ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――秋のGIシリーズは今週、東京競馬場を舞台にしてGI天皇賞・秋(10月27日/芝2000m)が行なわれます。今年も国内最強クラスの実力馬が集結。
大西直宏(以下、大西)皐月賞馬のジャスティンミラノが直前で回避したのは残念ですが、4~5歳世代のトップホースが勢ぞろい。注目度が高いのも納得です。
なかでも注目されるのは、やはりGI3勝を誇るドウデュース(牡5歳)と昨年の三冠牝馬リバティアイランド(牝4歳)の激突ですね。これは、ファンにとっても見逃せない一戦だと思います。
――その2頭に、今季も好調な名手クリストフ・ルメール騎手が手綱をとるレーベンスティール(牡4歳)を加えた3頭が「3強」とされ、下馬評が高いようです。
大西 ルメール騎手は天皇賞・秋において、ここ6年で5勝。この舞台での勝ち方を熟知しています。過去の映像を見ても、彼の騎乗馬が好位から抜群の手応えで直線に入ってくるシーンの印象が強く残っています。
今年騎乗するレーベンスティールも、ルメール騎手とのコンビでは2戦2勝と好相性。特に斤量59kgを背負って1分44秒7の好時計で制したGIIIエプソムC(6月9日/東京・芝1800m)のパフォーマンスは圧巻でした。
この秋のGIシリーズでも、ルメール騎手は秋華賞、菊花賞と連勝中。
――大西さんも「3強」を中心に見ていますか。
大西 その見立てに異論はありません。東京・芝2000mは、コース全体が(競走馬の)能力を問う舞台。枠順の影響は多少あるにせよ、基本的には実力馬がその能力を存分に発揮できる舞台です。紛れが起こるのは、馬場が大きく荒れた場合か、極端な展開(超ハイペースや超スロー)になった場合か。今年は、そうした要素は少ないと思います。
そうしたなか、ドウデュースもリバティアイランドも長期休養明けですが、追い切りの動きが目立っていて、仕上がりは上々のようです。どちらも先を見据えての秋初戦ではありますが、これだけ動けていれば、実力どおりに能力を発揮する可能性が高いと見ています。
――直近の天皇賞・秋では前半1000m通過が57秒台という速い展開が続いていますが、今年は断然のスピードを誇る逃げ馬が不在。どんな展開を予想されていますか。
大西 確かに、今年はハイペースで逃げる馬は見当たりません。
ほか、逃げ馬候補としてはシルトホルン(牡4歳)やノースブリッジ(牡6歳)がいますが、いずれも大逃げを打つタイプではないですよね。おそらく前半1000mは58秒5前後の平均ペースで進むと想定され、後半で決め手比べの展開になると読んでいます。
――決め手勝負になると、上位人気の「3強」が有利と言えそうですが、そこに割って入ってくる伏兵候補などはいますか。
大西 ジャスティンパレス(牡5歳)は、注意しておきたい1頭です。GI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)では10着と大敗しましたが、あの時は馬場が極端に悪化。内枠の馬には厳しいレースになりました。第一、この馬はディープインパクト産駒らしい高速馬場でのキレ味が強み。前走の結果は度外視していいでしょう。
昨年の天皇賞・秋では、展開に乗じた印象があるものの、実際にイクイノックスに次ぐ2着と好走。2000mのスピード競馬にも、十分に対応できると思います。今回は、坂井瑠星騎手との初コンビ。
また、同じオーナーのジャスティンミラノが回避したことで、ジャスティンパレスにかかる期待は膨らんでいるはず。勝ちにいく意識はより高まっているかもしれないので、同馬を今回の「ヒモ穴」として推したいですね。