2024シーズンも熾烈な争いが繰り広げられているJ1リーグ。終盤戦に突入し、優勝争いと同様に気になるのは、残留争いだ。
その"サバイバル戦"を生き残るのはどこか。そして、あえなく力尽きてJ2に降格してしまうのは、どの3チームなのか。Jリーグに精通する識者3人の見解はいかに――。
下降線を描いている鳥栖と磐田は降格の可能性大残留を巡る17位、18位の争いは札幌vs柏
杉山茂樹氏(スポーツライター)
降格候補=サガン鳥栖、ジュビロ磐田、北海道コンサドーレ札幌
次点=柏レイソル
国内1部リーグを20チームで戦っている欧州の3大リーグ、イングランド、スペイン、イタリアの昨季の例を見れば、残留圏内(17位)に留まるハードルが最も高かったのはスペインで勝ち点38。平均は同35だった。
翻(ひるがえ)って今季J1の降格ラインだが、悲観的に見れば勝ち点38。現時点でこの数字を上回っているのは、10位のFC東京までで、降格の可能性は11位の名古屋グランパス(同37)から生じ始める。
それでも、そのラインにあと勝ち点1で届く名古屋に、あと1勝でクリアできる浦和レッズ、アルビレックス新潟も除外すれば、川崎フロンターレ(勝ち点34)、京都サンガF.C.(同34)、柏レイソル(同33)、湘南ベルマーレ(同32)、ジュビロ磐田(同28)、北海道コンサドーレ札幌(同25)、サガン鳥栖(同24)の7チームに絞られる。
直近5試合におけるこの7チームの成績は、いいほうから京都(勝ち点12)、札幌(同10)、川崎(同9)、湘南(同7)、柏(同4)、磐田(同4)、鳥栖(同1)の順になる。鳥栖の勝ち点はわずか1。
鳥栖は難しそうだが、札幌には残留の可能性がある。しかし札幌は、失点も多い。試合内容はひと言で言えば撃ち合い。勢いが勝るか。それ以上に脆さを露呈させるか。最も動向が注目されるチームである。
磐田も下降線を描いている。一時は11位まで順位を上げたが、そこから徐々に後退。
札幌と降格を懸けて争いそうなのが柏と湘南だが、より心配なのは柏だ。ここに来て失速している。湘南も明るい材料は多いわけではないが、何と言ってもこのクラブはしぶとい。降格争いの土壇場で毎度、無類の強さを発揮する。そうした意味で安心感がある。
つまり17位、18位を巡る攻防は、札幌vs柏となる。両者の現在の勝ち点差は8。ただし、柏のほうが残り試合が1試合多い。札幌は追って届かず、と見る。
鳥栖の偉大な歴史にピリオドが打たれるか
状況が一変した札幌は残留が見えてきた
中山 淳氏(サッカージャーナリスト)
降格候補=サガン鳥栖、ジュビロ磐田、湘南ベルマーレ
次点=北海道コンサドーレ札幌
消化試合数にばらつきはあるものの、現段階で降格の可能性を秘めているのは、14位の川崎フロンターレ以下、7チームと見ていいだろう。
そのなかで、最も降格の危機にあるのが最下位のサガン鳥栖になる。鳥栖が最後に勝利を収めたのは7月2日のアルビレックス新潟戦。その後は1分け6敗で7戦未勝利の状態が続いているが、その間には川井健太監督が契約解除という、成績不振による実質的な解任劇もあったうえ、今夏の移籍市場でも主力が大量流出。頼みの綱だったFWマルセロ・ヒアンも負傷により約2カ月の離脱となってしまった。
これだけネガティブな材料がそろうと、さすがにここからの巻き返しは厳しいと言わざるを得ない。2012年以来、13シーズンにわたってJ1に定着し続けてきた地方クラブの偉大な歴史にピリオドが打たれる可能性は高い。
逆に、夏の補強によって状況が一変し、急激に勝ち点を伸ばして最下位を脱出したのが北海道コンサドーレ札幌だ。8連敗を含む9戦未勝利から抜け出した7月20日の浦和レッズ戦がターニングポイントで、その試合から6試合でなんと17ゴールを量産。得点力が急上昇し、目下3連勝の快進撃を見せている。勝ち点3を稼げるチームになったことは大きく、残留が見えてきた。
そうなると、残る2枠に収まりそうなのがジュビロ磐田と湘南ベルマーレか。磐田は夏にMFジョルディ・クルークスを補強したが、まだ目に見える変化は見られず。
一方の湘南は夏場にきて調子を上げているのが好材料だが、他と比べて決め手を欠くうえ、残り試合で残留争いの直接対決が札幌戦しかないのもマイナス材料。チーム最大の得点源、FWルキアンのさらなるゴール量産が残留のカギになりそうだ。
現実的な残留争いの対象は7クラブ
なかでも、鳥栖のJ2初降格は避けられない
浅田真樹氏(スポーツライター)
降格候補=サガン鳥栖、北海道コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田
次点=柏レイソル
残留争いは過去の例から見ても、優勝争い以上に予想が難しく、意外な結末が起こりやすい。それを考えると、11位の名古屋グランパス(勝ち点37)あたりも、まだまだ油断はできない。
とはいえ、現実的な可能性を考えれば、残留争いの対象となるのは、14位の川崎フロンターレ(同34)以下の7クラブと見る。
まずは、20位のサガン鳥栖(同24)だが、かなり厳しい状況にあると言わざるを得ない。
今季開幕当初から下位に低迷していたうえ、夏のマーケットで主力がごっそり移籍。直近のJ1成績にしても、7戦勝利なし(6敗1分け)と、好材料を見つけるのが難しい。残念ながら、クラブ初のJ2降格を味わうことになりそうだ。
対照的に最悪の事態から抜け出しつつあるのが、19位の北海道コンサドーレ札幌(同25)である。
一時は最下位に沈み、もはや降格は不可避かと思われたが、ここに来て調子は上向き。
しかしながら、残留圏内となる17位の湘南ベルマーレ(同32)との勝ち点差は7。残り9節しかないことを考えると、その差は決して小さくない。試合内容は悪くないだけに、このまま降格させてしまうのはもったいないとも感じるが、シーズン前半の"借金"が響いている。
予想が難しいのは、最後の1枠である。
18位のジュビロ磐田(同28)と17位の湘南との勝ち点差は4。さらに16位の柏レイソル(同33)、15位の京都サンガF.C.(同34)も、勝ち点1ずつの差で上回っているにすぎず、混戦の様相を呈している。
最近の成績を比較すると、湘南、京都が上昇傾向にある一方で、磐田、柏は下降傾向にあり、最も苦しい立場にいるのは磐田だろうが、今季の残留争いも最後までもつれそうだ。
そこで気になるのが、14位の川崎である。今季は低迷が続いたまま、明確な復調気配が感じられないまま、ズルズル来てしまった印象を受ける。これからAFCチャンピオンズリーグが始まり、余計な負担が増すことを考えると、まさかの事態もまったくないとは言いきれない。