10月12日に幕を開けるクライマックスシリーズ(CS)。セ・リーグのファイナルステージで巨人と相まみえるのは、阪神とDeNAのどちらになるか。
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【阪神はピッチャー、DeNAはバッターが強力】
――篠塚さんは、巨人のコーチ時代にクライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズ、第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にもコーチとして参加されていますが、短期決戦に挑む上でのポイントは?
篠塚和典(以下:篠塚) 首脳陣が気にしているのは、選手の状態です。シーズンが終わってからCSまで、期間が空くじゃないですか。なので、選手個々がいい状態で臨めるかどうかが一番心配なんです。特に巨人はファイナルステージまで実戦間隔が空きますしね(現在はフェニックスリーグで調整中)。
あとは、やはりピッチャー。回を追うごとに「いけるぞ」というような気持ちを抱かせてくれるようなピッチングをしてくれないと、試合を優位に進められません。短期決戦は少しのことで流れを持っていかれるので、いかにピッチャーが踏ん張れるかも重要です。
――巨人がファイナルステージで対戦することも踏まえ、まず今季の阪神の印象はいかがですか?篠塚 昨季のチャンピオンチームということもありますし、ピッチャーをはじめ選手たちが本来の力を発揮できていれば、今季もすんなり優勝できていた可能性はあったと思います。やはり強いチームなので、ファーストステージで選手個々の力がいい具合に結集してきたら、脅威です。
やはり、ピッチャー陣が強力。短期決戦ではどんどん起用していけますし、継投がハマったら打つのに苦労するでしょうね。
―― 一方のDeNAは打線が強力です。首位打者にも輝いた特タイラー・オースティン選手はシーズン終盤に状態を上げてきました。
篠塚 シーズンの最後をいいイメージで終われましたから、怖いですね。オースティンに限らず、シーズンでいい成績を残した選手は気持ちが充実していることもあって、短期決戦で乗ってきたりするので要警戒です。逆に、シーズン中はよくなかった選手が調子を上げてくることもあるので、注意しなければいけません。これは阪神でもDeNAでも同じことが言えます。
――巨人はDeNAには大きく勝ち越しましたが(16勝8敗1分け)、やはり短期決戦は別物?
篠塚 そうですね。勝ち越しているからといって安心はできませんし、ちょっとのミスも許されません。ミスが尾を引くと流れが変わってしまうので。取れるアウトをしっかり取るなど、しっかりとした野球をやって流れを掴むこと。それを渡さないことが重要です。
【阪神、DeNA、待ち受ける巨人のキーマンは?】
――阪神、DeNAでそれぞれカギを握る選手を挙げるとすれば?
篠塚 阪神は佐藤輝明です。彼は波がある選手ですが、ファーストステージを戦う時にどういう状態なのか。
DeNAはオースティンもいますが、やはり牧秀悟です。主軸が乗るとチームは乗っていきますし、特に牧はムードメーカーですから。
――ピッチャーはいかがですか?
篠塚 ピッチャーだと、初戦に先発することが予想される両エース(阪神・才木浩人、DeNA・東克樹)です。彼らにいいピッチングをされると、野手とすれば「これは打てない、やばいな」と思わされ、気持ちが下がっていってしまうケースがある。よく「エースで打たれたら仕方がない」と言われたりしますが、短期決戦はそういう試合ではないんです。エースがエースらしいピッチングを見せなければいけないし、彼らもそれはわかっているはずです。
――巨人のバッター陣のキーマンは?
篠塚 岡本和真です。どこのチームでも同じことが言えるのですが、やはり1、2、3番が出ていい形で4番の岡本につなげるかどうか。岡本がホームランを打っても、走者がいなければそれほど勢いはつきませんが、走者がある程度いた上の一発は勢いがつきますし、相手に与えるダメージも大きいですから。
1番を丸佳浩でいくのか、2番に状態がいい吉川尚輝を入れるのか、3番に誰を置くのか。
――ピッチャー陣ではいかがですか?
篠塚 (ファイナルステージの)初戦での登板が予想されている、戸郷翔征でしょう。ファイナルステージでいくら1勝のアドバンテージがあるといっても、やはり初戦はすごく大事ですし、しっかり取りたいところ。彼の場合は調子がいい時と悪い時がはっきりしてしまうので、本来のピッチングができるかどうかですね。
――第2戦に予想されている、菅野智之投手が控えていることも大きいですね。
篠塚 そうですね。菅野は勝ちが計算できますし、その後には今季ひと皮むけた井上温大もいます。今季は先発だけでなく、中継ぎ、抑えもしっかりしていますし、巨人が少し有利かなという感じはします。上がってくるチームは、ファーストステージでピッチャーを使ってしまいますから。
【巨人の浅野もキーマンに?】
――短期決戦における阿部慎之助監督の采配も注目されますね。
篠塚 でも、シーズン中とそれほど変えることはないと思います。
――今季ブレイクの兆しを見せている浅野翔吾の起用も十分に考えられます。
篠塚 状態がよければ使っていくでしょうね。今季は昨季と比べてバッティングが進化しています。最初の頃は見逃しの三振が多かったですし、どうしても長打を打とうという気持ちが前に出ていたのか常に"マン振り"していましたが、今季はある程度解消されました。
下半身と上半身をうまく連動させ、腕の力を抜きながらバッティングができています。今まではある程度プルヒッターのような印象でしたが、今季はミート中心に逆方向への打球も増えましたね。
――CSでもキーマンになり得る?
篠塚 彼が打ったときは、ベンチも盛り上がっていますしね。そういう点も踏まえて、阿部監督の頭のなかにも浅野を起用するイメージはあると思いますよ。
――阪神とDeNA、どちらが勝ち上がってくると予想されますか?
篠塚 難しいですね......。状態が整っているチーム、ミスをしないチームが勝ち上がってくると思います。
それは冗談として、やはりファーストステージを甲子園で戦える地の利がありますし、去年のチャンピオンチームですから。波に乗ればそのままいく可能性が十分にありますし、シーズン2位、3位のチームが日本一になるケースもあります。阪神とのシーズンの対戦成績は互角(12勝12敗1分け)でしたし、2チームの戦いになると面白くなるんじゃないですか。
【プロフィール】
篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。