2024年のプロ野球ドラフト会議が10月24日に行なわれる。国学院大の武内夏暉(現、西武)など東都の投手陣が注目された昨年は、東京六大学から4選手が指名を受けた。
■宗山塁 内野手(明治大)
ドラフトの最注目株は、卓越した守備にシャープな打撃を併せ持つ宗山だ。「もし宗山を獲得できたら、10年間はショートのレギュラーに悩むことはないだろう」と言われるほど前評判は高い。すでに宗山の地元、広島がドラフト1位指名を公言しているが、複数球団による熾烈な争奪戦が繰り広げられることになるだろう。
甲子園の常連校である広陵高校を経て、明治大学に進学。選手層の厚いチームのレギュラー争いを制し、1年春のシーズン途中からショートのポジションを掴むと、2年生の春には首位打者を獲得。「どんなバウンドの打球も、簡単に取ってアウトにできることがいい遊撃手の条件だと思う」と話す宗山は、確実な守備にも磨きをかけていった。
主将として臨んだ今年春のシーズンは、右肩甲骨の骨折によりシーズン途中で戦線離脱を強いられ、出場わずか5試合で打率.174、0本塁打、4打点という成績に終わった。チームも優勝も逃したが、「体幹や体力面を強化して臨んだ」という秋のリーグ戦では、「いい打者であるひとつの指標になるので、入学前から目標にしていた」という大学通算100安打を達成。通算では116本安打とし、鳥谷敬を抜いてリーグ歴代8位タイに。打率.391、2本塁打、11打点(10月21日現在)と本調子を取り戻した主将が、運命の時を待つ。
■浅利太門 投手(明治大)
興国高校を経て明治大に進学した浅利は、186㎝の長身から繰り出される角度のあるボールと、「回転数が多く、対戦する打者も(速度以上の)スピードを感じているのではないか」(明治大・田中武宏監督)という最速154kmの速球が武器。
今年春のリーグ戦では先発に挑戦したものの、5試合に登板して1勝1敗、防御率3.21と不完全燃焼に終わり、大学最後のシーズンを前にリリーフに再転向。今季はここまで5試合9回3分の2を投げて14奪三振、防御率1.04と調子を取り戻しつつある。
優勝に向けて後がない早稲田大との2回戦(10月20日)では、同点で迎えた8回に登板し、延長11回途中までの3回3分の2を投げて6奪三振の好投。マウンドで吠える気合いの投球で無失点に抑えた。制球力に課題は残るものの、潜在能力の高さも期待の右腕にはどのような評価が下されるのか。
■篠木健太郎 投手(法政大)
木更津総合高校から法政大に入学した篠木は、最速157kmの速球に加え、スライダー、カットボール、カーブ、フォークなどの多彩な変化球を操る本格派右腕だ。
2年生の春からエースナンバー18を背負い、昨年春のリーグ戦で7試合に登板して3勝2敗。防御率0.68の安定した投球を見せて、最優秀防御率のタイトルを手にした。3年秋のリーグ戦は右肩のコンディション不良で戦線離脱したものの、新たに縦のカットボールを習得した4年春のリーグ戦では8試合に登板して3勝3敗、防御率1.41で復活を印象づけた。
秋のリーグ戦では、得意な打撃を活かすために投手ながら7、8番での起用が続いており、立教大との3回戦(9月23日)では逆転の2点タイムリー3塁打。試合後に「ピッチャーなのにずっとインコースを攻められました」と照れながら語った東京大との3回戦(10月14日)でも決勝タイムリーを放ち、自身の勝利に花を添えた。
篠木は指名上位候補と噂されているが、「(ドラフトは)気になりますが、目の前にあるチームの勝利しかコントロールできない」と、あくまでも平静に歓喜の瞬間を迎えようとしている。
■山城航太郎 投手(法政大)
篠木らとともに評価を高めてきたのが、法政大のリリーフエースの山城航太郎だ。
山下舜平太(オリックス)らと過ごした福岡大大濠高時代はショートで、本格的に投手に転向したのは大学に入学後。そんな右腕は、3年秋に遅めのリーグ戦デビューを果たすと、最速154kmのストレートで存在感を示した。
「思い切りのよさや真っ直ぐで押せる部分が持ち味」と話す山城は、ドラフト前最後の試合となった慶應大との2回戦(10月20日)では、3―4とリードされた6回から2番手として登板。延長10回まで4安打無失点と好投してチームのサヨナラ勝ちを呼び込み、自身はリーグ戦の初勝利も記録した。
山城は「粘りの投球ができてよかった。初勝利が挙げられるとは思わなかったですが『チームのために』と思って投げていたら、もらえた勝利なのですごくうれしい」と笑顔で試合を振り返った。ドラフトまでの過ごし方については、「最上級生になりメンタルも強くなりました。ドキドキすると思うけど楽しみに待ちたいです。ひとりになるといろいろと考えてしまうので、なるべく友達と一緒に過ごせたら」とコメント。実践経験は少ないが、隠れた逸材は初勝利を追い風に夢の切符を掴むことができるだろうか。
■山縣秀 内野手(早稲田大)
春のリーグを制した早稲田大では、勝負強い打撃が持ち味の吉納翼(よしのう・つばさ)や、チームの主将にして4番を務める捕手の印出太一(いんで・たいち)らも注目されるが、軽快な守備に定評のあるショートの山縣秀(やまがた・しゅう)の周囲も騒がしい。
全国屈指の難関高校として知られる早大学院の出身で、スポーツ推薦が多くを占める野球部において、一時は理系への進学を考えていたという異色の存在。金森栄治コーチの「バットを小さく、強く、速く振る」というアドバイスにより打撃が開花し、春のリーグ戦では本塁打こそなかったものの、打率.366、4打点でベストナインを獲得。侍ジャパン大学代表にも選出された。
明治大との1回戦(10月19日)では、1点差に迫られた9回1死1、2塁のピンチの場面で、次打者のゴロで2塁ベースカバーに入った山縣は、投手の1塁ベースカバーが遅れたのを見て3塁に送球。飛び出していた相手ランナーがタッチアウトになり、チームの勝利を手繰り寄せた。
試合後、同じポジションの宗山よりも優れた点を問われると、「ピアノが弾ける」と謙遜気味に答えた。知性派の内野手は、早大学院卒としては1958年の森徹氏(中日など)以来となるプロ入りを目指す。
■清原正吾 内野手(慶應大)
NPBで通算525本塁打を放った清原和博氏を父に持つ清原正吾は、中学ではバレーボール部、高校ではアメリカンフットボール部に所属し、6年間のブランクを経て大学で野球を再開した。
3年春にリーグ戦で初ヒットを放ったものの、ヒットはこの1本のみ。秋にはベンチ入りすら叶わずに苦杯をなめた。しかし、4年生の春に4番に抜擢されると実力を発揮して、13試合に出場。
秋も4番としてチームを牽引する清原は、1点リードを許した9月28日の明治大戦で、9回2死からバックスクリーンに自身初の本塁打を放ち、スタンドで見守る父を指差して喜びを爆発させる場面も。
「僕が大学で野球を始めた時に、両親に本塁打ボールをプレゼントすることを目標に掲げていたので、ようやく打つことができて本当に嬉しい」と語った清原。10月8日の東大戦で渡辺俊介氏(元ロッテ)の長男・向輝からも本塁打を放ち、存在感を示した。
秋のリーグ戦は打率.200、2本塁打、4打点と確実性に課題は残るものの、"血統"は折り紙付き。「ストレートに負けなくなり、インコースが上手にさばけるようになった」と慶應大の堀井哲也監督も成長を口にするサラブレッドは、父と同じプロの舞台に立つことを心待ちにしている。