高木豊が考察する今オフのFA
山川穂高(西武→ソフトバンク)や山﨑福也(オリックス→日本ハム)らがFA権を行使した昨オフに続き、今オフも各球団の主力級の選手がFA権を取得。実力者の移籍はチームの順位に影響を及ぼすことも多く、その動向から目が離せない。
かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏に、まずはセ・リーグのFA動向に対する見解を聞いた。
【DeNA・佐野、巨人・大城に適した球団は?】
――まずセ・リーグからお聞きします。FA権を取得したなかで、注目している選手はいますか?
高木豊(以下:高木) DeNAの佐野恵太です。仮にFA権を行使するとすれば、打てないチームは欲しいでしょうね。特に広島は、今季「打てないとやはり勝てない」ということを痛感したと思いますし、打てるバッターを揃えたいはずです。
それと広島は、佐野が守れるファーストとレフトのポジションが不安定ですし、補強ポイントにハマりそうです。ただ、そうなると左バッターがまた多くなるので、そのあたりが懸念点ではありますが......。でも、佐野はDeNAから出ないと思いますけどね。結局は契約の条件次第でしょう。DeNAは度会隆輝を育てていかなければいけませんし、3年目の梶原昂希が台頭してきました。外野手が多いなかで、どのぐらいの契約を勝ち取れるかですね。
――巨人の大城卓三選手はいかがですか? 今季は96試合(昨季は134試合)の出場にとどまり、打撃成績も低下してしまいました。
高木 大城がFA権を行使すれば、の話ですが、阪神などはいいと思います。
それと、梅野隆太郎と坂本誠志郎は今季ホームランを打っていません。キャッチャーがホームランを打っていないというのは、12球団で阪神が唯一なんです。そういった打撃の状況を考えると、よりいっそう大城の存在価値が高まるかなと。
ソフトバンクでも面白いかもしれません。正捕手に甲斐拓也、今季51試合に出場した海野隆司もいますが、やはりキャッチャーの打撃面がウイークポイントなので。
【阪神の大山が欲しい球団、残ったほうがいい選手は?】
――大山選手の年俸は推定2億8000万円のAランクですが、やはり魅力がある?
高木 手を挙げた場合は複数の球団が動くと思います。たとえば西武。西武がFA権を行使した選手を獲りにいく例は少ないですが、打線に核がいない現状を考えれば、興味のある選手だと思います。大山はファースト、サードに加えて外野も守れますが、ファーストやサードのレギュラーを確立できていないチームは多いですから。
――阪神は糸原健斗選手や原口文仁選手もFA権を取得しています。
高木 糸原はほとんど守備についていませんからね。バッティングはしぶとさがありますが、長打力に欠けます。代打で長打がある、ホームランもあるとなれば、獲得を考える球団も出てくると思いますが、ほとんどが単打なので。代打で常に3割は打つというのであれば話はちょっと変わってきますが、そういうわけでもありません。なので、仮に糸原が手を挙げても、他球団は獲得に躊躇してしまうのではないでしょうか。
一方で原口は、出場機会を強く求めるのであればFA権の行使を検討すると思いますが、年齢(32歳)がネックになるかもしれません。
――巨人の高梨雄平投手もFA権を取得。今季は51試合登板、4勝3敗25ホールド、防御率2.04の好成績を残し、巨人のリーグ優勝に大きく貢献しました。4年連続50試合以上に登板し、巨人のブルペンには欠かせない存在ですね。
高木 高梨のように瞬発力で仕事をしなければいけない選手は、仮に球団が変わったとして、出だしでポンポン打たれてしまうと印象が悪くなりますし、立場がきつくなりますよね。そう考えると、実績と信頼を積み上げてきた巨人に残るのがベストだと思います。高梨も動く気はないと思いますけどね。
先発はある程度重宝してくれて、抑えも大事にしてくれるけど、中継ぎは"使い捨て"にされたり評価されにくい、ということを、高梨は賢い選手だと思うので理解していると思うんです。それと、中継ぎは登板過多で肩やヒジを酷使して短命に終わってしまう選手も多いじゃないですか。なので、ここまでやってきた巨人で続けたほうが賢明だと思います。
――中日では、木下拓哉選手や福谷浩司選手がFA権を取得しました。
高木 木下は守備面が弱いので、他球団も評価するのが難しいんじゃないかなと。その一方で打つかといえば、あまり打てませんしね。少し前は"打てるキャッチャー"として評価が高かったと思いますが、打てなくなってしまい、それに伴って守備面も衰退してしまった印象です。中日で奮起するのがいいような気がします。
福谷はシーズンを通して先発ローテーションを守れるかが疑問です。ただ、変化球は多彩ですし、真っすぐにも力がある。先発もリリーフも経験があるベテランですし、Cランクで年俸も高くないと考えれば、獲得に動く球団も出てきそうです。
(パ・リーグ編:「Cランク」でも注目の投手、ソフトバンク甲斐拓也などはどうなる?>>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。