5月9日、東京競馬場でGⅠNHKマイルC(芝1600m)が行なわれる。

 このレースは近年、波乱の結果に終わることが多く、昨年は9番人気(単勝2960円)のラウダシオンが勝利し、2019年は14番人気のケイデンスコールが2着。

2018年は6番人気のケイアイノーテックが勝利して9番人気のレッドヴェイロンが3着。2017年は13番人気のリエノテソーロが2着。3連複は5年連続で万馬券、3連単は4年連続で10万馬券になっている。

NHKマイルCはキズナ産駒3頭に注目。血統的ジンクスに当ては...の画像はこちら >>

前走のGⅡニュージーランドTを勝利したバスラットレオン

 この「東京/芝1600m」という条件では、ほかにもGⅠのヴィクトリアマイル安田記念など多くのレースが行なわれている。それらのレースを含めた過去のデータを基に展望を進めていこう。

 約15年を遡って「東京/芝1600m」重賞の種牡馬別成績を見ると、もっとも多い勝利数を挙げているのがディープインパクトで、22勝(203戦)、勝率10.8%。
2位のクロフネ、ハーツクライ、タニノギムレットの7勝に大きな差をつけている。

 意外にも不振なのがキングカメハメハで、3勝(82戦)、勝率3.7%。次代のリーディングサイアーを狙うロードカナロア(父キングカメハメハ)も、まだ出走数が少ないとはいえ1勝(21戦)、勝率4.8%と芳しくない成績だ。今年のキングカメハメハ産駒はホウオウアマゾン、ロードカナロア産駒はタイムトゥヘヴン、リッケンバッカー、ヴェイルネビュラが登録している。

 NHKマイルCはこれまで25回と、GⅠの中では比較的歴史が浅いレースだが、血統的傾向はわかりやすいものがいくつかある。

 現役の産駒がいる種牡馬の中では、ダイワメジャー産駒が3勝、クロフネとディープインパクト産駒が2勝している(今年はダイワメジャーとクロフネの産駒は登録なし)。

 勝利がない父系は、キングカメハメハ、ロベルト、ダンチヒ、サドラーズウェルズ、ストームキャット。キングカメハメハは自身がNHKマイルC勝ち馬で、その父キングマンボ産駒のエルコンドルパサーも勝利しているが、産駒となると2015年ミュゼスルタン、2018年レッドヴェイロンの3着が最高だ。

 ロベルト系は、ブライアンズタイム(7頭)やシンボリクリスエス(5頭)といった産駒が多数出走しているが、2002年に単勝1.5倍の1番人気に推されたタニノギムレット(父ブライアンズタイム)も3着に敗れている。今年のメンバーでは、モーリス産駒の2頭(ピクシーナイト、ルークズネスト)、エピファネイア産駒の2頭(シティレインボー、スペシャルドラマ)が当てはまる。

 ダンチヒ系に当てはまるのがシュネルマイスター、サドラーズウェルズ系に当てはまるのがグレナディアガーズ、ショックアクションの2頭。ここまでに挙げたかなりの実績馬が"勝ったことがない父系"に該当している。



 こういった血統的ジンクスは気づいた頃には破られることが多く、鵜呑みにしすぎないほうがいい部分もある。ただ、該当する馬に絶対的な存在はいないので、今回はジンクスに当てはまらない馬を中心に考えたい。

 登録馬25頭のうち、ジンクスに当てはまらなかった馬は10頭。残ったのはすべてサンデーサイレンス系となった。

 その中で断然の存在と言えるのが、バスラットレオン(牡3歳/栗東・矢作芳人厩舎)。前走のGⅡニュージーランドT(中山/芝1600m)を5馬身差で圧勝しており、人気の一角だ。


 父は日本ダービー馬キズナで、母の父は英ダービー馬ニューアプローチという血統。ニューアプローチの父系祖父は、欧州の大種牡馬サドラーズウェルズで、直系の馬は前述のように勝利がない。しかし、母系にこの血を持つ馬は、1998年エルコンドルパサー、2009年ジョーカプチーノ、2016年メジャーエンブレム、2019年アドマイヤマーズの4頭が勝利しており、昨年2着のレシステンシアも持っていた。

 キズナ産駒はまだ2世代しか出走していないので「東京/芝1600m」の重賞勝ちはないが、重賞10勝中3勝が1600mと、この距離の成績は悪くない。GⅠでもマルターズディオサが阪神ジュベナイルフィリーズ2着、ファインルージュが桜花賞3着と好走歴があるため、悪くない条件と言えるだろう。

 キズナ産駒はほかの2頭も気になる。

まずソングライン(牝3歳/美浦・林徹厩舎)は、前走のGⅠ桜花賞(阪神/芝1600m)こそ15着に敗れたが、紅梅S(中京/芝1400m)の勝ち馬で、初勝利はこの「東京/芝1600m」のコースだった。

 左回りは3戦して2勝、2着1回で連対率100%という成績を残している。血統は、叔母にGⅡデイリー杯2歳Sを勝ったジューヌエコール、近親にダービー馬ロジユニヴァース、GⅠ秋華賞、英GⅠナッソーS勝ち馬のディアドラがいるなど牝系も優秀だ。

 もう1頭のダディーズビビッド(牡3歳/栗東・千田輝彦厩舎)は、GⅢシンザン記念11着、GⅢ毎日杯7着と近走不振。だが、母の父フレンチデピュティは、父として2001年クロフネ、2007年ピンクカメオとNHKマイルC勝ち馬を2頭送り、母の父としても2013年マイネルホウオウを出している。さらに、いとこは無敗でGⅠ皐月賞を制したエフフォーリアという旬の血統だ。
抽選対象だが、出走できたら狙ってみたい。

 以上、今年のNHKマイルCはキズナ産駒の3頭に期待する。