3歳牡馬クラシック三冠の最終戦、GI菊花賞(京都・芝3000m)が10月20日に行なわれる。

 ほとんどの出走馬にとって、初の3000m戦となるタフな一戦。

それゆえ、実力馬が力どおりの結果を出すことが多く、過去10年で1番人気は3勝、3着3回とまずまずの成績を残している。

 となると、今年は出走メンバー唯一のGI馬であるダノンデサイル(牡3歳)で"決まり"といった感があるが、同馬は今回、GI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)以来のぶっつけ本番、というのが不安視されている。

 昨年もダービー馬のタスティエーラが同じ臨戦過程で2着になったものの、それを除くと、グレード制導入(1984年)以降で、ダービー以来の出走で好走した例はない。ほか、異例なものとしては、1987年に皐月賞(1着)以来のぶっつけで制したサクラスターオーがいる程度だ。

 そうした状況も鑑みつつ、デイリー馬三郎の吉田順一記者は「ダノンデサイルのダービー制覇は、絶好馬場だった東京・芝2400mの舞台において、3枠5番という好枠を最大限生かして経済コースをうまく走れたことが勝因でしょう」と言って、最有力馬の実力には半信半疑。さらに、ほかの有力候補にも懐疑的な目を向ける。

「GIIセントライト記念(9月16日/中山・芝2200m)を快勝したアーバンシック(牡3歳)は、同レースではこれまでにない立ち回りを見せましたが、同馬も開幕2週目の良好な馬場にあって、最内枠発走で出遅れをリカバーできたことが大きかったです。

 同レース2着のコスモキュランダ(牡3歳)も長くいい脚を使えますが、その前走のように出遅れて道中で脚を使ってしまうと、今の京都では決め脚に少し不安を感じます。いずれにしても、正攻法の横綱相撲での競馬で勝てるような存在は見当たらず、混戦ムードであることは間違いないでしょう」

 混戦のなか、激走が期待できる馬を見分けるには「今の馬場状態がひとつのカギになる」と吉田記者は分析する。

「暮れまで続くロングラン開催の京都競馬。開催2週は4日間とも芝は良馬場で施行され、基本的にトラックバイアスは内と前が強く、時計も速かったです。先週のGI秋華賞(芝2000m)でも1分57秒1と、レコードにコンマ2秒差という好時計が記録されました。

3~4コーナーにかけて少し芝が飛ぶ程度で、根っこがしっかりしており、反発力のある馬場となっています。

 今年の厳寒期に施行された時には良馬場でも芝の塊が飛んで、グランドオープンしてからまだ2年弱の京都の馬場は、馬に踏み固められていない、路盤が緩い印象がありました。そこから、春から初夏の開催を経て、この秋には急激によくなったように思います。

 その要因は、JRAが開発したエクイターフ(根っこが多く、クッション性が高い芝)以上に根が張る芝を使用していることも挙げられます。とにかく、そうした良好な馬場状態にあって、今週も前と内が優位に運べる舞台と見たほうがいいいでしょう」

 そこで、吉田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。

「まず狙いたいのは、エコロヴァルツ(牡3歳)です。逃げるメイショウタバル(牡3歳)もノーチャンスではないのですが、実績からしてやはり道悪でこその馬。エコロヴァルツはそのメイショウタバルが作るペースを、前づけ(理想は離れた2番手)の競馬で運べると踏んでいます。

【競馬予想】菊花賞は「荒れる」穴党記者は異なる展開によって浮...の画像はこちら >>
 2歳時のGI朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)では後方から追い込んで2着に入りましたが、好発走から好位を確保しようとしたところで大きな不利を受けて、最後方に下がってしまってのこと。GI皐月賞(7着。4月14日/中山・芝2000m)もスタートのタイミングが少し合わず、内、外から狭められて後ろからの競馬になってしまいました。

 それら以外は、抜群のスタートセンスを見せており、好位から結果を出してきました。

道中、折り合いに苦労しない点も魅力です。

 以前は華奢な面が見られた馬体も、ひと夏越して上下、左右のバランスが良化。中・長距離を走れるシルエットになってきました。今回の馬場とメンバーであれば、勝負どころでのプレッシャーもキツくないでしょうし、先行、あるいは好位からの絶妙な抜け出しを期待したいです」

 吉田記者が注目するもう1頭は、ショウナンラプンタ(牡3歳)だ。

「基本は前に行く馬に注意を払いたいのですが、人気の有力馬たちが時計の出る馬場を意識して3コーナーの坂の下りから一気に仕掛けていくようなら、それらの動きを見てワンテンポ仕掛けを遅らせて動ける馬も気になるところ。そこで、目についたのが決め手のある同馬です。

 もともと折り合いに課題のあった馬ですが、控える形を身につけてから、好結果を出せるようになってきました。馬体全体のバランスもグッとよくなって、胴長+脚長といった中・長距離仕様に変貌。有力馬を見ながらの追い比べで、最後の最後に上位争いに加わってくるのではないか、と見ています」

 今年の3歳牡馬クラシックはここまで波乱傾向。はたして、最後の一冠はどうなるのか。再び伏兵馬の台頭があるなら、ここに挙げた2頭に注目である。

編集部おすすめ