中山競馬場で9月12日に行なわれる重賞は、GIII京成杯オータムハンデキャップ(芝1600m)。ハンデ戦ということもあって、ひと筋縄ではいかないレースと言える。

 実際、過去10年の結果を振り返ってみても、1番人気は3勝。それ以外はすべて、馬券圏内(3着以内)から外れている。さらに、2015年には3連単で200万円超えという特大の高額配当が飛び出しており、穴党にとっては力の入る一戦だ。

 そうしたレースにあって、どんなタイプが狙い目となるのか。日刊スポーツの松田直樹記者はまず、過去の京成杯オータムHの傾向についてこう語る。

「このレースでは、馬場改修工事が行なわれた2014年(同年は新潟開催)以降、2015年からは4年連続で上がり最速馬が連対。

差し馬優勢の状況が続いていました。それが直近2年は、馬券圏内に入っている6頭すべて、4角3番手以内の馬だったんですよ」

 松田記者はそうした傾向の変化を受けて、馬場管理についてJRAの担当者に話を聞いたという。そのうえで、今年のレースで狙える穴馬についての見解を次のように示した。

「近年は馬場傾向が予想における大きなファクターとなっています。そこで昨秋、中山競馬場の馬場造園課を取材したところ、夏場のエアレーション作業(芝コースに小さな穴を一定間隔で開けて、路盤の通気性を向上させるとともに、クッション性を向上させる作業)の実施時期を毎年少しずつズラしているという話を聞きました。そしてそれが、決着タイムや脚質傾向の変化につながっているかもしれない、との説明を受けました。

 そういった馬場傾向は日ごとに見極めたいところではありますが、より良い馬場づくりのための試行錯誤の段階にあるとすれば、昨年からの馬場状態に大幅な変化は考えづらいところ。つまり、今年も引き続き先行有利と想定して、穴馬を探したいですね」

京成杯オータムH、コース適性高い先行馬2頭を穴党記者が強力プ...の画像はこちら >>

中山のマイル戦で3勝を挙げているスマイルカナ

 そうして、松田記者が穴馬候補として挙げたのは、昨年のレースで2着だったスマイルカナ(牝4歳)だ。

「ここ2戦はふた桁着順に沈んでいますが、コース巧者の同馬の復活に期待しています。中山マイルは重賞2勝を含めて3勝、2着1回、着外1回。昨年も大外枠発走ながら、先行力を発揮して2着に粘りました。今年は昨年の52kgから55kgとハンデは重くなりますが、十分に勝負気配を感じさせています」

 気になるのは、松田記者も触れている直近2戦の惨敗だが、その点については「度外視していいのでは」と同記者は言う。

「春2戦の大敗、GIIIダービー卿チャレンジトロフィー(4月3日/中山・芝1600m)の14着、GIヴィクトリアマイル(5月16日/東京・芝1600m)の15着という結果についても、理由があります。

 ダービー卿CTは休み明け。小柄な牝馬であるにもかかわらず、マイナス10kgと馬体を減らしての出走が響きました。続くGI戦も、そこから本調子に至っていないことを、鞍上を含めた陣営が匂わせていました。要するに、調子が上がらないなかでの惨敗だった、ということです。

 そこから、この中間は夏休みを挟んだこともあって、体調もすっかり戻っています。

追い切りでは2週前、1週前とウッドコースで、ラスト1ハロンで軽々と11秒台を計時していました。

 デビュー当初は逃げてこその馬でしたが、今は番手に控えても競馬ができる。先行有利の馬場状態を想定すれば、今年も外せない1頭です」

 松田記者はもう1頭、グランデマーレ(牡4歳)にも注目する。

「スマイルカナと同じ先行脚質で狙い目です。これまでに7戦して、全4勝はすべて右回り。一方、左回りの3戦はすべて馬券圏外。

ここまで成績がはっきりしている馬も珍しいですよ。

 右にもたれる癖が弱点で、それがこうした戦績に表われているようです。現に前走のGIII関屋記念(8月15日/新潟・芝1600m)では、その弱点のせいで位置取りを悪くして、5着という結果に終わりました。

 それでも、最後はメンバー最速の上がりタイムをマーク。勝ち馬にコンマ3秒差まで詰め寄りました。好走パターンの先行策に持ち込むことができれば、巻き返せる可能性は高いと踏んでいます。

 昨年の秋以降にマイル路線へ転向し、ここ数戦の内容から適性があることは実証済み。前に行っても上がりはしっかりしていますから、好走確率100%の右回りのレースとなれば、前進しかない、と見ていいのではないでしょうか」

 好メンバーがそろった秋競馬最初のマイル重賞。中山という舞台が合う2頭の大駆けに期待が膨らむ。