10月24日、ベオグラード。ヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ第3節、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はイスラエルのマッカビ・テルアビブとの試合で、1-2の勝利を収めている。
ラ・レアルはスローペースで勝ちきったと言える。
立ち上がり10分ほど、強度を出してきたのは相手のほうだったが、それをうまくいなしていた。そして勢いが落ちたところで押し込み、要領よく19分に先制に成功。後半も効率重視で、同じように追加点を決めた。昔の言い方なら「省エネ」、今風に言えば「SDGs」となるか。最小限のエネルギー、持続可能な戦い方で、最大限のポイントを勝ち取った。
GKアレックス・レミーロが欠場(前戦のジローナ戦でヒザを痛めたことで心配されていたが、軽傷で済みそうで、大事をとっての休みとなった)し、イゴール・スベルディア、ルカ・スシッチも欠くなかで、ジローナ戦から連勝を収めたことは朗報と言える。チームが軌道に乗りつつあることを証明した。
「ラ・レアルは宿題完了」
スペイン大手スポーツ紙『アス』もそう報じており、長いシーズンのなかで"やるべきことをやった試合"と言える。
これでELの成績も、1勝1敗1分けの五分に戻し、勝ち上がりに向け、望みをつなげた。
では、久保建英のプレーはどうだったのか? マッカビ戦の久保は、4-3-3の左サイドで先発している。これまでのELでは5-4-1を採用していた。それを変えたのは、久保がいるなかで"守備的になりすぎない"というイマノル・アルグアシル監督の判断だったのだろう。
久保の左サイドに違和感はなかった。主戦場は右サイドだが、自由度は高く、そもそも固定されている印象はない。どのゾーンでも、高いレベルのプレーができる。実際、日本代表ではシャドー、トップ下もやっているし、ラ・レアルでもダビド・シルバがいた時代はトップの一角でもプレーしていた。オールラウンドなアタッカーで、その適応力も彼の才能のひとつだ。
【縦に切り込みクロスを上げる】
「周りの力を引き出す。その適応力、連係力こそ、タケ(久保)の魅力と言える」
2000年代、ラ・レアルの"ワンクラブマン"として500試合以上に出場したレジェンド、シャビ・プリエトは、昨年行なったインタビューでそう説明していた。
「タケのプレーヤーとして最大の才能は、ひと言でいえば、Desequiribrio(均衡を崩す)にあるだろう。
スタートポジションの右から左への変化は、主に他の選手との相性により行なわれたのだろう。
この日、ラ・レアルはウマル・サディクがワントップで先発だった。サディクはスピード、パワーが際立つFWだが、ポストワークは苦手で、周りとのコンビネーションがいいタイプではない。広大なスペースを生かし、速い攻撃を使い、カウンターで生きるタイプだ。
久保は右サイドにいる場合、カットインからの左足シュートを得意としている。しかし、それだけではすぐに封じられるために、トップや周りの選手とのコンビネーションが欠かせない。だからこそ、アレクサンダー・セルロート(現アトレティコ・マドリード)のようなストライカーと相性がよかったわけだ。
だが、サディクにボールを預けても思ったようなリターンはないし、クロス1本でも合わないことが多い。そこで、この日は久保が左でプレーすることになったのだろう。適応力に優れた彼は、チームが掲げた「縦に速く」の攻撃にもマッチした。
「手数をかけない」
久保もそこは徹底していたようだった。左サイドで1対1になり、中が揃っていなかったら、縦に切り込んでニア上に強烈な左足シュートを放った。味方が幅を取って中央を走ったところでボールを受けると、そのまま右足ミドルで狙った。久保はチーム戦術に自分の技術を落とし込んでいた。そこまで際立った活躍にはならなかったが......。
今はチームが勝利を重ね、力をつけることが先決だろう。ラ・リーガだけでなく、EL も長丁場の連戦が続く。スペイン国王杯もスタートする。
ラ・レアルが戦い方のバリエーションを増やすなか、久保の爆発が期待される。次戦は27日。