高木豊が語る新人王争い パ・リーグ編
(セ・リーグ編:高木豊は上位チームを支えるリリーフふたりを有力視>>)
高木豊氏に聞く注目の新人王の有力候補。パ・リーグ編でも注目の選手と、その理由を語ってもらった。
【オリックスのリリーフが筆頭。対抗馬は?】
――高木さんが考える、パ・リーグ新人王の有力候補は?
高木豊(以下:高木) オリックスの古田島成龍(47試合登板、2勝1敗23ホールド、防御率0.84/成績は9月17日時点。以下同)です。ルーキーイヤーからシーズンを通して投げ続け、これだけの数字を残せるのは立派。オリックスはリリーフ陣が軒並み離脱する苦しい状況が続いていましたが、そのなかで存在感を発揮しましたね。
ただ、新人王争いにおいて、中継ぎのピッチャーにはなかなか日の目が当たらず、先発や抑えのほうが注目されやすい傾向があります。昨季も、オリックスの山下舜平大(昨季16試合登板、9勝3敗、防御率1.61)が新人王に選ばれましたが、楽天の中継ぎの渡辺翔太もすばらしい追い上げを見せ、選ばれてもおかしくない成績(昨季51試合登板、8勝3敗25ホールド1セーブ、防御率2.40))でしたからね。
――今季は西武の武内夏暉投手(19試合登板、8勝6敗、防御率2.19)も候補だと思いますが、どう見ていますか?
高木 なかなか援護点をもらえないなかで防御率2点台前半はすばらしいですし、西武がチームとして43勝のなかでよく8勝まで積み上げたなと。ただ、失点が続いて負けが込んでしまっていた期間も少し長かったですし、シーズンを通しての貢献を考えれば、僕は古田島を推したいです。
――古田島投手は強い真っすぐや鋭いシンカーなどいい部分がいろいろあると思いますが、どの部分が魅力ですか?
高木 コントロールがいいですね。腕を真上から振り下ろすので角度がついて打ちにくいでしょうし、ラインを間違えません。やはりコントロールは、ピッチャーの生命線。
あと、日本ハムの金村尚真(27試合登板、6勝5敗6ホールド、防御率2.36)も候補のひとりですね。好投しながらもリリーフが打たれてしまって勝ち星を拾えなかった試合もありますが、基本的に安定しています。援護点が少ないのも気の毒なのですが、それでも白星を先行させているのは立派です。
――今季は中継ぎとしてスタートし、5月から先発に転向しましたね。
高木 中継ぎの評価も加味すると評価が高くなりそうですが、やはり古田島の0点台の防御率のほうがインパクトはあります。あくまで個人的な意見ですが、1番手が古田島、2番手に武内、3番手に金村という感じでしょうか。
【野手は爽籟に期待の選手は多いが......】
――野手はいかがですか?
高木 セ・リーグ同様、野手で新人王を狙えるような成績を残している有資格者は、今季はいません。ソフトバンクの川村友斗(79試合出場、105打数26安打、打率.248、0本塁打、9打点、3盗塁)や、オリックスの大里昂生(42試合出場、131打数29安打、打率.221、2本塁打、7打点、3盗塁)は、センスや伸びしろを感じますが、試合結果につながることが少なく、出場試合数が全然足りません。
やはり100試合ぐらいは出てくれないと......と思いますが、(最近のプロ野球では)ひとつのポジションを複数の選手で回すことが多いのも、出場試合数の少なさの理由かもしれませんね。
――パ・リーグの新人王有資格者のなかで打席数が多いのが、西武の山村崇嘉選手(58試合出場、201打数44安打、打率.219、2本塁打、23打点、1盗塁)ですが、どう見ていますか?
高木 内角のボールをさばくのがなかなかうまいですし、長打力も秘めています。バットコントロールに非凡なものを感じますが、いい時と悪い時のギャップがあるというか、安定して力を発揮できない。
――将来的に、高打率を残せるタイプですか?
高木 バットコントロールがいいので、打率の高いバッターを目指せると思います。ただ、現状では長打を打つことの魅力を捨てきれていない感じがしますね。本質的には「本塁打を狙ったら二塁打どまりだった」ではなく、「二塁打を狙ったら、たまたまスタンドまで届いた」みたいなタイプだと思うんです。
これは、山村に限ったことではありません。たとえば、アマチュア時代に長打を打てていたバッターでも、プロになると打てない選手は多いんです。つまり、自分がプロの世界で生き残るために、どういったタイプのバッターになるべきかを早い段階で見極めて、自分の打撃スタイルを追求して確立していくべきです。
――今季は新人王を狙える野手がいないとのことですが、今後楽しみな選手はほかにいますか?
高木 ソフトバンクの廣瀨隆太(35試合出場、103打数24安打、打率.233、2本塁打、9打点)は、今後に期待できるバッティングを時折見せてくれました。パワーに目がいきがちですが、広角に打てますし、けっこう器用なんです。低めのボールを拾うのもなかなかうまいですね。
ただ、セカンドには牧原大成や三森大貴らがいて、レギュラー争いで彼らに勝てるのか、という話ですよ。高い壁を乗り越えて初めて道が開けていくので。
――いい素質を持っている選手は多そうですね。
高木 そうですね。ただ、いいものを持っていても代えられてしまうのは、いい状態が続かないからです。パフォーマンスを安定して発揮できるようになればレギュラーも近づいてくると思いますが、山村にしろ、廣瀬にしろ、あと1、2年はかかるんじゃないですかね。新人王候補としての評価となると、やはり野手は総じて厳しいでしょう。
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。