2021シーズン助っ人MVP候補【セ・リーグ編】

 残り20試合を切って佳境を迎えているセ・リーグのペナントレース。優勝争いはヤクルト、阪神、巨人の三つ巴になっている。

 そんななか、今シーズンの「助っ人MVP」を決めるなら、いったい誰になるのか。パ・リーグ編に引き続き、今回はセ・リーグ編をお送りする。

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今季の助っ人MVPは誰か?【セ・リーグ編】。DeNA最下位で...の画像はこちら >>

主要打撃部門で上位に食い込むDeNAのタイラー・オースティン

 優勝チーム、もしくは優勝争いをしたチームからMVP選手を選ぶのが筋であるならば、今季の最強助っ人も上記の3球団から選ぶべきだろう。ただ、仮にDeNAが少しでも優勝争いに絡んでいたのならば、助っ人MVPはタイラー・オースティンで異論なかったのではないだろうか。

 2018年、2019年の本塁打王のネフタリ・ソトは打率.234、20本塁打、54打点(今季成績は10月1日時点、以下同)。リリーバー左腕のエドウィン・エスコバーは登板56試合で4勝4敗29ホールド。

同僚2選手も"助っ人"として恥ずかしくない成績を残しているが、オースティンのそれと比べると霞んでしまう。

 来日2年目のオースティンは今季、4月13日に一軍に合流して4月15日からスタメンに名を連ねると、9月30日までに104試合に出場してリーグ4位の打率.309。首位打者のタイトル争いに身を置く。本塁打はリーグ5位の28本、打点はリーグ4位タイの74打点、出塁率はリーグ2位の.408で、得点圏打率はリーグトップで驚異の.354。いずれも外国人選手ではリーグ1位を誇る。

 それでも「助っ人MVP」として物足りなさが残るのは、ひとえにチームが優勝争いに加われていないからだ。

ただ、チームは現在最下位でも、圧倒的な大記録を樹立すれば話は別。2013年にNPB新記録の60本塁打をマークしたウラディミール・バレンティン(当時ヤクルト)のように、オースティンも現実的にはかなり難しいが三冠王でも獲得できれば......。

 一方、現在優勝争いを演じている3チームから助っ人MVPにふさわしい選手を選ぶならば、いずれも候補者はクローザーを推したい。

 序盤戦からペナントレースを牽引してきた阪神では、打者では主に3番一塁のジェフリー・マルテが109試合で打率.274、20本塁打、66打点、5番左翼のジェリー・サンズが120試合で打率.248、20本塁打、65打点と機能し、8月末までの首位快走の立役者になった。投手では来日2年目右腕のジョー・ガンケルが17先発で8勝3敗、防御3.28と好調を維持し、先発陣の一角を支えている。

 ただ、その活躍もロベルト・スアレスの守護神としての安定感には敵わない。

2019年かぎりで4年在籍したソフトバンクから戦力外となったスアレスは昨季"タテジマ"に袖を通すと、シーズン途中の7月からクローザーに定着して最多セーブのタイトルを獲得。今季はシーズン当初から守護神として存在感を発揮し、52試合の登板で1勝1敗35セーブ、防御率1.40と抜群の成績を残している。

 一方、昨季の最下位から飛躍を遂げたヤクルトでは、内野手のホセ・オスナは99試合で打率.284、12本塁打、54打点。外野手のドミンゴ・サンタナは96試合で打率.268、12本塁打、44打点。新外国人2選手が村上宗隆、山田哲人青木宣親を打線でつなぐ存在として重宝されている。

 投手陣では阪神スアレスの兄であり、来日3年目のアルバート・スアレスが先発陣の一角として活躍。

15試合13先発で5勝3敗、防御率3.74と奮闘している。

 ただ、助っ人MVP候補ならばスコット・マクガフだろう。シーズン途中に不振の石山泰稚に代わってセットアッパーから守護神に抜擢され、55試合に登板して2勝2敗14ホールド24セーブ。奪三振率も11.31と高く、ピンチの場面でも三振で切り抜けるシーンが目立つ。

 この2チームを追うのが、現在3位の巨人。リーグ3連覇がかかっているシーズンだけに、巨人の新外国人打者には大きな期待が寄せられていた。

しかし、スイッチヒッターでMLB通算196発のジャスティン・スモークは希望していた家族の来日が叶わず、6月に契約解除で巨人を去る。

 年俸約1億2500万円のエリック・テームズは4月のイースタン・リーグ9試合で打率.500、4本塁打、15打点と打ちまくり、今季の活躍を予感させた。だが、1軍初出場となった4月27日のヤクルト戦でアキレス腱を断裂。1試合2打数2三振の記録を残し、8月に自由契約となった。

 そのテームズに代わって来日した年俸約3300万円のスコット・ハイネマン外野手は、2週間の隔離期間などを経て1軍デビューしたものの10試合で打率.160、0本塁打、2打点と振るわず。9月末に体調不良を理由に帰国した。

 残念な結果に終わった助っ人の多いなか、MVP級の働きをシーズン当初から見せたのが守護神のチアゴ・ビエイラだ。8月13日の中日戦ではNPB史上最速の166キロをマークするなど、剛速球と精度の高いスライダーを武器に32試合連続無失点のNPB外国人新記録を樹立。7・8月は登板12試合0勝0敗9セーブ、防御率0.00点で月間MVPにも輝いた。

 ビエイラが「助っ人MVP」の評価を得られるかは、ペナントの行方が決まるシーズンラスト1カ月で前半戦に見せたピッチングを取り戻せるかにかかっている。9月8日に登録抹消された右ひじの違和感からは復調して今は一軍復帰しているが、投球内容は戦線離脱前の出来には及ばないものだった。完全復調して逆転優勝に貢献できれば、助っ人MVPにふさわしいと言えるだろう。

 プロ野球が2リーグに分裂した1950年以降、セ・リーグでレギュラーシーズンMVP(最優秀選手)に外国人選手が輝いたのは7選手(8シーズン)いる。1985年のランディ・バース(阪神)、1989年ウォーレン・クロマティ(巨人)、1992年ジャック・ハウエル(ヤクルト)、1995年トーマス・オマリー(ヤクルト)、2001年ロベルト・ペタジーニ(ヤクルト)、2008年・2009年アレックス・ラミレス(巨人)、2013年バレンティン(ヤクルト)。

 日本人も含めて全選手のなかで最も優秀な選手に送られるレギュラーシーズンMVPの称号を得る外国人選手が、次に現れるのはいつになるだろうか。

 ただ、間違いなく言えることは、助っ人がMVP級の働きをした外国人選手のいるチームは、その先に待っているクライマックスシリーズ日本シリーズへと駒を進める可能性が高い。果たして、チームを高みに導く助っ人は誰か。シーズン最終盤のプロ野球は、外国人選手に注目してみるのも楽しみ方のひとつだ。