里崎智也×五十嵐亮太スペシャル対談 中編

ロッテ・佐々木朗希について

(前編:立浪和義が中日でやりたかった野球とはなんだったのか?>>)

 里崎智也氏と五十嵐亮太氏による対談の中編。将来的にメジャーリーグへの移籍も噂されているロッテ・佐々木朗希について意見を交わしてもらった。

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■プロ5年目の佐々木をどう評価する?

――メジャーリーグ行きを熱望しているロッテの佐々木投手ですが、これまでの育成方法や、今シーズンの評価、そして今後のアメリカ行きについて伺いたいと思います。まず、今シーズンの佐々木投手について、おふたりはどのようにご覧になっていますか?

五十嵐 本人もチームとしても、今年はある程度、「年間を通してしっかり戦っていく」という考えのもと、しっかりと段階を踏んだプロセスでやってきたと思うんです。それにもかかわらずケガをしてしまって、思うようにいっていないことに対しては、個人的には「ちょっと物足りないな」とも思います。ただ、何事も思いどおりにいくわけではないし、ハッキリと「いい」「悪い」ということでもない。「特によくもなく、悪くもない」という印象ですね。

里崎 「痛いので投げられません」「そうか、じゃあ無理だね」。そんな印象です。(8月1日に約2カ月ぶりの)復帰後は投げ続けているけど、佐々木が「痛い」と言って投げられないんだったら、それ以上でも以下でもないんじゃないですか。

五十嵐 速いボールを投げるピッチャーは、いくら万全のケアをして慎重に取り組んでも、ケガをするリスクは高い。そうならないために、球団としては1年目、2年目、3年目とすごく慎重にやってきました。じゃあ、その育成方法は間違っていたのか。ロッテも過去のいろんなデータを検討したはずです。「高校生の時にどれぐらい投げたのか」「じゃあ、1年目はちょっと抑えましょう。

2年目はこうしましょう」と、慎重に取り組んできた。結果的に今年は故障してしまったけど、そこまで悲観的になることはないんじゃないかな。

里崎 僕の答えは簡単。本人と球団がこの5年目となる今年まで「どんなイメージで進んできましたか?」ってこと。すべてのプロセスは、結果からの逆算でしか評価されない。「結果を出した選手のプロセス」が評価されるわけであって、結果を見ない「プロセス」なんて1ミリも評価の対象にはならないです。勝者だけが、そのプロセスを後づけで語ることができるわけだから。

五十嵐 そうなると、結果が出ていない以上......。

里崎 年間を通じてローテーションを守ることができていないわけだけど、本人も球団も「いやいや、今年もローテーション守るためのプランではありません」と言うのならOK。でも、今の状態が思い描いた結果じゃないんだったら、「そのプロセスは全部間違っていますね」というのが僕の考えです。

五十嵐 とはいっても、プロ5年目を迎えて「まだローテーションを守らなくてもいい」というプランだったとは考えにくいから、その結果が出ていない以上、「プロセスは間違っていた」と言わざるを得ないのかもしれないですね。

里崎 そうとしか言われないと思いますね。

世の中、結果より大事なものはないから。プロセスを評価してくれるのは学生まで。一般の会社でも、「100件も営業行って1件も契約を取れなかったけど、お前はよく頑張ったよ」なんて評価されるとは聞いたことないです。それだったら、1件しか営業しなくても、それで100億の契約を取ってくるほうがいいわけじゃないですか。

■佐々木はアメリカで通用するのか?

――本人の希望なのか、周囲の思惑なのかはわからないですけど、かなりアメリカ行きを焦っている印象もあります。

五十嵐 行きたい人は、早く行ったほうがいいですよ。でも、日本ではポスティングシステムがあるから、ロッテが「ダメだ」と言えば「ダメでした」で終わり。それだけの話ですよね。本人もメジャーに行くためにいろいろやってきたと思うんですけど、それは球団がOKするかしないかの問題。ルールがあるのに、そこで揉めるのがちょっと僕にはわからない。

里崎 報道によれば、「少しでも早く行きたい」「マイナー契約でもいいから行きたい」という思いを持っているようだけど、その前にきちんと手順を踏む必要があるからね。

――先の話になりますが、彼のピッチングスタイルはメジャーで通用するのか、という点に関してはどうお考えですか?

五十嵐 現在のスタイルを見ていると、一年を通してまともにやっていくのは、普通に考えたら難しいですよね。

日本でも、登板間隔を空けてもケガをしてしまって、年間を通じてローテーションを守ることができていないわけですから。でも、メジャーに行ったらほかの投手のように中4日で常に回し続ける起用はされないと思うので、首脳陣の気遣いがあって、コンディションさえよければ10勝くらいはできるんじゃないかな?

里崎 なかなか「通用する」とは言いづらいです。これまでのところは、ただ夢や希望を語っているだけ。実績を残せていないので、まずはできるということを見せないといけない。年間を通じてローテーションをきちんと守って、サイボーグのようにずっと同じピッチングができるのか。それを見てもないから、わかんないですよ。

五十嵐 ただ、彼の強みは真っ直ぐとフォークボール、この2つの球種が強いということ。そして真っ直ぐのスピン量も多い。真っ直ぐのスピン量が多いとなると、カブスで活躍している今永昇太のように、高めで空振りやファウルが取れる。あとは低めのフォークボールをどれだけ振らせることができるかだと思います。そうすれば、今永くらいの成績は残せるんじゃないかと思います。

里崎 そうなると、アメリカに行くとしてもマイナー契約からになるよね。

だって、チームは13人しかピッチャーが登録できないのに、10日に1回しか投げられない日本人ピッチャーをひとり入れるって、生産性がないから。

五十嵐 でも、アメリカはビジネス面も含めて考えるから、日本から佐々木くらいの注目選手が行ったら、メジャー登録して置いておくだけでも、広告費やグッズ売り上げなどある程度のお金が発生するはず。そう考えたら、メジャー契約の可能性もあると思いますけどね。

里崎 そうなると、現実的にほかのピッチャーをどう回すんだろう? 13人で回さなきゃいけなくて、先発は何人で、リリーフは何人で、ほかの先発ピッチャー全員を中4日で回して、佐々木だけ中10日で回す。それが本当に可能なのか、僕にはリアリティがあるとは思えないんだけどな。

五十嵐 どんな契約になるのか、そもそもどのタイミングでアメリカに行くのかは不透明だけど、まずは日本でキッチリと実績を残して、それから後悔のないように挑戦してほしい。それが率直な思いです。

里崎 彼の去就については、いろいろな報道があって、さまざまな噂が流れているけど、実際のところは外部からはわからない。それでも大枠だけでいうと、ポスティングは球団の権利。だから選手側はお願いならできるけど、その決定に異を唱えることはできない。一方で、FAは選手の権利。ポスティングなのかFAなのか、どんな方法で行くのかはまだわからないし、今はただ静観するだけ。

それが僕の現時点での考えです。

(後編:低迷した西武をどう見た? 主力のFA移籍と補強問題、今後の再建計画を語り合った>>)

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