プロ野球が開幕してまもなく1カ月になる。今年はコロナ禍の影響で新外国人の来日が遅れたチームもあり、早くも新戦力の台頭が目立っている。
オリックスのローテーション投手として活躍する2年目の宮城大弥
宮城大弥(オリックス/2年目・19歳/左投左打/2019年ドラフト1位)
4試合/2勝0敗/防御率1.26(4月19日現在、以下同)
彼が「山本昌さんのようになりたい」と言ってくれていると聞いて、非常にうれしいです(笑)。宮城くんのいいところは、何よりも腕の振りにあります。ストレートも変化球も、しっかりと腕を振って投げられる。
スライダー、カーブ、チェンジアップと変化球をとても上手に扱えますし、コントロールもいい。あとはスライダーのキレがいいだけに、扱い方には注意してもらいたいですね。スライダーが得意な投手のなかには、無意識のうちに手首が寝るようになってストレートの球威が落ちてしまうケースがあります。
早川隆久(楽天/1年目・22歳/左投左打/2020年ドラフト1位)
4試合/2勝2敗/防御率2.10
早稲田大時代の投球は、ドラフト候補のなかでも頭ひとつ抜けていました。昨秋に実際に対談させてもらって、思考力や人間性にもうならされました。ここまで技術を語れる大学生は今までいませんでした。ボールの走り、角度、試合のまとめ方とどれをとっても間違いなく一級品です。
プロではオープン戦で打ち込まれた試合があり、開幕後も少し壁に当たっていますが、彼なら乗り越えられるはず。
鈴木昭汰(ロッテ/1年目・22歳/左投左打/2020年ドラフト1位)
4試合/0勝1敗/防御率2.35
個人的に常総学院高時代から高く買ってきた左腕です。法政大を経由してドラフト1位でプロ入りし、開幕から活躍している姿を見て自分の目に狂いはなかったと安心しました。
しかも、プロに入って何かつかんだものがあるのでしょう。大学時代より明らかにボールの走りがよくなっています。レベルがワンランク上がり、今や早川くんと遜色ない投手になっています。宮城くん、早川くんと新人王を争うだけの力は十分にある。
伊藤大海(日本ハム/1年目・23歳/右投左打/2020年ドラフト1位)
3試合/0勝2敗/防御率2.37
惚れ惚れするストレートを投げるので、ぜひ多くの野球ファンに見ていただきたい投手です。苫小牧駒澤大時代から見てきましたが、プロに入ってさらにレベルが上がった印象を受けます。腕の振りが鋭く、はまった時のストレートの走りがすばらしい。
スライダー、カットボール、カーブ、スプリットと、変化量の大きな球種も小さな球種も高い次元で扱える点にも非凡さを感じますし、大学時代に自分をしっかりと高めてきたことがうかがえます。プロの舞台でさらに成長できるはずで、彼も新人王を争う力は十分にあります。
本前郁也(ロッテ/2年目・23歳/左投左打/2019年育成ドラフト1位)
2試合/1勝1敗/防御率8.10
とても面白い左腕です。2019年に育成ドラフト1位で入団し、この春に支配下登録されてプロ初勝利を挙げました。迫力のあるストレートや驚くような変化球があるわけではありませんが、非常にボールにキレがあります。ゆったりとしたフォームには、欠点らしい欠点がありません。
左腕が左耳の近くを通って出てきて、縦の変化球が曲がりやすい腕の振りができています。総合的にまとまっていますし、これから楽しみな存在です。エリート投手と競い合うような、骨のある投手になってくれるといいですね。
田浦文丸(ソフトバンク/4年目・21歳/左投左打/2017年ドラフト5位)
5試合/1勝0敗/防御率7.11
体は大きくないものの(168センチ)、甲子園で活躍した秀岳館高時代からリリーフタイプだろうと見ていました。今季は中継ぎで活躍していますが、ストレートの球威を見てもプロでの3年間の成長を感じます。
彼の持ち味はなんと言ってもチェンジアップ。ストレートと腕の振りがまったく一緒で、いい抜け方をします。低めに決まれば、短いイニングで攻略するのは難しいでしょう。やはり明確な決め球を持っている投手は強いなと感じます。これからも強く腕を振って、イキのいい投球を見せてもらいたいですね。
栗林良吏(広島/1年目・24歳/右投右打/2020年ドラフト1位)
9試合/0勝0敗6セーブ/防御率0.00
ルーキーでいきなり抑えに抜擢され、結果を残しているのですからカープはいい投手を1位指名しましたね。栗林くんのことは名城大時代から見てきましたが、トヨタ自動車で一皮むけたと感じました。投球フォームは少しアウトステップするのが特徴です。とはいえ、体の力が逃げるわけではなく強いボールが投げられているので問題ありません。
チームの先輩である森下暢仁くんのように高い位置から右腕が出てきて、縦の変化球をしっかりと使えるのもポイントです。社会人でのエース経験もあるからか、マウンド度胸も光ります。抑えの適性を見抜いた佐々岡真司監督はさすがですね。今は怖いもの知らずで投げていますが、打たれて怖さを知った時にどんな投球ができるか。そこで真価が問われるはずです。
森浦大輔(広島/1年目・22歳/左投左打/2020年ドラフト2位)
7試合/0勝1敗5ホールド/防御率1.50
私の中日時代の後輩である岩瀬仁紀に(投げ方が)似ていると評判になっているそうですね。アマチュア時代は知らない投手でしたが、こんなイキのいいサウスポーがいたのだなと感心しました。静かなモーションで体重移動をしますが、腕はしっかりと振れている。ストライクゾーンに向かって体を入れられるフォームなので、コントロールもよさそうです。
あえて気になるところを挙げるなら、左腕がトップの位置に上がり切る前に投げてしまうシーンが見られること。時折ボールが抜ける原因はそこにあるはずです。ボールをリリースする寸前に、もう一瞬でも間(ま)があるとさらによくなるでしょう。
大道温貴(広島/1年目・22歳/右投右打/2020年ドラフト3位)
7試合/2勝0敗2ホールド/防御率0.00
八戸学院大時代から投げっぷりのよさを評価してきた右腕ですが、プロでも長所をしっかりと発揮していると感じます。少し力任せなところもあるものの、真上から強く叩ける腕の振りは見ていて気持ちがいい。スピードガンの表示以上にストレートが走っているように見えます。
軸足(右足)が早めに折れてボールが抜けやすいフォームは少し気になりますが、本人にしかわからない投げやすい感覚があるのでしょう。信頼できる変化球を磨き、ボールが全体的に低めに集まるようになってくれば相当に恐れられる投手になるはずです。
伊藤将司(阪神/1年目・24歳/左投左打/2020年ドラフト2位)
2試合/1勝0敗/防御率2.25
春先から伊藤くんの評判がよく、楽しみにしていました。外国人選手がコロナ禍の影響で来日が遅れ、高橋遥人くんが故障離脱した背景もありましたが、チャンスを見事にものにしましたね。
グラブ側の右腕を高々と掲げ、左腕の見づらいフォームで小さな変化球がキレる点がすばらしいと感じます。狭い幅に体を通して、ストライクゾーンへと真っすぐに踏み出せているので、コントロールに苦労しないはずです。今年の阪神は投打が噛み合っていますし、勢いに乗ったら2ケタ勝利も見えてきます。
奥川恭伸(ヤクルト/2年目・20歳/右投右打/2019年ドラフト1位)
2試合/1勝1敗/防御率7.20
星稜高校時代から取材させてもらい、個人的に思い入れがある選手です。現時点では同期のオリックス・宮城くんに水をあけられた感はあるものの、いずれは佐々木朗希くん(ロッテ)と並んで世代トップを走ってほしい逸材です。今春のキャンプからすばらしいボールを投げていましたし、高卒2年目でプロ初勝利を挙げたのですから、上々のスタートを切ったと言えるでしょう。
今はまだ、全体的にボールが高めにいく投げ方になっています。体の向きが高めに強いボールが行くような形になっているものの、低めには球威のあるボールが行かなくなっているのです。これがボール一つ分でも下がってくれば、すぐに勝てる投手になるはずです。もともと試合をまとめる能力は持っている投手ですから。
近藤弘樹(ヤクルト/4年目・25歳/右投右打/2017年楽天ドラフト1位)
10試合/0勝0敗4ホールド/防御率0.00
岡山商科大時代から角度があり、縦変化のよく曲がるフォームを評価していました。大卒とはいえ荒削りな素材型だったので、楽天が昨オフに戦力外通告をした時には見切りが早いかもしれないと感じました。ヤクルトとすぐに育成契約を結んだ背景には、同じく楽天からヤクルトに移籍した伊藤智仁コーチの存在も大きかったのでしょう。
今春のキャンプで投げ込みする姿を見ましたが、ストレートのスピード、球威はチーム内でも上位クラスだと感じました。すぐに支配下登録を勝ち取り、開幕から中継ぎとして結果を出しているのもうなずけます。これから体のラインが真っすぐホームベースに向かっていくようになれば、課題のコントロールも改善されていくはずです。