宮崎県の南郷キャンプで順調な調整を行なった、西武ライオンズ森友哉。オープン戦を前にインタビューに応じた森は、「個人としても、チームとしてもダメだった」という、昨シーズンからの捲土重来(けんどちょうらい)の思いを語った。



 2019年シーズンに初の首位打者とパ・リーグMVPに輝き、さらなる飛躍を目指して臨んだ昨シーズンだったが、開幕からまさかの大不振。104試合の出場で、打率はプロ入り後ワーストとなる.251にまで落ち込んだ。リーグ3連覇、日本一を目指したチームも3位でシーズンを終え、日程短縮のため上位2チームで行なわれることになったクライマックスシリーズ進出を逃した。

 昨季の不調について、森は次のように振り返った。

「単純に、ヒットを欲しがっていたところはありました。普段であれば強くスイングしにいくところを、小さなスイングで当てにいってしまい、その修正ができないままシーズンが終わってしまった」

 さらに昨シーズンは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初の予定よりも開幕がおよそ3カ月遅れになるなど、度重なる日程変更が「狂い」を生じさせた。


「開幕の延期は僕にとって初めてのことでした。(中断期間中は)技術よりも体を鍛える練習を中心に行なっていましたが、なかなか開幕日が決まらず、何をすればいいのかわからない部分もあった。開幕の予定日が決まったあとも思うような修正ができず、いざ開幕してからはヒット狙おうとしてしまったことで、さらに(自身の打撃が)おかしくなってしまいました」

 社会状況の変化も、その「狂い」に拍車をかけた。

「これまでのシーズンは、遠征中に食事に行ったりしていましたが、昨シーズンは難しい状況だった。『気持ちの切り替え』が、うまくできていなかった影響もあったと思います」。

 ソーシャルディスタンスが求められ、思うように結果が出ない自分と向き合う時間が増えたことは、知らず知らずのうちに森を追いつめていった。

 それが表に出たのが、8月27日にメットライフドームで行なわれた日本ハム戦だった。9回裏に、山川穂高がサヨナラヒットを放つ。チームメイトが喜ぶ中で、ベンチで泣き崩れる森の姿があった。

「僕自身がなかなか打てなかったこともありますが、チームも勝てていない状況が続いていたので、それが何よりも苦しかった」

 この試合では、森が途中出場したあとに投手陣が撃ち込まれ、一時は逆転を許した。その不甲斐なさゆえに森が涙を流したシーンは、もがき苦しむパ・リーグ王者を象徴する場面として、多くのメディアで取り上げられた。

「思うように気持ちが切り替えられない」シーズンが佳境に差し掛かった10月6日のホーム戦では、登場曲を『Baby Shark Dance』(Pinkfong)に変更した。

この曲は、首位打者を獲得した2年前のシーズンに使用していた曲で、変更の理由を尋ねると「単純に気分転換です。特に深い理由はない」と振り返った。

 森はその試合で、外野スタンドのファンによる「シャークダンス」に導かれるように、犠牲フライとタイムリースリーベースを放つなど3打点。首位のソフトバンクから貴重な勝利をもぎ取った。

 試合終了時点で首位ソフトバンクと9ゲーム差の4位だったが、森はヒーローインタビューで「まだ、(優勝を)諦めていない。残り試合は、全部勝つつもりで試合をしたい」とコメント。
その言葉に導かれるように、チームは2位のロッテを猛追する。11月には、一時2位に上がり底力を見せつけたが、再逆転を許して3位でシーズンが終了した。

 森は自身のSNSに、ベンチで涙に暮れた写真と、「今年は悔しい1年になりました。来年倍返しできるよーにこれから頑張ります!!」(原文ママ)というメッセージを添え、シーズン終了を報告した。

 雪辱を期す2021年シーズンに向け、キャンプでは「これまでよりも角度をつけ、ボールを叩かずに"乗せる"」(2月13日の記者会見でのコメント)ことをイメージして打撃フォームの改造に着手。「ガムシャラに振るのではなく、バランスのよさを大切にしながら、しっかり強く振ることを心がけている。

これから振り込みをする中で、体に染み込ませていきたい」と、手応えを口にする。

その打撃に加えて、キャッチャーとしては「キャッチング、ブロック、送球。すべてにおいてまだまだミスが多い。ひとつでも多くの課題を克服しながらレベルアップを図りたい」と、守備力の強化にも強い決意を語った。

2月8日には「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督が南郷キャンプの視察に訪れた。森に今夏に開催される予定の東京五輪について問うと、「今は西武として今シーズンをどう戦うか、を第一に考えるべきだと思っています」としながらも、「成績を残した結果、五輪に呼んでもらえたら嬉しい」と、代表への意欲ものぞかせる。


「数字を意識しはじめると狂ってしまうので、あまり気にしないようにしています。結果として、シーズンが終わった時の成績がキャリアハイになっているようにしたい。そして、チームとしては日本一になりたいです」

そう抱負を語った森の今シーズンは、改修工事を終えたばかりの本拠地メットライフドーム(オリックス・バファローズ戦)で、3月26日に幕を開ける。

「バックネットの設備も変わり、砂かぶり席も新しくできると聞いています。1日でも早く、満員の状態で試合ができる日が来るといいですね」

生まれ変わった本拠地で歓喜の瞬間を迎えるために、森が"リベンジ"のシーズンに臨む。