10月5日に行なわれたJ2第34節。ジェフユナイテッド千葉はザスパ群馬をホームに迎え、1-0と勝利した。
すでにJ3降格が決まっている最下位の群馬に対し、J1自動昇格の夢こそついえたものの、第34節終了時点で4位につけ、プレーオフからの昇格の可能性を十分に残している千葉。お互いの立場を考えれば、この結果は妥当なものと言えるのかもしれない。
とはいえ、千葉を率いる小林慶行監督の言葉を借りれば、「内容としては、すごくいいというわけではなかった」試合である。
指揮官の言葉どおり、千葉の選手たちにはイージーなパスミスが目立ち、中盤での危ういボールロストも少なくなかった。
しかし、だからこそ、チームの成長を示す価値ある勝利だったとも言える。
小林監督は「自分たちのリズムで戦えない時に、どれだけ粘り強く戦うことができるか。(今季の)前半戦はそれがまったくできずに数多くの試合を落としてきた」と言い、こう続ける。
「ここ2試合はそういう時間が長くなったが、最後の最後で相手にやらせなかったとか、粘り強さとか、そういう部分では少しずつ選手がたくましくなっていると感じる」
この試合に関して、とりわけ小林監督が選手を称えたのには、別の理由もある。「いつもならない判断の遅さに疲労を感じる。頭がついていってない」と振り返ったように、選手たちのプレーから明らかな疲労の蓄積を見て取ったからだ。
今季の千葉は、J2と並行して行なわれている天皇杯でベスト8進出。それ自体、誇るべき成果ではあったが、その結果、残暑厳しい9月のリーグ戦の最中に、準々決勝を戦わなければならなくなった。
小林監督曰く、「天皇杯(の試合)が入ったことで(過密日程になって)張り詰めた状態が続いていた」うえに、京都サンガF.C.に0-3と敗れた準々決勝は、「たかが1試合でも、あの京都戦は相当パワーを使い、ダメージを受けた敗戦だった」という。
しかも、「そこから立ち上がるのは、またパワーを使う」と小林監督。天皇杯で敗退したあと、リーグ戦では3連勝を続ける選手たちを指揮官が称えたゆえんである。
と同時に、緊張状態をどうにか乗りきったチームにあっては、その間に目覚ましい活躍を見せた選手の存在も見逃すわけにはいかない。
「数少ないチャンスを決めきってくれるエースストライカーがいるのは大きい」
小林監督もそう言って信頼を寄せる点取り屋こそ、大卒2年目の24歳、小森飛絢(ひいろ)である。
今季から背番号10を託された新鋭FWは現在、22ゴールでJ2得点ランキングの首位を独走(第34節終了時点)。ルーキーシーズンだった昨季、すでに13ゴールを記録し、注目を集める存在となっていたが、今季は2年目のジンクスに悩まされるどころか、得点数を倍増させようかという勢いを見せている。特に第28節ベガルタ仙台戦からの7試合では、計12ゴールを量産。第32節レノファ山口FC戦でのハットトリックをはじめ、うち5試合が複数得点という無双状態にある。
その12ゴールの内訳を見ても、右足6、左足4、ヘディング2と、得点感覚に優れたストライカーらしく、ひとたびゴールのにおいを嗅ぎつけてしまえば、形は問わない。
裏を返せば、絶対的な武器を持っているわけではないとも言えるが、高さ、スピード、技術とどれをとっても欠点は見当たらない、オールラウンドなFWである。
「前節(第33節)の愛媛FC戦も自分たちのミスが多くて、嫌な流れになったし、今日(群馬戦)も本当にミスが多くて、そういうことが2試合続いたので、しっかり改善していかないといけないし、その嫌な流れのなかで自分がしっかり前で起点を作って、チームを助けられるポストプレーがもっともっとできればいい」
自ら決勝点を決めた群馬戦後も、そんな言葉で反省を口にしていた小森だが、悪い流れのなかでも決して攻め急いだり、苛立ったりすることなく、落ちついてボールを収め、時間を作る様子を見ていると、好調ゆえの余裕はもちろんこと、風格すら感じさせる。
自身へのマークが特段厳しくなったとは感じていないという小森は、「自分の調子のよさもあって、しっかり味方も見えているし、落ちついて焦らずプレーできている」。
これだけ点を取っていれば日々の練習から気分よく過ごせるのではないかと尋ねると、「(気持ちは)全然違う」と言って笑顔を見せた。
すでにJ1自動昇格の可能性がなくなった現在、「自分たちは優勝を目標にやっていた」という小森に、まったくショックがないわけではないだろう。
しかし、小森は「その次のJ1昇格という目標はまだ途絶えていない」とキッパリ。「そこをしっかり達成できるように、残りの試合を全力でJ1昇格に向けてやっていければいいなと思う」と、力強く語る。
長いシーズンを戦うなかでたくましさを増したチームと、覚醒の時を迎えたストライカー。2009年以来となるJ1復帰を目指す千葉は、プレーオフを勝ち上がる準備を整えつつある。