Jリーグの選手の平均身長は約178cm。近年は体格に恵まれた選手が着実に増えている。

そのなかにあって、体は小さくともピッチで大きな存在感を放つ小兵は数多い。今回は165cm以下と小柄ながらも、才能や力量がすぐれている日本人Jリーガーをクローズアップした。

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小さくても大丈夫。身長165cm以下で大活躍の日本人Jリーガ...の画像はこちら >>

横浜FMの仲川輝人(左)と川崎の長谷川竜也(右)。どちらもスピードが武器だ

 155cm。これがJリーグで身長がもっとも低い選手のサイズだが、2人いる。J2京都サンガF.C.のMF中川寛斗と、J3長野パルセイロのMF山口和樹だ。

 26歳の中川は、柏レイソルの育成組織出身で2011年から13年までは年代別日本代表にも名を連ねた。13年のトップチーム昇格と同時に曺貴裁監督率いる湘南ベルマーレにレンタル移籍してJ1デビュー。柏に復帰した15年にはプロ初ゴールを決め、J1史上もっとも身長の低いスコアラーとして歴史に名を刻んだ。

 ユース時代から定評のあった卓越したテクニックや俊敏性に加え、湘南時代に鍛えられた豊富な運動量が相まって、柏では主力を張って注目もされた。19年からの2シーズンは再び湘南でプレーし、今季から湘南時代の恩師・曺監督が就任した京都で活躍している。

 中川と同じく湘南でプロキャリアをスタートさせたのが、中川の1歳下の山口だ。

柏レイソルのジュニアユースから進んだ日本航空高で全国高校サッカー選手権の舞台に立ち、国士舘大を経て18年に湘南に入団。当時の曺監督の下でJリーグデビューを果たした。20年にJ2のFC琉球でプレーし、今季は長野でJ2昇格を目指している。

 小柄な選手でもっとも眩い光を放っているのは、横浜F・マリノスのFW仲川輝人(161cm)だろう。躍動感あふれるダイナミックな動きで、19年は得点王となる活躍で横浜FMを15年ぶりのJ1優勝に導き、JリーグMVPも受賞。日本代表にも選出された。

 横浜FMでは165cmのMF渡辺皓太も、豊富な運動量で駆け回り、攻守に目立つ存在として活躍している。

 Jリーグ創成期には、小柄な3人の選手の活躍が話題になったことがある。

 MF桂秀樹(160cm)は横浜フリューゲルスや川崎フロンターレでプレー。小回りの利いたターンと鋭いパスで活躍した。FW鈴木将方(161cm)はジュビロ磐田でプレー。高い身体能力を生かし、空中戦に競り勝って決めたゴールもあり、人気を博した。

 清水エスパルスで活躍したFW向島建(161cm)は、トップスピードに入る素早い加速力と、ドリブル突破で攻撃を彩った選手だった。清水では4年間で85試合に出場して15ゴールをマーク。97年に当時はJFLだった川崎フロンターレに移籍し、01年限りで現役を退いた。現在は川崎でスカウトをつとめている。

 切れ味鋭い一瞬のスピードと高いテクニックを持ち合わせていれば、身長にかかわらずJリーグの舞台で通用する。そんなことを肌で知るスカウトがいるからなのか、川崎には165cm以下のアタッカーが2人いる。

それが164cmのMF長谷川竜也と、165cmのFW遠野大弥だ。

 27歳の長谷川は静岡学園から順天堂大を経て、2016年に川崎に加入。1年目は故障もあって苦しんだものの、2年目は左アタッカーで存在感を発揮して24試合出場5得点。高い個人技を武器に、以降も常勝・川崎にあって貴重な戦力となっている。

 22歳の遠野は、藤枝明誠高から17年にJFLのHonda FCに加入。1年目は4得点、2年目は5得点、3年目は9得点をあげる成長が認められ、20年に川崎入りした。

1年目の昨季はアビスパ福岡にレンタル移籍してJ2でプレー。すると、チーム最多の11得点を決める活躍。J1昇格を置き土産にして川崎に復帰を果たした。

 そして迎えた今季、3月6日のベガルタ仙台戦で右サイドアタッカーとして先発出場してJ1初ゴールをマークした。チーム戦術にフィットするのに時間がかかる傾向の強い川崎にあって、第17節までのリーグ戦で14試合に出場して4得点と、今後を期待したくなる結果を残している。

 今回は165cm以下の選手にスポットライトを当てたが、170cm未満という括りで今季のJ1を見てみると、

コンサドーレ札幌/MF駒井善成(168cm)、FW小柏剛(167cm)
ベガルタ仙台/MF富田晋伍(169cm)
鹿島アントラーズ/MF遠藤康(168cm)
浦和レッズ/MF関根貴大(167cm)
川崎フロンターレ/DF登里享平(168cm)、MF大島僚太(168cm)
横浜FC/MF松浦拓弥(167cm)
湘南ベルマーレ/MF梅崎司(169cm)、MF山田直輝(168cm)、MF名古新太郎(168cm)
清水エスパルス/奥井諒(169cm)、MF河井陽介(166cm)
名古屋グランパス/DF吉田豊(167cm)、DF成瀬竣平(166cm)、FW相馬勇紀(166cm)、FW齋藤学(169cm)
ヴィッセル神戸/MF井上潮音(167cm)
サンフレッチェ広島/MF茶島雄介(166cm)
徳島ヴォルティス/MF小西雄大(169cm)、MF渡井理己(168cm)、MF鈴木徳真(168cm)
サガン鳥栖/MF樋口雄太(168cm)
大分トリニータ/MF町田也真人(166cm)

といった選手たちがいる。また、過去のJ1出場数の多い選手を見ていくと、

MF伊東輝悦(168cm/元清水ほか、現アスルクラロ沼津)
MF二川孝広(168cm/元ガンバ大阪ほか、現FCティアモ枚方)
MF藤本主税(168cm/元広島ほか)
MF羽生直剛(167cm/元FC東京ほか)
FW田中達也(167cm/元浦和、現アルビレックス新潟)
MF本田泰人(166cm/元鹿島)
MF森島寛晃(168cm/元セレッソ大阪)

など、名手たちが多いことがわかった。

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 その顔ぶれを見ていくと、それぞれの選手が圧倒的なスピードや豊富な運動量、高いテクニックなどさまざまな特長を持ち合わせている。高さの面ではハンデを抱えながらも、それを補って余りある武器があるからこそ、プロ選手のキャリアを積めるということだ。

 もうひとつ興味深いのは、静岡学園高出身選手の多さだ。上述の向島建や長谷川竜也をはじめ、吉田豊、大島僚太、名古新太郎、渡井理己といる。目先の勝利よりも選手個々の技術と判断力を高めることに力を注ぐ指導方針が、こうした結果に反映されているのだろう。