パリ五輪メンバー発表前、なでしこジャパン(FIFAランキング7位)が最後の国際親善試合を行なった。スペインでの2連戦の相手は、オリンピック出場を決めているニュージーランド(FIFAランク28位)。

 なでしこジャパンは、選手たちの新たな組み合わせが盛り込まれたチャレンジ色強めの初戦を2-0、最も本大会寄りのメンバーが並んだ第2戦を4-1で勝利し、2連勝で遠征を終えた。

パリ五輪でなでしこジャパンをメダルへ導くFWは誰? 昨夏のW...の画像はこちら >>
 DF陣、ボランチはおおよそ絞り込まれてきたが、最後のピースへのアピール合戦となったのが3トップを担う前線の選手たちだ。最終メンバーは18枠(昨夏の女子ワールドカップは23枠)。この限られた人数で、パリ五輪は17日間で最大6試合を戦い抜かなくてはならない。そうしたなか、攻撃陣には、複数ポジションを務めることができ、決定力があり、ビルドアップもできる...など、求められるものは多い。

 ボランチを除く攻撃陣に与えられるであろう5~6枠に、今回の遠征では7名が試された。

安定的な活躍を見せた者、開眼した者、沼に陥ってしまった者、悩み抜いた先に可能性を見出した者......それぞれに異なる最終アピールだった。

【自分らしさと修正力を見せた浜野まいか】

「絶対に次、ゴール決めます!」

 初戦のあと、強い覚悟を持ってこの一言を放ったのは、浜野まいか(チェルシー)だった。この試合、後半開始からの途中出場で前線の右サイドに入ると、右ウイングバックにポジションを変えた清家貴子(三菱重工浦和レッズレディース)をスムーズに生かし、守備も奮闘。しかし、自分自身は生かしきることはできなかった。試合終了のホイッスルが鳴ると、悔しそうに天を仰いだ。

 それでも彼女のプレーは4月のアメリカ遠征とは明らかに異なり、一つひとつのプレーはこれ以上ないくらい無駄な動きが削り取られていた。

「アメリカ遠征では、前からガンガン行ってたんですけど、あとで映像を見ると自分ひとりだけで行ってたんです。

自分のよさではあるけど、日本のよさはあそこでちょっと我慢して連動して動くことにある。途中から入るとチームメイトも疲れてて、そこで自分が行ってしまってもいいのかすごく迷いが出てきたんです。でもそれが評価されて、今ここに来ていることも理解していて......」(浜野)

 そんな反省がアメリカ遠征ではあったという。

 そして、第2戦では爆発した。1点ビハインドの後半から入ると、試合を振り出しに戻す同点ゴールを決める。この自身代表初ゴールは、セットプレーの流れから、相手のクリアボールに本能のままに反応し、低い弾道で放ったボレーシュートだった。

 そしてクイックリスタートを裏で受けて決めた2点目は、長谷川唯(マンチェスター・シティ)がFKのボールをセットする前に目が合ったという。「身体の向きを、ゴールに向けた状態にしていたので、唯さんもわかってくれたんだと思います」(浜野)。

 実は第1戦で「(北川)ひかるさん(INAC神戸レオネッサ)のクロスが出てくるって信じてスタートを切っていれば......」というシーンがあり、反省をしていた。オリンピックではここの差が勝負を分けると考えているからだ。しかし、この時は迷うことなく長谷川が蹴り出す前にスタートを切った。狙いどおりにボールが収まると、しっかりと狙ってゴール奪取。

 この2ゴールには、浜野らしさと最大限の修正が詰まっていた。

【宮澤ひなたはウイングバックでもプレー】

 一方、昨夏のW杯得点王・宮澤ひなた(マンチェスター・ユナイテッド)は悩み抜いていた。W杯後さらなる活躍を期待されていたなか、昨年11~12月のブラジル遠征で右足首を骨折。万全な状態ではないなか4月のSheBelievesCupには招集されたが、そのほとんどを感覚を戻す作業に費やした。

 今回は出遅れた分の巻き返しが必要な機会だったが、初戦後、彼女から出てきたのは、「得点王って見られるけど......」との言葉。プレッシャーを感じているようで意外だった。というのも、この試合の直前までの彼女はそのプレッシャーを力に変えていたからだ。

 しかし、初戦を見れば彼女の落ち込みも理解できる。初めて組む左サイドのコンビネーションがうまく機能しなかったのだ。

 前線の左に入り、外を駆け上がる北川の進路を担保し、トップの田中美南(INAC神戸レオネッサ)の負担を少なくするために相手DFをブロックする。ところがボールに全く触れない。時間が経過しても状況は改善されなかった。

 それでも北川のよさを生かし、自分も生きる道筋を探るべく、左DFに入っていた古賀塔子(フェイエノールト)ともコミュニケーションを取り、中二日で突破口を見い出そうとしていた。

 第2戦は再び北川とコンビを組んだ。午前中に北川と、そして左DFに入る南萌華(ローマ)ともしっかり話をして、ビジョンを共有して臨むことができていた。

 その結果、修正したプレーが見られた。「初戦よりもボールに触れたし、抜けることもきた。ひかるさんとも『この前よりもやりやすいね』と同じ感覚を持てました」(宮澤)。

 そして後半、千葉玲海菜(フランクフルト)が入ると宮澤は左のウイングバックに下がった。チームのウイングバック不足のための新たなトライだ。練習でも入ったことがあり、その可能性は頭には入っていた。

「なんか懐かしかったです(笑)。(昨年の試合で)(遠藤)純(エンジェル・シティ/負傷離脱中)が中をうかがう時、自分はあの位置(ウイングバック)にいたから。久しぶりに前のスペースが開けて存分に走れるし、自分が苦しんだからこそ玲海菜に『そこまで落ちなくていいよ』って言えた。後ろから見える景色を知れたのは、今後、前に戻った時にやりやすくなります」(宮澤)。

 彼女に守備のイメージは全くないが、ひとつの可能性を示すことはできただろう。

【多くのFWが爪痕を残す2連戦に】

 それぞれの思惑が交差した2連戦。攻撃陣最年長の田中美南は、さすがの安定感でビルドアップに貢献しながら、初戦では完璧なコンビネーションで相手を崩し、フィニッシュを飾った。

 そのゴールをアシストした清家は、ウイングバック&トップをこなす。「ラストチャンスに失うものはないです!」と全力でぶつかった千葉、初めて3トップの中央に入った藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)も揃ってゴールを決めた。

 決定機を外してはしまったが、スーパーリーグ(イングランド)では終盤にゴールを重ねて自信をつけている植木理子(ウェストハム)。熾烈を極めたアピール合戦は多くの選手が爪痕を残す形となった。

 連戦&移動&暑さのパリ五輪本大会で、池田太監督がゲーム作りとポイントゲッターのどちらに重きを置くかで、攻撃陣の枠数が決まるだろう。最後の巻き返しに期待を寄せるか、過去の実績に信頼を寄せるか――池田監督の嬉しい悩みは、最終メンバー決定直前まで続きそうだ。