「森保一監督が率いる日本代表は、戦術システムがとてもうまく機能している。それぞれのコンビネーションが抜群。
スペイン人指導者、ミケル・エチャリはそう言って、2026年W杯アジア最終予選、日本が中国を7-0で下した試合を振り返っている。
エチャリは、バスクでは尊敬の的となっている指導者である。栄誉職であるバスク代表監督は10年以上も務めた。監督養成学校の教授であり、そのスカウティング力はジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)にも称賛される。フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)、ウナイ・エメリ(アストン・ビラ監督)、ハゴバ・アラサテ(マジョルカ監督)、ホセバ・エチェベリア(エイバル監督)、そしてシャビ・アロンソ(レバークーゼン監督)というバスク出身の名将たちに影響を与えてきた。
そのエチャリが、中国戦で合格点をつけたのは――。
「日本は3-4-3(3-4-2-1)のシステムを採用している。ここ数試合、積極的にトライしている戦術だが、そのたびに成熟が見られる。攻撃能力の高い選手を擁していることも大きいのだろう。試合は開始後すぐ、日本が主導権を握ることになった。力の差は大きい。技術も、体力も勝っていた。
開始12分、押し込んだ形から左CKを奪うと、キッカーの久保が上から落とすようなボールを蹴り、遠藤がフリーでヘディングシュートを叩き込んでいる。ボールの質は際立ってよかった。遠藤は味方との連係で、うまくフリーになっていた。
ただ、中国があまりに惰弱だった。これだけフリーでの得点は、トップレベルではほとんどない。混乱ぶりは目を覆うばかりだった。
それ以降も、日本は優勢を続けている。ほとんど攻められることはなかった。前半終了間際、久保がサイドでふたりを引きつけ、堂安に戻したところ、完ぺきなクロスをファーに入れ、三笘がヘディングで流し込んだシーンの連係はとても合理的で、技術もすばらしかったが......」
【長谷部の入閣は喜ばしい】
「前半に関しては、細かいミスが気になった。たとえば、谷口彰浩は何でもないボールをクリアし損ねていた。強豪だったらつけ入られるだろう。
攻撃も先制後はややスローだった。終了間際の1点を決められなかったら、これほど楽な展開にならなかっただろう」
エチャリはそう言って警鐘を鳴らした。大勝に隠された、わずかなミスこそ、次の敗因になるからだ。
「この日、ベストプレーヤーだったのは南野だろう。前半から、前線のライン間やラインの裏で躍動していた。あらゆる選手と連係を結び、センスが光った。プレーセンスに恵まれ、非常にいいボール奪取も見せている。
後半、南野が試合を決めた。三笘からのパスを引き出し、鮮やかに3点目を記録。さらに町田浩樹が縦に入れたボールへの上田綺世の落としに反応し、南野はそのまま切り込んで4点目を決めた。最近の試合を振り返っても、存在感が増している。
後半60分を過ぎると、両チームが選手交代に動く。これで試合はやや膠着することになったが、徐々に戦力差が表われた。76分には、途中出場の伊東純也が久保のパスを受け、ミドルを決めている。
5-0になったことで、中国から完全に戦意が消えた。
日本はさらに2点を追加したが、試合はすでに決していたと言えるだろう」
エチャリはそう言って大勝を振り返りながら、こう締めくくっている。
「繰り返すが、新しいシステムが成熟しつつあるのは間違いない。それがこの結果につながった。日本人のテクニックや俊敏性やコンビネーションの高さを生かしたタクティクスであるのは事実だ。
ただ、相手の力不足も否めない。ほとんど攻められていないだけに、プレッシャーも低かったまることは覚えておくべきだ。
一方で、『長谷部誠がコーチに入閣』は喜ばしいニュースと言える。
『サッカーを知っている』。その感覚は、プロ選手といえども誰もが持っているものではなく、貴重なものだ。
森保監督は、頼もしい味方を得たと言えるのではないだろうか。
次のバーレーン戦でも健闘を祈りたい」