攝津正インタビュー 後編
ソフトバンク視点CS展望
(前編:ケガ人続出でCSはピンチ? 柳田悠岐や近藤健介など、OB攝津正がチームの状態を分析>>)
リーグ優勝を果たし、次はクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージの戦いを控えるソフトバンク。2012年には沢村賞をはじめとする数々のタイトルを獲得したOBの攝津正氏に、対戦相手別の見解を聞いた。
【エース2人が苦手な日本ハム】
――前編で、先発の軸である有原航平投手(対日本ハムの防御率4.11/9月30日時点、以下同)とリバン・モイネロ投手(同4.80)が日本ハムと相性が悪いという話が出ましたが、チームとしても今季は7連敗を喫しています。
攝津正(以下:攝津) 苦手意識があるわけではないと思うのですが、単純に日本ハムが強いですよね。それと、若い選手が多いこともあって勢いを感じます。日本ハムがファーストステージを勝ち上がってくるかはわかりませんが、非常に手強い相手であることは間違いないです。
――日本ハムで警戒すべきバッターを挙げるとすれば?
攝津 やっぱり万波中正じゃないですか。ソフトバンク戦でけっこう打っていますよね(ソフトバンク戦の打率.268、出塁率.340)。あとは、覚醒した感のある清宮幸太郎(ソフトバンク戦の打率.277、出塁率.404)です。この2人が打つとチームが勢いづきます。日本ハムは一発があるバッターが多いですし、たまに出てくる淺間大基や石井一成にも打たれたり、多くのバッターに痛打されている印象があります。長打を打たれて一気に試合をひっくり返されたりしているので、長打に要警戒ですね。
――日本ハムのピッチャーはいかがですか?
攝津 山﨑福也や加藤貴之も、打ててないわけではありません。先発に関してはそれほど苦手意識があるピッチャーはいないと思うので、やはり日本ハムが相手の場合は、いかにソフトバンクのピッチャーが日本ハムの強力打線を抑えるかがカギになるでしょう。
――先発が早いイニングで崩れた場合の第2先発も重要そうですね。
攝津 その役割を考えた時、現状で面白そうなのが杉山一樹です。状態がいいですし、ピッチングに安定感が出てきたので。2イニングぐらいであれば投げられますしね。それと、ルーキーの岩井俊介と大山凌、7年目の尾形崇斗ら若いピッチャーの状態がけっこういい。先発が早いイニングで打ち込まれた場合、試合を立て直していくためのピッチャーの駒は揃ってきた感じがします。
【「嫌」なのはロッテより楽天だったが......】
――まだ3位は確定していませんが、仮にロッテがファイナルステージまで勝ち上がってきた場合の見解を聞かせてください。
攝津 今季の対戦成績(15勝8敗1分け)にも表われていますが、ロッテに対しては嫌なイメージがないんじゃないですか。一方的な試合で勝つことも多いですし、今季に関しては相性のよさを感じます。
――警戒すべきバッターは?
攝津 グレゴリー・ポランコです。ネフタリ・ソトも要警戒なのですが、どちらかといえばポランコにやられている印象があります。なので、両外国人選手の前に走者を出さないことが重要です。それと、藤原恭大(対ソフトバンク戦打率.314、出塁率.419)に打たれている印象で、足もある選手なので塁に出したくないですね。
対ピッチャーでは小島和哉や西野勇士、種市篤暉から打てていますし、苦労しそうなのは佐々木朗希かなと。状態がいい時だと、そう簡単には打てませんから。
―― 一方、ロッテとゲーム差4とかなり厳しくはなりましたが、楽天がCSに進出して勝ち上がってきた場合はいかがでしょうか?
攝津 楽天にも大きく勝ち越しているのですが(15勝9敗)、ロッテより嫌な印象があります。対戦成績だけ見ると分がいいように見えますけど、試合の内容を見ているとラクに勝てている試合はあまりないですから。
ソフトバンクに対して相性がいい選手が多いような気もします。特に辰己涼介にはかなり打たれているので(対ソフトバンク戦打率.398、出塁率.435)、その前に走者を出さないこと。ですが、3番・辰己の前の1、2番を打つ小郷裕哉、小深田大翔、村林一輝などにも嫌なイメージがあります。彼らは足も使えますからね。
それと、4番を打つことが多い浅村栄斗は比較的抑えているのですが、彼も短期決戦では集中力を発揮して固め打ちをすることがありますし、注意しなければいけません。
――楽天のピッチャー陣はどう見ていますか?
攝津 シーズンを通して見れば打てていないことはないのですが、直近の試合では抑え込まれることが散見されます。たとえば、早川隆久には8月20日の試合で6回無失点、翌日には内星龍からも6回1/3で1点しか取れていません。瀧中瞭太にも9月21日の試合で7回1失点に抑えられているので、ハマってしまった場合は怖い感じがします。
ルーキーの古謝樹にも、直近の試合(9月10日)では4点取って攻略できましたが、それまでは抑えられていました。ソフトバンクは左バッターが多いので、早川、藤井、古謝と左ピッチャーの先発が揃っているのも嫌だっただけに......ロッテとの直接対決も含めて4連敗は痛すぎましたね。
――ただ、ファーストステージで登板した先発投手は、登板間隔を考えるとファイナルステージで投げられません。1勝のアドバンテージに加え、このことも大きなアドバンテージです。
攝津 そうですね。ファーストステージでエース級のピッチャーを登板させる可能性が高いでしょうし、そうなればファイナルステージの最初のほうの試合では投げられませんからね。先ほど(前編で)もお話しましたが、短期決戦は状態のいい選手の見極め、データに頼りすぎないことが大切です。シーズンとはまったく異なる戦いになるので、いま一度気を引き締めて頑張ってもらいたいです。
【プロフィール】
攝津正(せっつ・ただし)
1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後に入社したJR東日本東北では、7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。