「あの人は今」スカッシュプレーヤー
松井千夏インタビュー後編

◆松井千夏・前編>>現在47歳の現役「4年後のロサンゼルス五輪に出るためには...」
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 2000年代に「美人アスリート」としてテレビや雑誌などのメディアに多く出演していた松井千夏。あれから時を経て、彼女は結婚して一児の母となり、今もトップ選手のひとりとして現役を続けていた。

 今は移り住んだ北九州を拠点に、2028年のロサンゼルス五輪で正式競技となったスカッシュの普及活動に邁進しているという。47歳となった今、スカッシュを広めようと多くのメディアに露出していた当時を振り返ってもらった。

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── 松井選手は昨年、活動拠点を関東から北九州に移しました。どのような経緯があったのですか?

「昨年まで私も夫(全日本選手権で準優勝した経歴を持つ清水孝典氏)も神奈川や東京で働いていたのですが、夫の働いていたスポーツクラブが閉館してしまいました。そのタイミングで、お世話になっている方がスカッシュコートを建設できる場所を探してくださり、夫婦で北九州に行くことになりました」

── 北九州という土地に縁は?

「なかったですね。私はずっと地元の横浜で生活していて、トレーニングで海外に行ったりしたこともありましたが、住む場所を変えるのは初めての経験でした。5歳になる息子もいますし、環境が180度変わりました。すべて自分がやらないといけないので、すごく不安でしたね。今は夫や両親・義両親にも協力してもらって、やっと慣れてきました」

── 今も現役選手として大会に出場し、昨年の全日本選手権(コロナ禍の影響で2回開催)は春3位、秋はベスト16でした。

「基本的にずっとプレーしています。生涯現役です(笑)。環境や場所が変わっても応援してくださる方はたくさんいるし、スポンサーさんにも応援していただいているので、それらがあるかぎりは現役選手としてやり続けたいです」

── 全日本選手権の出場選手のなかで、年齢的には一番上ですか?

「いやいや、自分より先輩が何人も出場しています(笑)。

ただ、北九州に家族で引っ越した今も現役選手をやっていることに対して、スカッシュを始めたばかりの方たちは驚いたりしています。それもモチベーションのひとつになっていますね!」

【思い出はSMAP中居正広とのハイタッチ】

── 選手を続けながらの子育ては、苦労も多いのではないですか?

「子育ては初めてのことなのでわからないことも多々ありますが、夫や家族に支えてもらいながらスカッシュを続けていることが、逆に自信になっています。自分自身も成長し、進化する場所なので、『スカッシュを辞められない!』という思いがありますね」

【あの人は今】スカッシュ松井千夏「美人アスリートと言われるのは、正直ちょっと嫌でした」
スカッシュがまだ世に広く知られていなかった22年前の頃 photo by AFLO
── 松井選手は日本体育大学でスカッシュと出会い、大学卒業後の2001年に当時最年少の24歳で初めて日本一に輝きました。その後、選手として脂が一番乗っている2000年代、さまざまなメディアに出演されていました。

「その当時は『美人アスリートブーム』みたいな流行りがあって、その流れに乗らせてもらった感じです。特に『ジャンクSPORTS』はみんなすごく見ていたみたいで、今でも『ジャンクSPORTSに出ていたよね!』と言われます(笑)。

 ほかにも当時のテレビ番組には、ビーチバレーの浅尾美和さんや卓球の四元奈生美さんとよく一緒に出演させていただいていました。彼女たちのうしろを"金魚のフン"みたいにくっついて一緒に出ていましたね」

── メディアに出演すると大変なことも多かったですか?

「テレビに出る時はマネジメント会社が仲介に入っていたので、たくさん依頼をいただいていました。ただ正直、私はしゃべるのがうまくなかったので、テレビはあんまり得意ではなかったです。でも、『スカッシュを広めることは君にしかできない』という感じに周囲から言われて、私もスカッシュを知ってもらえるきっかけになればと思ってやっていました」

── メディアへの露出で印象深かったことは?

「スカッシュ以外のいろんなアスリートの方たちに会えるのは、それはそれで楽しかったです。芸能人の方に会えることもうれしかったですね。でも本番になると、いつもすごく緊張していました(笑)。

 一番覚えていることは、年末のテレビの特番でSMAPの中居正広くんとバドミントンでペアを組んで試合をしたことです! 相手は潮田玲子さんと、その時に彼女とミックスダブルスを組んでいた池田信太郎さん。

最後は私のフレームネットインで勝って、中居くんとハイタッチしたことはいい思い出ですね(笑)」

【スカッシュ人気をオリンピックまでにピークへ】

── それはすごい思い出ですね。ほかにも覚えていますか?

「『KUNOICHI(女性版SASUKE)』のような女子アスリートナンバーワンを決めるスポーツ番組に出るのは好きでした。出演しても、しゃべらなくて済むので。ただひたすら、腕立てと腹筋と背筋を黙々とやればよかったから(笑)。

『スポーツマンNo.1決定戦』では(三色筋肉女子日本一決定戦で)途中まで1位と、けっこういいところまで行ったのですが、最後は総合格闘家の藤井恵さんに抜かれてしまいました。周りはすごく盛り上がりましたね!」

【あの人は今】スカッシュ松井千夏「美人アスリートと言われるのは、正直ちょっと嫌でした」
松井千夏が47歳の今も現役を続けている理由とは? photo by Sano Miki
── そのようなテレビ番組で松井選手を見て、スカッシュを始めた人も多いのでは?

「はい。私が出ているテレビ番組でスカッシュを知ったという人も多くいました。そういうのはやっぱりうれしかったですね」

── 今から思えば、当時「美人アスリート」として取り上げられることについて、どう思っていましたか?

「うーん......やっぱり正直に言うと、ちょっと嫌でしたね。出演者のみなさんはそれぞれの競技やっているから、当然ながらその競技独特の体つきになるじゃないですか。だからテレビに出て腕や足を出すのは嫌でした。バドミントンの潮田さんも抵抗があるって言っていましたね」

── 松井選手は今も現役を続けていますが、今後について聞いていいですか。

「体調を崩してスカッシュをできない時期もありましたが、11月の全日本選手権をターゲットに再び練習を開始しています。

あとは今、住んでいる北九州でスカッシュの認知度を上げていきたいです。自分が競技を続けることでスカッシュをやってみたいと思ってくれる人もいますし、年齢や性別に関係なく、子育てしながらでもできるスポーツだと知ってもらいたいですね」

── 今後も現役を引退するつもりはないと?

「37歳で出場した2014年のアジア大会が終わったあたりから少し(トップレベルを維持することが)厳しくなってきたんですけど、そのあとは一度、気持ち的に整理しました。現役を続けているからこそ、新たな場所で普及活動ができたり、新たな出会いもありますので。

 今の年齢になれば、選手でプレーすることだけがすべてではないと感じています。プレーしながら若い選手を応援できることも、今の自分ができることじゃないかなと。背中で見せられる間は、背中で見せたほうが説得力もあるかな」

── 4年後はスカッシュがロサンゼルス五輪で見ることができます。楽しみですね。

「スカッシュが新しくオリンピックの競技になって、テレビや雑誌で注目されるのはすごく大きいことだと思っています。これからの4年間、そういった(メディアの)力を借りながら、自分も選手として力を高めつつ、スカッシュ人気をオリンピックまでにピークへ持っていきたい。それができれば4年後、みんなで熱い応援ができるんじゃないかなと思っています!」

<了>

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【profile】
松井千夏(まつい・ちなつ)
1977年8月8日生まれ、神奈川県川崎市生まれ。中学時代はバレーボールで神奈川県選抜に選出され、バレーボールの名門・松蔭高校に進学。体育教師を目指して日本体育大学に進学した際、スカッシュと出会う。

全日本学生選手権で団体・個人でタイトルを獲得し、卒業後は全日本スカッシュ選手権で優勝4度(2001年・2004年・2007年・2008年)。現在も現役を続けながらスカッシュの普及活動に尽力している。身長159cm。

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