山本昌スカウティングレポート2024ドラフト直前~右投手編
ドラフト会議を直前に控え、アマチュア野球にも興味津々の山本昌(元中日)が"レジェンド解説"を敢行。左投手編に続き、ドラフト上位候補の右投手6人を分析してもらった。
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中村優斗(愛知工業大/176cm・81kg/右投左打)即戦力右腕としては、中村くんが抜けていると感じます。最速159キロとスピードが出ることが知られていますが、私は彼の最大の魅力は変化球にあると見ています。鋭く変化するスライダーをはじめ、どの球種でも空振りを奪える。右腕が上から出てきて、縦変化に勢いがあります。この軌道はプロでも武器になるでしょう。フォームは軸足が折れるのが早く感じますが、トップまでに右肩が高い位置に戻っているので問題ありません。大学の4年間で体幹を強くしたからこそ、このような体の使い方ができるのでしょうね。プロでは先発もできるでしょうが、リリーフならセットアッパーやクローザーとしてすぐ活躍できると思います。
とても面白い素材ですね。ただ長身というだけでなく、高い位置でフォームをつくれる点に魅力を感じます。左足を上げた時にグラブが高い位置にあって、ボールをリリースする位置も高い。バッターは高めのボール球でも、角度があるのでストライクに見えるから振ってしまうんです。
二刀流としてドラフト上位候補に挙がっているようですが、投手としての高い資質を感じます。マウンドでの立ち姿、体重移動、腕の振りと申し分なし。とくに腕の振りはトップに入る寸前にひとつ間(ま)をつくれるのがすばらしい。一瞬、肩甲骨を開いて、右腕をムチのようにしならせる使い方ができる。ストレートが走るのもうなずけます。高校生ですが完成度が高く、比較的早く一軍に上がってきそうな予感がします。課題らしい課題は見当たらないのですが、強いて言えば悪い時は右肩が上がりきる前にボールを離しています。右肩をしっかり回しきってからリリースできれば、安定感がさらに増しそうです。
ひと目見て、「いい投手だな」という第一印象を受けました。
彼が星稜高の1年生だった6年前に、夏の甲子園での投球を見させてもらいました。当時は「1年生の時点でこれだけ投げられれば言うことはありません」と高く評価させてもらっています。その後、右肩痛で約3年間も投げられない時期があったと聞きましたが、日本体育大の辻孟彦コーチ(元中日)のサポートもあって復活できたのはよかったです。投球フォームはバランスがよく、まとまっている点が印象的です。しっかりと軸足で立って、上から投げ下ろす。
母校の日大藤沢高が練習試合をしたこともあって、木更津総合高時代から見させてもらいました。当時から140キロ台後半のボールを投げていて、すばらしい素材だと感じていました。あれから4年が経って、体もひと回り大きくなってスケール感が増しています。ストレートで押す投球スタイルですが、ボールに伸びがあって、とくに指にかかった球はすばらしい。投げっぷりがよく、プロでも先発として長いイニングを任せたいタイプに見えます。ただ、力むと右肩が上がりきる前に右腕を振ってしまい、シュート回転が強くなる傾向があります。右肩をしっかりと回しきって、ひと間(ま)つくってから投げられると、シュート回転が軽減されるはずです。
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左投手・右投手合わせて13人の投手を見させてもらいましたが、今年は左の好投手が非常に多い印象を受けました。プロ球界は左の強打者が多いので、左投手の需要はますます高まっているはず。今年のドラフト会議では、多くの左投手の名前が呼ばれる予感がします。
13名のなかでも、金丸くん(関西大)と中村くん(愛知工業大)の完成度は突出していました。故障さえなければ、すぐに一軍で活躍できるでしょう。短いイニングであれば、伊原くん(NTT西日本)の能力も面白いです。
ここ数年は大学・社会人に好投手が多いと感じます。現場の指導者の方々が練習法を確立し、選手自身も勉強を欠かさないからこそ、レベルアップしているのでしょうね。今年のドラフト会議ではどんな選手が指名されるのか、私も楽しみにしています。
山本昌(やまもと・まさ)/1965年8月11日、神奈川県生まれ。84年に日大藤沢高からドラフト5位で中日に入団。5年目のアメリカ留学を機に才能が開花。シーズン途中に帰国するとすぐに一軍に定着し無傷の5連勝でリーグ優勝に貢献。その後はチームのエースに成長し、3度の最多勝に輝く。94年に投手最高の栄誉である沢村賞を受賞。