万全の態勢でいける。舞台も一番合っている条件だと思う』と強気。そもそも東京の芝2400~2500mは、6戦2勝、2着1回、3着1回、着外2回と好相性。

ここで、重賞初制覇を果たしてもおかしくないでしょう」

 松田記者はもう1頭、トーセンカンビーナ(牡4歳)の名前を挙げた。

「12着に沈んだ前走のオクトーバーS(10月18日/東京・芝2000m)は、久々の2000m戦で、出遅れたうえに道悪の影響もあって、追走に手間取りました。度外視していい一戦だと思います。

 春はGI天皇賞・春(5月3日/京都・芝3200m)で5着、GI宝塚記念(6月28日/阪神・芝2200m)で8着と、GIの壁にぶつかりましたが、その前のGII阪神大賞典(3月22日/阪神・芝3000m)では2着と好走。同レースを制し、今回のレースで1番人気が濃厚なユーキャンスマイル(牡5歳)とはコンマ3秒差でした。その際、ユーキャンスマイルとはマイナス1kgの斤量差でしたが、今回はマイナス3kg差に広がることを考えると、トーセンカンビーナへの妙味が増します」

 一方、デイリースポーツの大西修平記者は、穴候補としてラストドラフト(牡4歳)に注目しているという。

「前走のオープン特別・ケフェウスS(9月19日/中京・芝2000m)は8着に敗れましたが、久々で若干行きたがっていました。加えて、57㎏のトップハンデを背負っていたことも響いたと思います。

 そこから、この中間はいい意味でガズが抜けており、攻め気配は上向いています。さらに、秋から冬にかけて成績がよくなる同馬。寒くなったほうがパフォーマンスは間違いなく上がるので、なおさら楽しみです。

 父は、GIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(イギリス・芝2390m)をはじめ、GIサンクルー大賞(フランス・芝2400m)、GIバーデン大賞(ドイツ・芝2400m)などを勝って、ヨーロッパの中距離GIで活躍したノヴェリスト。

初の2500m戦も、折り合いさえつけば、十分に対応できるでしょう。

 ハンデも、前走より1㎏軽くなるのはプラス。今回鞍上を務める戸崎圭太騎手とも手が合いそうです。道中、うまく壁を作って、リズムよく直線に向けるようなら、一変の可能性が大いにありますよ」

 大西記者ももう1頭、推奨馬を挙げる。

バレリオ(牡5歳)です。道悪だった2走前の七夕賞は10着と大敗を喫しましたが、前走のオープン特別・丹頂S(9月6日/札幌・芝2600m)では2着と、きっちり巻き返しました。良馬場でこそ力を発揮できるタイプで、器用さが問われる小回りコースよりも、のびのびと走れる府中の広いコースに変わるのも歓迎のはずです。

 5歳秋を迎えて、ステイゴールド産駒らしい成長力を見せており、ここに来て、一戦ごとに力をつけている印象があります。前走後も放牧を挟んでしっかりとリフレッシュされ、帰厩後も併せ馬を中心に入念に乗り込まれています。良馬場前提になりますが、ハンデも55㎏なら、能力発揮に支障はなく、持ち味を知る津村明秀騎手のエスコートによって、このメンバー相手でも好勝負を演じてくれるのではないでしょうか」

 はたして、今後のGI戦で輝きを放つ馬が今年も現れるのか。GIの狭間とはいえ、見逃せない一戦である。