スポルティーバ厳選! Jリーグ年間ベストイレブン

スポルティーバ編集部が発表している、独自選考のJリーグMVP。ここでは今季Jリーグの年間ベストイレブンを独自選定。

今季取材をしてきた5人の識者に、それぞれ印象的な11人を選んでもらった。

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識者5人全員がベストイレブンに入れた、三笘薫

三笘は敢えてベストイレブンに抜擢したい

杉山茂樹(スポーツライター)

Jリーグ年間ベストイレブンを独自選定。川崎F勢は何人入る?

前線に印象的な活躍を残した4人を選んだ

 GK。セレッソ大阪のキム・ジンヒョン、名古屋グランパスのランゲラックも捨てがたい活躍を見せたが、優勝チームのGKに敬意を表して川崎フロンターレのチョン・ソンリョンに。

 サイドバック(SB)は西大伍(右/ヴィッセル神戸)と小川諒也(左/FC東京)。左右とも優勝チーム川崎の山根視来、登里亨平との争いになったが、右は西の高い技術に対して、左は小川の総合力に、一票を投じたい。

 センターバック(CB)はマテイ・ヨニッチ(C大阪)は順当として、もうひとりは川崎の谷口彰悟、ジェジエウを加えるべきか悩んだが、ここは鹿島アントラーズの犬飼智也を推すことにしたい。

代表歴はないが、年々安定感、活躍度、存在感を増している。3シーズン前、清水エスパルスから鹿島に移籍して以来、どんどんよくなった印象だ。

 守備的MFは守田英正(川崎)と三竿健斗(鹿島)。守田は繋ぎ役として活躍。間の取り方に上品さが目立った。一方、三竿が光ったのはボール奪取。

年々スケール感を増している。

 前線は4人。真ん中は得点王のオルンガ(柏レイソル)と、同2位のエヴェラウド(鹿島)。左ウイングにはマテウス(名古屋)を選びたい。

 右ウイングは、とくにシーズン後半、技巧的なプレーで存在感を見せつけたマルティネス(浦和レッズ)を推したいが、となると外国人が6人になってしまうので、ここは日本人でいきたい。

 右というポジションにこだわると坂元達裕を挙げたくなる。

C大阪の右ウイング(サイドハーフ)として年間を通して活躍。左利きの特性を活かした独特のドリブルとステップワークで、見せ場をつくった。高いボール保持力、アシスト能力も発揮したが、得点が2と物足りないことから、他の候補を探してみることにした。

 左が主戦場だが、12ゴールをマークした古橋亨梧(神戸)、13ゴールの三笘薫(川崎)が浮上する。出場時間、出場試合数で大きく上回るのは古橋だが、減点材料はチームの順位が低い(14位)こと。世の中に与えたインパクトという点で三笘に劣る。

 三笘で印象に残るのは、11月18日の横浜FM戦の終了間際に見せた「100m2人抜きドリブル&アシスト」。川崎でレギュラーとして活躍したわけではないが、敢えてベストイレブンに抜擢したい。

イニエスタは次元が違った

小宮良之(スポーツライター)

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DFラインはそれぞれチームの砦となったCB3名に

 ランゲラック(名古屋)は、「1-0の勝利の方程式」を導き出しただけでなく、厳しいゲームを完封し、勝ち点1を確保した。キム・ジンヒョンと迷ったが、安定感は際立っていた。

 ジェジエウは、川崎にプレー強度を与えた。ほかにはない高さ、激しさがあり、それが守備では跳ね返す力になったし、セットプレーでの脅威ともなった。

 マテイ・ヨニッチ(C大阪)は、GKの前の砦となっている。ハイボール、クロスを打ち返し、しつこいマーキングで消耗戦にも負けない。気力充実のプレーは、パートナーの瀬古歩夢の成長も促した。

 森重真人(FC東京)はプレーを難しくさせなくなった。若い頃は有り余る才能を持て余し、持ちすぎてプレーを遅くしたり、強さを顕示して裏を取られたり、凡ミスを重ねる傾向があったが、円熟に入っている。コンビを組んだ渡辺剛にも好影響。

 田中碧(川崎)は、プレーの道筋を与えていた。ボールをどのように動かし、どのように止め、どのように封鎖するのか。それを誰よりも心得ており、川崎を勝利に導いていた。

 イニエスタ(神戸)は次元が違った。出場時間がやや少ない点など、まったく関係ない。彼はサッカーそのものを見せてくれた。彼がボールをはじけば、それが正解だった。

 三笘薫(川崎)はドリブルの柔らかさやリズムが注目されたが、特筆すべきはすべてのプレーがゴールに直結していた点だろう。ドリブラーはゴールに近づくと、極端に精度が落ちる場合があるが、彼はアシストで完璧なお膳立てができたし、シュートも撃ち抜く度胸とバランスを備えていた。

 家長昭博は、川崎の軸だった。MVPに選出されたシーズンの無双さはなかったが、チームの調子が落ちそうになると、落ち着き払ったキープやパスでリズムを取り戻していた。

 オルンガ(柏)は、一騎当千だった。マーカーをぶっちぎってしまうパワー、スピードは、かつてのパトリック・エムボマをほうふつとさせた。Jリーグに彩りを与えたと言えるだろう。

 エヴェラウド(鹿島)は、センターフォワードとしての美しさを漂わせた。ボールを叩く当て勘は卓抜だった。来季は上田綺世とのコンビで、Jリーグを席巻するか。

川崎一色のシーズンだった

原山裕平(サッカーライター)

Jリーグ年間ベストイレブンを独自選定。川崎F勢は何人入る?

前線に江坂とオルンガのコンビを選んだ

 11人中7人を川崎から選んでしまった。公式ベストイレブンも川崎勢が独占するだろう。その意味では独自選考とは言い難いが、ほかに選択肢が見当たらず......。まさに川崎一色のシーズンだった。

 システムも川崎と同じ4-3-3に当てはめた。GKこそ最少失点の名古屋の守護神を選んだが、最終ラインはそのまま川崎の4人。谷口彰悟の安定感は攻撃的なチームにおいて不可欠で、ジェジエウの超人的な対応は、幾度となくチームを救った。湘南ベルマーレから加わった山根視来は、家長昭博のサポートを受け、その攻撃能力をいかんなく発揮。優勝決定試合で先制点を演出したように、勝負どころで力を発揮した登里享平のいぶし銀の活躍も光った。

 守田英正はアンカーとして、ひと回り成長した印象だ。持ち前の守備力に加え、的確なパスワークで攻守のつなぎ役を担った。

 両ウイングはともにMVP級の活躍を見せたふたり。家長昭博のオールマイティな能力は、川崎の新たなスタイルを確立させるには欠かせないもので、三笘薫のドリブルは、お金を払ってでも見たいくらいの代物だった。Jリーグの新人記録に並んだ得点力も評価に値する。

 インサイドハーフは、大島僚太、田中碧、脇坂泰斗と川崎勢も十分な働きを示したが、ここはC大阪の上位進出に貢献した清武弘嗣と、オルンガのベストパートナーだった江坂任を推したい。共にチャンスメイクのみならず、自らゴールを奪う能力も備えた。

 とりわけ清武は、スペインから復帰後、ケガに苦しむシーズンを繰り返していたが、今季は離脱することなく、キャリアハイとなる8ゴールをマーク。その攻撃性能は、家長にも引けを取らないものだった。

 そしてセンターフォワードは、異次元のパフォーマンスをつづけたケニア出身のストライカー以外に見当たらない。高さ、強さ、速さと圧巻のフィジカルを見せつけ、強烈な左足を駆使してゴールを量産。"リーグ史に残る助っ人"と言えるほどのインパクトだった。

◆独自選考のJリーグ年間MVPと新人賞発表。川崎勢を抑えて選ばれたのは?>>

井手口陽介は完全復活を印象づけた

中山 淳(サッカージャーナリスト)

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川崎のメンバーを中心に、ポジション別に活躍の上回った選手を選んだ

 今季は川崎が圧倒的な強さで独走優勝を果たしたので、当然ながら年間ベストイレブンも川崎の選手が多数を占めた。川崎のベストイレブンを、そのまま年間ベストイレブンにしてもいいくらい、ずば抜けていた。

 とはいえ、ポジション別に見てみると、他のチームにも川崎の選手を上回る活躍を見せた選手がいる。その筆頭が、ダントツのゴール数で得点王を獲得したオルンガ(柏)だろう。個人としては今季のJリーグを象徴する選手なので、1トップにはオルンガを選出した。

 2列目には、右サイドに家長昭博、左サイドに三笘薫(以上川崎)、そしてトップ下にエヴェラウド(鹿島)という顔ぶれ。家長は、9ゴール4アシストの数字のほかにも見えないチャンスメイクぶりが際立っていた。ポゼッション、カウンターと、多彩な攻撃を見せる川崎のサッカーにおいて、絶対的に不可欠な戦力と言える。

 ルーキーとして歴代最多得点タイ記録をマークした三笘は、今季のJリーグで最もブレイクした選手。とくに最大の武器であるドリブル突破は、パスで打開できない局面で大きな効果を発揮した。エヴェラウドは2トップの一角だけでなく、サイドMFとしても質の高いプレーを見せたため、敢えてトップ下に選出。とてもバランスのとれた選手で、その存在を抜きにして今季の鹿島は語れないほどの活躍ぶりだった。

 ボランチには、G大阪の躍進に大きく貢献した井手口陽介を選出。今季はボランチで持ち前のボール奪取とパス供給を披露したうえ、攻撃的なポジションもこなすなど完全復活を印象づけた。もうひとりは川崎の田中碧。守田英正も捨てがたい活躍を見せたが、攻撃面の評価を加えると田中になる。フィジカル面も向上し、今後の成長も期待できそうだ。

 DF4人は両サイドに川崎の山根視来と登里享平、CBに同じく川崎のジェジエウと堅守G大阪を支えたキム・ヨングォンを配置。川崎の谷口彰悟もベストイレブンに値するが、パフォーマンス的にはキム・ヨングォンが上回っていた。そしてGKには、リーグ最小失点の名古屋のランゲラックを抑えて、やはり優勝チームの絶対的守護神チョン・ソンリョンを選出した。

坂元達裕は清武を凌ぐ活躍

浅田真樹(スポーツライター)

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川崎以外で加えるべき選手を考えてから選ばれたメンバー

 極論すれば、今季J1のベストイレブンを川崎勢が独占したとして、大きな問題はないはずだ。それほど(結果だけでなく、内容的に見ても)川崎の強さばかりが、際立ったシーズンだった。

 そこで、最初に「川崎勢以外で加えるべき選手は誰か」を考えてみたい。

 まずはFWから、オルンガ(柏)。驚異的なペースでのゴール量産、とりわけシーズン序盤の活躍を見れば、今季J1の顔にふさわしい選手のひとりであることは間違いない。

 MFからは、坂元達裕。攻撃力に欠けるC大阪にあって、切れ味鋭い突破力を披露。清武弘嗣との二枚看板どころか、清武を凌ぐ活躍でチームを引っ張っていた。

 最後にDFから、丸山祐市。名古屋の堅守を支えただけでなく、攻撃の起点としてフィード能力も発揮。過密日程のなか、全試合フル出場という鉄人ぶりもからも、ベストイレブンに加えたい。

 そのほかにも印象に残った選手はいるものの、川崎勢を差し置いてでも選ぶに値する、とまでは言えず、残るは川崎から選ぶこととした。

 とはいえ、川崎から"わずか"8人を選ぶ作業は、それはそれで難しい。MVP選びでも名前を挙げた4選手、谷口彰悟、三笘薫、家長昭博、チョン・ソンリョンは確定として、残るは4人だ。

 外せないのは、両SBの山根視来と登里享平。今季川崎が新システム(4−3−3)を機能させるにあたり、不可欠だったのがこのふたりである。彼らが両ウイングと連携し、攻撃に幅と厚みを加えた結果が、記録的独走優勝だったと言ってもいい。それほどに彼らの貢献度は高かった。

 つづいて選んだのは、アンカーの守田英正。攻撃の組み立て役としても、セカンドボールの回収役としても出色の働きで、シーズン途中、彼が主力に定着して以降、川崎の戦いぶりは高いレベルで安定した。

 そして、最後のひとりだが、田中碧、大島僚太、脇坂泰斗で迷った末、出場時間数、ゴール数で上回った田中を選んだ。大島や脇坂に比べると技術的な粗さはあるが、その分、動きにダイナミックさがあり、技巧派が多い川崎にあって貴重なアクセントとなっていた。