なぜオリックス吉田正尚は異様に三振が少ないのか。ピカイチの打...の画像はこちら >>

今季から背番号7を背負うオリックス・バファローズ、吉田正尚

 3月25日に2022年シーズンが開幕するプロ野球。昨シーズンのパ・リーグは、オリックス・バファローズが25年ぶりに優勝を果たし、日本シリーズ東京ヤクルトスワローズと対峙した。

そのチームを支えたのが2年連続首位打者に輝いた吉田正尚である。リーグ戦のみならず、東京五輪では金メダル獲得にも貢献し、「いろんな経験をした1年でした」と語る。今年もオリックスの主軸としての活躍が期待されるなか、新たに背番号7を背負い、どんな活躍を見せてくれるのだろうか──。

昨年リーグ優勝できた理由

「昨年は、パ・リーグで優勝して、日本シリーズの舞台に立てたことはとても大きかったですね。どの選手もそこを目標にしていますし、憧れでもあるので、その舞台で戦うことはすごく大きな経験になりました」

 オリックスにとっては、96年にイチローが活躍して優勝して以来、25年ぶりの戴冠になったわけだが、実は2019年(61勝75敗7分)、2020年(45勝68敗7分)は最下位に終わっていた。前年最下位から1年で巻き返しての優勝は史上9チーム目になる。優勝できたのはミラクルではなく、理由があるはずだが、吉田はどう見ていたのだろうか。

「僕らは2年連続の最下位でスタートしたのですが、特別なことはしていないんです。1試合1試合勝っていくなかで自信をつけ、逆に負けた試合はその都度、反省して次の試合に活かそう、その繰り返しでした。夏以降、特にチーム力が上がりましたが、それも接戦のなかで勝てたことで自信がつき、一体感が出てきて波に乗れた。もちろん運もあったと思いますが、どの試合も最後まで諦めないで戦えたことが最後に優勝につながったと思います」

 昨年春からチームの雰囲気が非常によかった。それは、ヒーローインタビューでも見てとれた。4月の西武戦、ラオウこと杉本裕太郎がサヨナラ安打を打ち、3連勝を果たした時、「今日もTさんの香水を借りました。

Tさんありがとう!」とT-岡田の香水で打撃好調になったことを感謝し、「(T-岡田に)僕の香水をつけてあげました」と明かすと「ラオウありがとう!」とT-岡田も杉本の香水に感謝した。堅苦しいお立ち台ではなく、明るく、クスッと笑えるような非常にいいムードが漂っていた。

「先輩方が、そういうムードを作ってくれるので若手が伸び伸びとプレーできる。それも昨年、チームが好調だった要因のひとつかなと思います。自分は今年7年目になるので、そういう環境作りもしていかないと、という意識はあります。やっぱり連覇をしたいので」

新背番号「7」にかける思い

 パ・リーグ連覇を実現するためにオリックスは2月1日、キャンプインをした。宮崎キャンプでは、吉田の新しい背番号がお披露目された。

これまで背負っていた34番は、ドラフト1位指名された2015年にメジャーリーグでナ・リーグ本塁打王、MVPに輝いたブライス・ハーパー(現フィリーズ)と同じ背番号だった。新たな背番号7は、オリックスの前身である阪急ブレーブスのレジェンド、福本豊がつけていた番号でもある。

「34番には愛着があったんですけど、7番は球団では伝統の番号ですし、7年目の節目ということもありました。それでもやっぱり悩んだんですけど、シーズン中にモヤモヤするのはイヤなので、最後はスパっと変更を決めました。これから新たな7番にしていきたいですし、ファンの方にも応援してもらえる背番号にしていきたいですね」

 今シーズン、吉田が打って、活躍すれば、自然と7番は馴染んでいくだろう。そのためにはもちろん、優勝のためにも吉田の打撃の貢献が欠かせない。

昨年は、打率.339で2年連続で首位打者を獲得した。だが、本塁打は21本、打点は72とケガの影響もあって、もうひとつ伸びなかった。

「昨年はケガを防いで、コンディションを整えれば、もっと数字は上がったと思いますが、それを今年に活かしていきたい。個人的には、今年は打撃部門すべてで1位を目指していきたいですね。三冠はもちろん、ヒット数や出塁率、長打率とか偏ることなく、すべて1位を獲る。高い目標ですけど、僕はこれさえ獲れれば満足っていうのはないので、全部1位でいたいんです」

打撃で意識していること

 吉田の言葉から高い向上心と結果に対する貪欲さが伝わってくる。

プロ野球選手ゆえに、それはある意味誰しもが持つべきものであるが、吉田ほど気持ちよく宣言する選手はいない。こうした自信に満ちた発言は、自分のバッティング技術に自信があるからでもある。たとえば三振数は、2018年のキャリアワーストの74三振から64、29と減らし、昨年は455打席で26三振だった。非常に三振が少なく、強打でありながらバットコントロールの技術はピカイチだ。

「三振しないところは意識しています。そのためにカウントだったり、追い込まれて相手のウイニングショットがくる時は、それを予測しながら打つ方向を決めたり、ボールを叩くポイントを変えて、同じようなスイングをしないようにしています」

 フルスイングを持ち味にしている選手は、パ・リーグに複数、存在する。

ソフトバンクの柳田悠岐、西武の森友哉などがそうだ。

「試合前とかに、対戦チームの選手ともコミュニケーションをとっています。話をしますけど、僕はバッティングは基本的に人それぞれだと思っているので、あまり参考にはしないです。ただ、おもしろそうだなっていうことは試したりもしますが、感覚的に合う合わないもありますからね。人を意識するよりも常に自分にいいものを見つけていくという姿勢のほうが大事だと思います」

 自分ならではのフルスイングを実現するために吉田は、いろんなことに投資している。たとえば自分の体だ。しっかりと筋力トレーニングをして、必要な箇所に必要な分の筋肉をつけていく。「全身バランスよく鍛える」と吉田は言うが、この7年間で体つきはかなり変わった。また、バットへのこだわりも非常に強い。職人と話をしながら作り込み、バットケースには乾燥剤を入れて管理している。

「バットによって、自分の成績が変わってくるので、そこはすごく大事にしています。シーズン中はなかなか変更できないので、シーズン後に職人さんのところに行き、シーズン中に思ったことを話して、芯の太さを変えたりして複数作ってもらい、そのなかから決めます。あれこれ悩みすぎるのもよくないので。そうして最高の1本を作ってもらって、できるだけ多くのヒットやホームランを打ちたいと思っています」

 さらに自分の映像を見て、分析し、次はどんなアプローチをしていけばいいのか。そうしたことを試合ごとに繰り返している。それは、現在のキャンプ期間も変わらない。

「1日1日レベルアップすることだけを考えています。向上心を持って取り組まないと、ダメになるのが早くなりますし、自分が目標とする高い数字を残せないので」

 目指すべき高い目標、三冠王を達成すれば、海外への道も見えてきそうだ。昨年、東京五輪では全試合に出場して世界と対峙、金メダル獲得に貢献した。世界の舞台で戦うことの面白さは、戦った選手にしかわからない。

「東京五輪で日の丸をつけて戦うのは、日本シリーズとはまったく別ものでした。本当に緊張しましたし、日の丸の重みも感じました。この経験は、選ばれた選手しか味わえないものですが、これが今後自分にどう活きてくるのか。高いレベルでプレーする意識は野球人として持っていないといけないものだと思います」

 メジャーへの道は、自分が結果を出した先についてくるものだ。その前に今シーズン、吉田には達成したい目標がある。

「パ・リーグで連覇をしたいですね。簡単ではないことはわかっています。ここ数年、パ・リーグは非常にレベルが高いので、どこが上がってくるのかわからない。僕らもチャンピオンチームとしてではなく、チャレンジャーの気持ちでいかないと足元をすくわれてしまいます。昨年同様、ひとつひとつ勝ちを重ねていって優勝を果たし、日本一を獲りにいきたい」

 2020年以来のフル出場を果たし、2004年、松中信彦以来の三冠王を達成すれば、リーグ優勝はその背中についてくるはずだ。