高木豊が注目する有望選手 セ・リーグ

 残り40試合を切り、佳境に差し掛かるプロ野球。各チームの順位はもちろんだが、今季に頭角を現し、来季以降もチームを支えていきそうな有望選手の活躍も気になるところだ。

かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏が、セ・リーグの注目若手選手をピックアップした。

高木豊が注目するセ・リーグの有望選手4人 中日のタフな先発投...の画像はこちら >>

【中日4年目の先発「彼のハングリー精神は本物」】

――セ・リーグで注目の有望選手は?

高木豊(以下:高木) ピッチャーでは、中日の松木平優太(まつきひら・ゆうた/4年目)は今後もっとよくなりますよ。コントロールもいいですし、何よりもタフです。ファームの時は先発ローテーションを守って投げていましたし、少々のことではへこたれない精神的な強さも持ち合わせています。

※8月14日時点の成績・・・4登板、1勝1敗、防御率2.42、奪三振率5.88

――松木平投手は2020年の育成ドラフト3位で入団。今年7月に支配下登録されました。

高木 今は、体が強い選手はいくらでもいるんですが、精神面が育っていない。そんななかで、若手で精神力が一番育っているのは、松木平だと僕は思っています。プロ初勝利を挙げた7月31日のヤクルト戦のヒーローインタビューでは、(幼い頃に両親が離婚し、その後に母が他界。育ててくれた)祖母と一緒に暮らすことが夢で、そのために活躍して稼ぎたいと。お立ち台で号泣するシーンがありましたが、彼のハングリー精神は本物ですよ。

――ここまで一軍では、先発で4回登板していますが、ピッチングの印象はいかがですか?

高木 真っすぐの球速はそれほどではないのですが、チェンジアップやカットボールがいいですし、制球がよくて無駄なフォアボールを出しません。ハングリー精神があるだけではなく、しっかりとした技術も持ち合わせています。

8月7日のDeNA戦では7回無失点と好投して、相手のエース・東克樹とがっぷり四つで投げ合いました。この試合では打線が援護できなかったのですが、今後に向けて十分に期待できる内容だったと思いますよ。

――ほかに気になる投手はいますか?

高木 先発転向に向けて調整を進めている巨人の西舘勇陽(1年目)にも期待しています。先発ローテーションなど、巨人ピッチャー陣全体のバランスを見ると、西舘に中継ぎの経験を積ませたのはよかったと思います。当初は先発で投げさせたかったんでしょうけど、先発の枚数がある程度足りていたのと、リリーフ陣が少々薄いという判断だったんでしょうね。

 それと、西舘はコントロールがよくてボールの勢いがある。ストライクで勝負できるピッチャーなので、リリーフからスタートさせることになったのかなと。

※8月14日時点の成績・・・26登板、1勝2敗、19ホールド1セーブ、防御率3.57、奪三振率7.15

――リリーフでのピッチングを見て、やはり先発のほうが適していると判断されたのでしょうか?

高木 というよりも、長くリリーフをやれるような性格ではないんだと思います。真面目すぎるので、ひとつの失敗、ひとつの被弾をほかの投手よりも重く受け止める性格なんじゃないかと。なので、先発である程度"緩み"を持って投げさせたほうがいいと判断したんじゃないですか。

 逆に、巨人はリリーフ陣が揃ってきたとも言えます。大勢とアルベルト・バルドナードがいて、高梨雄平、船迫大雅、カイル・ケラー、泉圭輔もいれば回るでしょう。

――先発として、西舘投手にはどんなピッチングを期待していますか?

高木 今季に関しては、それほど先発の登板機会はないでしょう。来季以降、シーズンの始めから先発ローテーションで回れば、毎年ふた桁に届くくらいの勝ちは計算できますね。

【走攻守で期待の野手2人】

――野手で挙げるとすれば?

高木 DeNAの梶原昂希(3年目)です。彼の魅力は打つだけではなく、走攻守が三拍子揃っていること。大柄だけど足もめちゃくちゃ速いですし、パンチ力もある。今は結果が欲しいのかバッティングが小さくなっていますが、本来のバッティングができるようになれば、狭い横浜スタジアムですしホームランも20本ぐらい打てると思うんです。フリーバッティングでは、かなりの打球をスタンドにたたき込みますしね。スケール感の大きい選手に育ててほしいです。

※8月14日時点の成績・・・56試合、打率.330、出塁率.354、1本塁打、14打点、10盗塁

――今季はすでに、キャリアハイの56試合に出場。今後、どれくらいの成績を期待できそうでしょうか。

高木 30盗塁以上できる足も持っているので、3割・20本・30盗塁くらいの成績を残してくれる選手になるんじゃないかなと。調子が落ちて打てなくなっても、僕は使い続けるべきだと思います。

そうでないと、育っていきませんから。

――ほかに期待している野手はいますか?

高木 広島の矢野雅哉(4年目)です。

※8月14日時点の成績・・・96試合、打率.246、出塁率.310、0本塁打、24打点、9盗塁

――昨季から出場機会が増えましたが、今季はより飛躍しましたね。

高木 まずバッティングに関しては、使われ続けることで成長してきたなと。最近では右ピッチャーでも左ピッチャーでも関係なく使われるようになってきていますし、信頼に応えています。

大学時代(亜細亜大)から粘り強いバッティングが長所でしたが、ここ最近は粘りに磨きがかかってきました。そもそもこういったタイプの選手が、大学時代からあっさりとしたバッティングをしていたら、レギュラーは張れていませんけどね。

――ショートの守備はどうですか?

高木 小園海斗が広島のショートとして君臨していくと思っていたのですが、そこをこじ開けましたね。それだけ守備力が優れているということ。スローイングも正確ですし、肩が強いので内野安打を許すこともない。守備範囲も広いですし、12球団を見渡してもトップクラスのショートじゃないですか。捕るだけだったら源田壮亮、スローイングなら今宮健太が一番うまいと個人的に思っていますが、総合力は矢野が一番だと考えています。

 それと、矢野の守備には"迫力"を感じるんです。昔、池山隆寛(元ヤクルト)が出てきた時のショートの守備に迫力を感じたことがありましたが、そう思わされたのは久しぶりです。まだまだ伸びしろを感じますし、走攻守すべての面での活躍が期待できる数少ない選手のひとりだと思います。

パ・リーグ編につづく>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

編集部おすすめ